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第40話 鳴美の告白

 かなりの間うじうじしていた鳴美(ナルミ)が、何かを決心したように、口を開いた。


「あのね、ルナ。レイにはもう言ってあって、ルナはこんな時だから浮かれた調子になっちゃうのが嫌だけど、あのね。」


 鳴美の可愛らしい頬が朱に染まっていく。


「サッカー部の鵜沢陽誠(ウザワヨウセイ)くん、知ってる?」


 急に知り合いの男子の名前を鳴美が聞いてきた。

 知ってるも何も同じクラスのサッカー部の鈴木悠馬(スズキユウマ)、そして桐嶋遥翔(キリシマハルト)とよくいる男子だ。


 あれ、鈴木?お姉さんが今度高校に入学したって言ってたような…。


「そりゃあ、知ってるさ。悠馬たちと一緒にいるサッカー部の鵜沢君でしょ?」


「そ、そう、その鵜沢君なんだけど、この前ね。」


 顔が真っ赤。隣で麗愛(レイア)がにやけた笑みを浮かべてる。

 あれ、これって…。


「終業式の日ね、ルナはまだあんまり元気がなくてすぐ帰ったでしょ。」


 確かに。二人からなんか少し強引な感じにお昼誘われた気がするけど。

 本当は一緒に居たかったけど、あまり眠れていない体がしんどくて、断ったんだっけ。


「あのときね、鵜沢君、ううん、陽誠がね、話があるからって、」


 あっ、呼び方を変えた。


「でね、でね、でね、付き合ってほしいって、」


「告白されたの!」


 つい、大きい声で静海(ルナ)は言ってしまった。

 周りが何事かと視線をこちらに向けてくる。


「ルナっち,声、大きい」


 麗愛が冷静に突っ込む。二人が言おうとしていたのはこのことか。


 ちょっと、びっくり。

 鵜沢君が鳴美を好きってこともだけど、鳴美がこんなに照れてるのがなんだか可愛い!


「うん、それでね、私も、結構陽誠のこと気になってたから、OKしちゃった、あは」


 耳まで真っ赤になりながら、それでも嬉しそうにはにかんでる。


「おめでとう、ナル!もう、何があったのか、ちょっと不安だったんだよ。好きな人から告白されて、付き合えるなんて、最高じゃん!」


「ありがとう、ルナが大変な時だったから、どうしようと思ってたんだけど。」


「そんなことないよ~。嬉しいよ、ナルが幸せなの!私んちがこんなだけに、親友が幸せなのって、勇気もらえた感じあるんだから。うん。」


 静海は心の中から祝福の言葉をつづった。

 鳴美も嬉しそうに笑ってる。

 その隣で、麗愛が穏やかにほほ笑んでいる。


 私もしっかり、友達の幸せを祝福できてる。

 自分自身がそう思えることが、なんだか嬉しい。

 でもこれで、本当に兄貴にあんな可愛い彼女ができたら、少しは妬いちゃうのかな、なんて思いながら。


 その時、LIGNEの着信音がどこかから聞こえてきた。


「あっ!」


 鳴美が小さく声を出した。どうやら、鳴美のスマホらしい。


「来たみたい。」


「だれが?」


 静海が鳴美に聞いた。

 と同時に、鳴美が立ち上がり窓の方から外に向かい手を振っている。

 そちらに目を向けると、3人の同じ中学の制服を着た男子達がこちら側に気づいて手を振っている。


 鵜沢陽誠、鈴木悠馬、桐嶋遥翔のサッカー部3人組だ。


 制服を着てるってことは学校帰りなのだろう。


 3人はそのままこのこの店に入ってきた。


「陽誠、お疲れ!」


 鳴海がテーブルに近づいてくる男子に声を掛ける。


「あれ、陽誠だけ?ちょっと冷たすぎない、御須(ミス)


 あからさまな不満を桐嶋が口にした。鈴木は笑ってこちらに軽く手を振る。


 ああ、なるほど。

 鳴美のあの可愛らしい服は、私と久しぶりに遊べるから、というよりも完全にデート用の服装だったって訳ね。

 うん、納得した。


「しゃあないよ、付き合い立てなんだから、こいつら。」


 そう言って鈴木は静海を見た。


「久しぶり、白石。元気になった?」


「うん、大丈夫だよ。悠馬も、みんなも元気そうだね。」


「あれ、ここでも俺はスルーですか」


 桐嶋は鳴美や静海の対応に不平を言いながら静海たちのテーブルのそばに立っている。


「白石、ちーす。聞いた、俺らのこと?」


「うん、おめでと!鵜沢、ナルのこと泣かせんなよ。」


「当然さ。で、もう飲み終わってるようだけど、どうする?」


 鵜沢は静海の言葉に応えると、鳴美にこの後の行動を尋ねた。


「みんなでカラオケいかね。俺、久しぶりに歌ってストレス発散したいんだよね。」


「何、桐嶋、なんかあった?」


「もう、聞いてくれよ神代(カミシロ)!御須も白石も俺のこと無視すんだよ~。俺のこと気にしてくれるの、神代だけだ~」


「ウザイ、桐嶋。」


 鳴海が痛烈な一言を放つ。

 しゅんとする桐嶋。

 いつもならムードメーカー的な役割が多いが、今日は何となく冴えない。


「そう言うなよ、鳴美。桐嶋今回のレギュラー取れなくて、少ししょげてんだから。」


「陽誠は入ったの?」


「俺も、悠馬もなんとかな。サブだけどさ。」


「おめでとう、陽誠。さすが私の彼氏だよ!」


「はい、そこいちゃつかない。口づけは二人だけの時にしてくれ。独り身には毒だ。」


 すぐに鈴木が突っ込みを入れる。

 下ネタも忘れないとこは、さすがだ。静海は感心する。


「鈴木君も、おめでと。桐嶋くんは残念。次回に期待するね。」


「くう~、みんな薄情だよ。」


「じゃ、駅前のカラオケ屋でいいよな、俺会員証持ってから。」


 鵜沢が、そう言って、さりげなく鳴美の鞄を持つ。

 これがリア充イケメンってやつか。


 6人でコーヒーチェーン店を出て、近場のカラオケに移動。


 その時、静海は前から歩いてくる日照大千歳高校の制服を着た女子3人を視界に捉えた。

 その中に真ん中で笑ってる背の低めな女子高生、兄、白石光人の幼馴染で、恩人でもある少女を見つけた。



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