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第267話 光人の女性関係

「安心しなさい。静海にそんなもの買うはずないでしょう。それよりも、この数日で一体どのくらいの女の子にちょっかい出したら、「女泣かせのクズ野郎」という不名誉な称号を受けることになるのかしら?」


 お袋が本当に困ったような顔で俺を見る。


「中学のいじめ以降、ほとんど人と接するのを拒否するような態度をとっていた光人が、どこをどうすればそんなクズになっちゃうんだか…。」


「いや、お袋。少し落ち着こう。静海がどういう伝え方をしたか知らないが、俺はクズと言われるほどの大それたことをしたことはない。ただ、北習橋の駅で、宍倉さんに泣かれただけだ。」


「泣かせてるのは事実じゃないの!」


 お袋にそう反論されると、返す言葉がない。


「しかも、西村さんも伊乃莉ちゃんも泣いてたし…。」


「ちょっと待ってくれ。さっきのことなら、俺が悪さして二人を泣かせたわけじゃ…。」


「静海だって泣いてたのよ。」


「おい、お袋。さっきから聞いていたら、明らかに面白がってるだろう?」


 最初は本当に不埒な子供を怒っているのかと思ったら、顔を見たら口角が上がって、明らかに笑いを隠してる。

 ひどい親だ。

 純粋な俺をいたぶって遊んでいる。


「大体は静海から聞いているわよ。ちょっと聞いてみて、光人の慌てぶりがついおかしくて。でも泣かせたのは事実でしょう。例え、その宍倉さんが悪いとしても。」


 聞いていたんですね。

 はい、泣かせてしまいました。


「光人がしっかりとあの頃を人に話せるようになったのは、成長した証拠なんだと思って、母親としては嬉しいと思ってるの。でも、あの生々しい音源は、ちょっと、ねえ。」


「わ、私が、聞きたいって…。」


 静海がまた思い出したのか、少し泣きそうになっている。


「静海が聞きたいと思ってくれたことも嬉しいのよ。あの当時の、いえ、つい最近まで、あなたが光人を見る目がねえ…。今の静海を見て少し安心もしてるけど…。それが何であんな大人っぽい下着を着る理由ななるんだか…。」


「だって、お兄ちゃん、綺麗な女の人侍らせて、喜んでるのが、ちょっと、なんて言うか、嫌だなあって。」


「あんなに光人を嫌がってたと思ってら、知らないうちにブラコンになってる。」


「だって、だってさ!このいじめがあった頃から、みんなして、私に何も話してくないじゃない!その頃から、お兄ちゃんはおかしくなっちゃったし。でも、お父さんが死んじゃってから、お兄ちゃん頑張って、しかも変に格好良くなっていく…し。」


 最初は勢いの合った言葉が、だんだん尻すぼみになっていく静海。

 いや、そんな事言われると、変にこそばゆい。


「格好いい、ねえ。前から光人は格好いいと思うけど。確かに前に比べると自分に自信を持っている感はあるけどね。で、光人?」


「えっ、何さ?」


「誰が本命なの?」


 あっ、また変な笑顔を息子に向けてきた!


「誰って言われても…。」


「そうは言っても、宍倉さんは声聞いただけで顔は知らないんだけど…。で、静海。光人は何人くらいの女子にちょっかい掛けてるのかしら?」


「だから、誰にもちょっかいなんか、かけてないよ!」


 全く俺の言葉がこの距離にも拘らず、お袋の耳には入らない。


「今日来ていた西村智子さん、鈴木伊乃莉さんでしょう。さっきお母さんが言っていた宍倉彩音さん、あ、それと…。」


 手元の持っていたカバンから紙袋を出した。

 その中から雑誌を取り出した。


 その表紙は、つい先日体育館で見た写真だった。

 JA5月号。


 狩野瑠衣先輩と言われなければ分からない長身のボーイッシュな女性と、綺麗なでも知らない女性が写っている。


「この背の高い人もうちの高校の先輩なんだけど、今の所お兄ちゃんとは関係ない。」


「びっくりさせないでよ、静海!こんな綺麗な人までちょっかい掛けてるって、光人がどうにかなっちゃったかと思うじゃない!」


 静海はお袋の声を無視して、その雑誌のページをめくる。


 そこには1ページ丸々使った、ダークブラウンの長い髪が美しく輝く女性が背中越しに振り向く瞬間を切り取った、表紙顔負けの写真が掲載されていた。


 柊夏帆だ。


「この人!お兄ちゃんにちょっかい掛けてる人。」


「えっ、えっ、えっ、ってなんで光人に!ちょっかい掛けられてるって、どういうこと!この人の方が、さっきの表紙の子より綺麗じゃないのよ!」


 お袋が完全におかしくなってる。


「何をどうしたらこんな綺麗な人と光人が知り合うの!それよりも、光人の高校は美人さんでないと受からないとかあるの!」


「そんなことはないよ。でも、綺麗な人が多いとは思う。」


「でもね、お母さん。この人、柊夏帆さんて言って高3で生徒会の役員さんなんだけど…。」


 静海がそう言って俺に目配せしてきた。

 つまり、あとの説明は俺がしろってことだな。


「その柊先輩、浅見蓮君の従姉だそうだ。」


 その名前に、お袋の身体が急に固まって、今まで軽い調子で笑ってた瞳の輝きが、暗くなったような気がした。


 が、すぐに光が戻り、少し中腰になっていた態勢が、ストンという感じで椅子に落ちる。


 雑誌をまじまじと見つめる。


「そうか、蓮君の従姉。確かに、こんな感じの髪の色してたね、蓮君も。」


「そういう経緯があって、俺に声掛けてきたんだよ。入学式の日に。」


「この女子高生離れした顔立ちの子一人でも光人に関わるだけで凄いけど、そこに伊乃莉ちゃんと宍倉さんね。西村さんはずっと光人の幼馴染として支えてくれてるけどね。」


「お母さん、まだほかにもいるらしいよ。」


「静海!もういいだろう、それくらいで。」


「私も直接は知らないけど、伊乃莉さん情報。文芸部にいるギャルっぽい先輩にも絡まれてんでしょう。」


「ああ、有坂先輩な。まあ、確かに絡まれたが…。」


「ふー。こうやって息子は私の知らない男に育っていくのね。」


「何ため息ついて、遠い目してんだよ!べつに色恋沙汰で問題おこしてるんじゃないんだから。ただ入学して知り合ったってだけだろう、その人たち。」


「の割には宍倉さんとはかなり親しい関係で、家まで行っちゃったんでしょう。しかも、今日の伊乃莉さんの雰囲気、昨日と絶対違ってたよね。」


 返す言葉がなかった。

 無意識で自分の右頬に右手を当てていた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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