第65話 2日目の登校
今回より新入学2日目に入りますので、第2部とさせていただきました。
やっと二日目です。なんでこんなに長くなったのか、作者が一番戸惑ってます。
是非付き合っ頂けると嬉しいです。
感想、苦情お待ちしています。既に登場人物が多すぎるとお叱りの言葉いただいてます。
それでも、今回からさらに登場人物増えます。
今後、何故白石影人が息子に寄生したのか、柊夏帆の罪とは何なのか描いていく予定です。
できうる限り面白くしたいと考えています。ブックマーク、評価、いいね!よろしくお願いします。
光人は眼を覚ました時に、今までにないほどの体の軽さを感じた。
ここ2か月の中では1番といえる目覚めだ。
父の交通事故から睡眠不足や、疲労、精神的なつらさがあって、さらに夢見の悪さも手伝い、日々疲労感に苛まれていたのが噓のようだ。
(おはよう、光人。よく眠れたようだな。)
と同時に、ある種の悪夢は続いていることに精神的に落ち込む。
(自分の親を災難みたいに言うな!)
自分の父親・白石影人はしっかりと俺の頭の中に定住しているようだ。
本当に絶賛24時間監視中というわけか。
カーテンの隙間から春の暖かい日が差しているというのに、俺の周りにはかすかな寒気がする。
(親を悪霊のように語るのはやめろ。)
わが親父殿は、今日も元気のようだ。
ちらりと目覚まし代わりのスマホに目を向けると、アラームの時刻より20分も早い。
奇怪な夢にも邪魔されず熟睡したおかげで、体はとても軽く感じた。
心の重さとは逆に。
(昨日1日一緒だったんだから、もういい加減、この状況に慣れて楽しもうという気になってほしいものだな、わが愛すべき息子よ。)
(そう思うなら少しは静かにしてくれ!爽やかな目覚めを台無しにすんなよ。)
(今日も素晴らしい青春の1日が始まったんだ。これから美女たちに囲まれたハーレムのようなラブコメが開幕するんだ。さあいけ!光人よ。)
(なぜそんな能天気に人の1日を決めるんだ。そもそもハーレムなラブコメってなんだよ。美女たちって誰のこと言ってんだ?)
(もうわかってるくせに、知らないふりすんなよ、コウくん。)
(誰の真似してる、親父!)
(とりあえずは、今日1日の始まりの美女に会いに行こう!)
(はあ?)
誰のこと言ってんだ、このくそ親父は!
(それは当然麗しの、舞子さんだ!)
(お袋じゃねえかよ!)
おかしい。
爽やかな目覚めをしたはずなのに、異常な疲れが俺のことを犯していく。
一つため息をついてベッドから起き上がる。
かけておいた制服に着替え、机の上に置いたままのカバンを持ち上げた。
ベッドの枕元に置いてあるスマホのアラームを切りそのかばんに突っ込んだ。
と、スマホの画面にただならぬ量のLIGNEの通知が表示されている。
俺はおそるおそるその通知をタッチした。
ロック解除とともに雪崩のようなメッセが並んでくる。
その数、108!
煩悩か!
つい自分で突っ込んだ。
その文面のうち105が宍倉彩音さん、あとの3つが鈴木伊乃莉さんだった。
(あ~あ、やっちゃったな、光人。これ、昨日、お前が最後にあやねるのメッセをぶった切ったことに対する奴だよな)
見た瞬間に、昨夜のやり取りを思い出した。
やばい。
宍倉さんの性格が俺の想像通りだったら、多分、泣いてメッセ送ってきてるに違いない。
まあ、鈴木さんのは、そのことを宍倉さんから相談されてのメッセと、報告せずにいたことに対する怒りだな。うん。
あー。学校、休もうかな。昨日倒れたことだし。
(よくないぞ、それ。もし学校休んだら、絶対、この家にあやねるといのすけが再登場する。間違いない!)
(あれ、親父は寝てたんじゃないか?LIGNEでのやり取りなんで知ってんの?)
(よく気付いたな。眠りについたのは事実だし、目が覚めたのがお前より少し前だ。LIGNEでのやり取りは実際は知らないが、お前、さっきスマホ見たとき、昨夜のやり取り思い出したろ?その記憶で私の知ることになった。)
(ホントに俺のプライバシーはないんだな。俺は親父のことわかんないのに)
そのタイミングで部屋のドアを軽くノックする音がした。
「お兄ちゃん、起きてる?」
少し控えめに妹の声が聞こえた。まだ学校に向かうには早い時間だが。
「ああ、起きてるけど、どうした?」
ドアが開いて、日照大千歳中学の制服であるセーラー服を着た静海が顔を出した。
「ちょっとお願いがあるんだけど、一緒に登校しても大丈夫かな?」
「中学と登校時間って同じなのか?30分くらいしたら出ようかと思ってるけど。」
「うん、そのくらいなら一緒に行けるからさ。いいでしょ。」
少し上目遣いで俺を見てくる。
このやろう、絶対自分がかわいく見える角度ってやつを心得ていやがる。
そんなかわいい顔を向けられて、俺に断るなんて選択肢、あるわけねえだろう!
(激しく同意)
頭に変な言葉がこだましている。
「ああ、いいけど。そのお願いってなんだ?」
「それは…、歩きながら話すよ。ママが朝ごはん用意してあるよ。」
「あいよ。」
(朝一番は美少女の静海だったな)
(まあ、確かに可愛いんだけどさ、親父、そのフレーズ気に入ってんの?)
(いや、別に。)
おかしい。あんなにさわやかな目覚めだったのに、なぜ、どんどん俺のテンションが下がっていってんだろう。
まあ、学校にはいかないとな。
鈴木さんはいいとして、宍倉さんには、直接謝ろう、そうしよう。
何とか考えをまとめて、静海のあとに従う形で階下の食卓に向かう。
簡単な朝ごはんが食卓に置いてあったが、お袋の姿はなかった。
「ママ、今日早番だから先に行くって。」
静海が俺の視線に気が付き、お袋のいない理由を告げた。
俺の中になぜか落ち込む雰囲気があった。
(まさか親父の気分が俺に影響するとは思わなかった。)
(舞子さんがいない。)
(しょうがないだろう、仕事なんだから。)
(寂しい…。)
どこまでもうちの親父さんはお袋ラブなんだなあ。
少し羨ましい。
俺にもそんな人ができるのだろうか?
自分の初恋というものが悲惨な結末になり、いまだ俺の人に対する積極的な気持ちの足かせになってる気がする。
と同時に、明るく笑うどす黒いオーラを纏う人物の顔が思い出された。
二戸詩瑠玖。
無理やりその負の感情を胸の内に押し込む。
こんなネガティブな考えを持ってるから、陰キャなんだよなあ。
(そうだな、ポジティブに行こう。学校に行けば、土下座する光人の姿が拝めるはずだし)
(親父も一緒にな‼)
親としての息子に対する愛情が全く感じられない!
用意してあった朝食を妹と二人で食べ、食器をシンクに入れた。
「お兄ちゃん、そろそろ出よう。」
「ああ、戸締り大丈夫か?」
「大丈夫だよ、行こう!」
妹は明るい。親父は俺の脳内でまだ落ち込んでいるのだが。
(どうせ帰ってきたら会えるんだから、お袋のことはあきらめろ。すぐそこに愛する娘がとびっきりの笑顔でこっちを見てるぞ、親父。)
(うん、そうだな!こんな美少女を拝めるんだ。私の女神さまは少しお預けぐらいでちょうどいい、よし、今日も頑張って光人の青春を応援していこう!)
鬱陶しい!
それでなくとも、今かなり学校に行くのが憂鬱なのに。
俺はすでに玄関で待っている静海に従って、学校指定の真新しいローファーを履いた。
昨日1日履いていたが、まだ慣れない。
静海が玄関を開けると、うちの家を囲っているブロック塀の前によく知った少女が立っていた。
読んでいただいてありがとうございます。
もう少し先の話で、部活紹介時の演劇部の紹介での劇の描写がある予定です。その劇のもとになる短編を投稿してみました。
よろしかたっら読んで、感想をいただければ、嬉しいです。
よろしくお願いします。
屋上の二人 https://ncode.syosetu.com/n4505hr/