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第73話 イケメン佐藤景樹

 教室に戻ろうとした俺を廊下で呼び止められた。


「思ったより先生との話し長かったな。白石。」


 佐藤景樹だった。そういえばあとで話そうみたいなこと言ってたっけ。


「まあ、ちょっと心配かけたのは事実だから。昨日のことで診断書みたいなものがいるか、確認してきたし。って言うか、俺に何か?」


 佐藤がそう問いかける俺に軽く笑った。


「そりゃあ、気になるさ。あんなに可愛い宍倉さんとすぐ仲良くなってさ。自称イケメンの塩入がいくら声掛けたって無視してるのに、だ。」


「あれ、あいつと知り合い?」


「一応、一緒の部活。サッカーでね。春休みから練習に参加してるから、まあ、顔なじみ以上ではある。」


 友人とは言わないのか。なんか、あるのかな?


 少し苦笑交じりな顔で佐藤は言ってきた。

 春休みからって言うと、結構期待されてんのか?


「うちの高校はサッカーそんなに強いわけじゃないから、県大レベルでも、結構な戦力になるんだよ。俺も塩入も、地区大会は突破してるんでね。まあ、塩入は県大会でチームの監督と一悶着あったみたいだけど、高校からはまたサッカーやるらしい。」


「頑張ってんだな。じゃあ、これからの部活動紹介は、佐藤達には関係ないか。」


「入るか入らないかって話ならそうだけど。この高校にどんな部活があるかはちょっと興味あるよ。ダンス部なんか女子が結構可愛いって噂だしね。白石は中学で部活なんかしてた?」


「陸上を2年までやってた。ただこっちも部のトラブルで、やめた。」


「高校、なんかやんないのか?」


「今んとこは、あんま考えてないけど、ね。そういえば、塩入って俺にかなり挑戦的な目を向けてっけど、なんでか知ってる?」


 俺は昨日から少し不思議に思ってたことを佐藤に投げてみる。


(いや、それは明らかにあやねる絡みだろう)


 外野の声は無視して、少し考えてる佐藤の答えを待つ。


「単純に自分が気になってる女の子が、自分に塩対応でお前さんに甘々対応ってとこだろう。誰でも見てれば分かるだろう。」


 やっぱり!


「俺はそんなことよりも、入学式で倒れたうえ、女子と一緒に帰ったかと思ったら、今朝には泣かせてるなんてどこのモテクズ野郎だよって、突っ込みたくなったわけ。今俺、白石以上に、興味を持てる対象がない。」


 うわあ、ここにも噂大好き人間がいる。


「ほら、見てみ。宍倉さんは同級女子に囲まれて質問タイム全開中だぜ!」


 廊下から教室を覗き見ると、確かにこのクラスの1/3を占める女子のほぼ全員があやねるの周りに群がっている。

 結果的に、俺は自分の席に戻ることが出来ない。


「ああ、あの朝に「外で騒がないで、教室入れ」って言った子、あれ、山村だっけ。なんかすごい勢いで宍倉さんに食ってかかってる感じだな。宍倉さん顔真っ赤にして、俯いてんぞ。」


(助けてあげたいけど、あの中に光人が止めに言ったら、袋叩きだな)


(確かに!)


「佐藤さ、さっき俺の家に女子が来たみたいなこと言ってたけど。」


「ああ、女子が一緒に帰ったって話な。今日は朝練あったんだけどさ、昨日、車で先生と白石帰ったろう。その時一所に車に乗った子がいたってな。他のクラスのサッカー部のやつが教えてくれたんだよ。お前、入学式で倒れてるから、他のクラスでも結構知られてっぞ‼」


「この陰キャ丸出しの俺が、悪名ばらまいてる。」


「えっ、白石、お前のどこが陰キャなの!1年で1番の有名人だろう!」


(そりゃ、そうなるよな、女泣かせのモテクズ野郎)


 言いたい放題だな、親父。


「ちなみに俺の情報網にはこの高校で、恐れ多くて近づけない美女No.1女子生徒、生徒会役員で3年生の柊先輩ともお近づきになってるという噂もある。」


「ああ、昨日、保健室に尋ねに来たよ。」


「なにっ!この噂、本当だったの?流石にこれは白石の噂盛るためのガセだと思ったんだけど…。本当、すげえな、感心すんわ。」


 佐藤は俺にあきれてものが言えないといった態度を示す。


 確かに、可愛い女子と仲良くなって、美人生徒会役員とお知り合いになり、あまつさえ女子生徒とタイプの違う美少女を連れて自分の家に招くなんて、想像の遥か彼方の異世界にでも行った衝撃的な1日だよな。さらにその翌日には仲良くなったはずの可愛い女子生徒を泣かせてると来たもんだ。


「なんて言ってけど、結構白石のこと、俺気に入ってんだ。1年間クラスメイトなのはもちろん、友だちとしてよろしく!」


 佐藤はそう言って右手を差し出してきた。

 俺は「男の手なんかよりも、可愛い柔らかい女子の手を握りたい」と言うクズ発言をすることなく、しっかり握手をした。


「それと、俺の事、カゲか景樹で呼んでくれ。佐藤は結構いるから、名前呼びでいてくれると助かる。」


「OK!じゃあ、俺も、まあ光人でいいよ。」


 友達になろう!なんて言って友達になったのって、初めてじゃないか。

 みんな、そうやって友達って作っていくものなのか。


(いや、今のはレアケースと思っていいんじゃないか。告白して恋人になるってのはあるけどな。佐藤君はとてもいい奴で、そういう性格なんだろう。見た感じ裏に何か考えているわけでなく、光人のことが、ただ単純に面白そうって思ってるみたいだ)


 親父の佐藤景樹評だった。


「忠告ってこともないけど、塩入にはちょっと注意した方がいいかな。宍倉さんを気に入ってるってのもあるけど、少し性格が、な。」


 俺も気づいていたが、俺よりも長く接してきた分、説得力が大きい。


「忠告ありがとう。俺も平穏な日常をこよなく愛しているんで。頑張ってみるよ。」


「昨日からの光人の行動、決して平穏を希望する人間のやることじゃないぜ。」


「ははは。まあ、自分でもどうしてこうなってるのか、よく解らないんだけどな。」


 俺は何気に教室に視線を移し、あやねるのいる席を見る。

 まだ女子生徒が結構いるが、塩入は少し離れたところからあやねるを見ていた。

 まあ、俺もそうだが、あの状態の女子の中には入っていけないよな。

 そこに自分の席があったとしても…。


 もう少ししたら、時間になる。その前には俺の席から離れてくれるといいんだけど。


 景樹と廊下でしゃべりながら、自分の席、あやねるの席を視界の隅に捉えている。

 景樹の席あたりも結構女子がいたりする。


「で、光人は、誰を狙ってんの?宍倉さん、それとも柊先輩か?でも昨日の態度見てると宍倉さんの光人に対する態度、かなり積極的に見えたけどな。」


 ああ、やっぱり、周りからはそう見えちゃいますか?


(当然と言えば当然。保健室にまで行っちゃうんだからな)


「正直、柊先輩は雲の上の人って感じで、現実味がないけどな。」


「俺の事より、景樹はどうなのさ。その容貌でサッカーやってれば、かなりモテるだろう。」


「モテるか、モテないかって言う話なら、モテる方だけど。その話しをするとなると、今は時間ないな。今度、部活ない時にでも、ちょっと遊びに行かないか?」


「おお、いいね。俺もちょっと家でいろいろあって、ハメ外したいとこだったから。あ、そうだ。ID交換しとこうぜ。」


「OK」


 二人でスマホを出し、ID交換を済ます。


 ちょうど、廊下の端の方に何人かの先生がこちらに来るのが目に入った。



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