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第226話 佐藤景樹の噂

 佐藤景樹というストライカーは、技術的には申し分ない動きをしていたんだ。

 しかもしっかり周りが見えている。

 まあ、うまい選手は当たり前にやってることなんだけどな。


 のはずだったんだけど、うちとの対戦の時、微妙に浮かれてんだよね。

 しかも、キャプテンじゃなかった。当然スタメンではあったけど。


 あいつの中学は佐藤だけじゃなく、みんなうまいんだけど、佐藤は圧倒的にうまかったはずなんだ、2年の時は。

 でも、なんていうのかな、格好をつけようとしてるっていうのかな、あれ。

 本来なら、パスで繋げるところをドリブルで突っ込んで入ったり、逆に自分で突破できるはずなのに、味方にパスして全力でゴール前に行って、パスを促したり、変なところでボールに回転かけてみたり。

 自分が、こんなこともできるんだぜって、見せつけてるような動きをしてんだよな。


 んなもんだから、結構奴からボール取れるんだよ、これが。

 2年のプレイしてたのは違う人かってぐらい。

 逆にうまくいくと、自分の中学の応援席にこれでもかってくらいのアピールしてた。


 結果的にはうちが負けたんだけど、佐藤が本当に別人かと思ったよ。


 他の試合はもう少しまともにやってたみたいで、結果的には準優勝だったみたいなんだが、おそらく中2の時のあいつなら、圧倒的に勝って、優勝、全国大会に行ってたんじゃないか。


 で、その原因っていうのが、どうも女らしい。

 3年から付き合い始めたようだが、ぞっこんだったらしい。

 そう、試合中にチラチラ見て、うまくいったときに応援団にアピールしてた先にその女性がいたってことだ。


 俺もよくは知らないんだが、その時試合の後で帰る佐藤を見かけたんだ。

 高校生くらいの女子と歩いてんのを見かけた。

 まあ、可愛い子なんだろうけど、それよりも、佐藤のデレ具合が見ていられないレベル。

 まあ、イチャイチャするのを見て、気持ち悪くなったのは初めてだったよ。


 佐藤景樹はかなりの男前でサッカー部でもエースだったが、それだけかなりモテると思うんだが、恋愛はかなり初心なんだろうな、あいつ。


 まあ、噂だが、かなりひどい振られ方だったらしいが、あいつにとってはそっちの方がいいと思ったよ。




「今日、その辺の話を聞いたよ。」


 俺は慎吾の話を聞いて、先ほどの景樹の過去の恋愛についての話が嘘ではなかったことに、少し安堵した。

 人の恋愛話なんて嘘でも全然問題ないんだが、嘘をつかれること自体、嫌なものだ。


「あんなにイケメンなのに、そういう目にあうのって、女子の方もすごいね。」


 静海がなんか、変な感想を言っている。

 イケメンを振り回したい願望でもあるんだろうか?


「佐藤君ってそんなにいい男なの?」


 お袋が話に混じってきた。

 かなりイケメンに興味があるらしい。

 親父がそんなイケメンではなかったが、やはりお袋もイケメンの方がいいのだろうか?


(そんなことはない!舞子さんが好きなのは私だけのはず)


(でも、ノリノリで静海に聞いてるぜ)


(舞子さーん!)


「爽やかなイケメンって感じだったな。凄いモテそうなんだけど、今も行ってたように前の彼女さんにひどい振られ方したんだって。だから今は恋愛はいいかなって感じだった。微妙に、宍倉さんが超お嬢様の伊乃莉さんとくっつけたそうな雰囲気はあったけど。」


「まあ、それをいうなら、その超お嬢様は静海にやたら、弟を勧めてたよな。」


 つい口が滑ってしまった。


「えっ、スーパー大安の御曹司とうちの静海が!」


「だから、そいうのはやめて!お兄ちゃんも、口軽すぎ!」


 静海がかなり強い否定をしてくる。

 そこまで嫌がるような感じはなかったが…。


「へえー、やっぱり静海ちゃんにも、そんな話が。」


「だから、違いますって。みんなで無理矢理そういう雰囲気に持って行こうとしてる。」


 静海が慌てて、否定を続ける。


「まあ、静海がモテる話は置いておいて、景樹が一時期酷く落ち込んだってことは聞いてるよ。ただ、付き合ってる時の様子がこういう形で耳に飛び込んでくるとは思わなかったよ。」


 俺は素直にそう感想を漏らした。


 彼女が出来て嬉しくて、そういう風になることは、なんとなくわかる。

 俺なんか降られて、他に彼氏がいることを知っていて、さらにその彼氏が当時の親友と思っていた奴なのにもかかわらず、二人で一緒にいただけで嬉しかったんだから。


 そうか、でも、同じサッカー部なら、塩入のことも知ってたりするのかな。


「慎吾さ、景樹のこと知ってんのは解ったけど、もう一人、サッカー部に中学でサッカーやってたやつがいて。そいつのことも知ってたりする?」


「まあ、知ってるやつもいれば、知らない奴もいるけど。全国レベルは当然知ってる。ただそれ以外は、微妙。同じ千城市ないなら、分かると思うけど。」


「いや、舟野市かな。去年、県大会に出てるらしい。塩入海斗ってやつ。」


「ああ、我儘坊ちゃんの塩入な!知ってる、知ってる。って言うか、中学でサッカーやってるこの市内の奴は、大体噂は聞こえてくんじゃねえかな。普通の中学生は知らないだろうけど。」


 笑いながら、慎吾が言ってるってことは、あの話ではなく、またやらかしてんのか?


「俺が景樹から聞いた話だと、県大会で監督と喧嘩したってことくらいしか知らないんだが?」


「ああ、それも事実だが、この辺の奴が知ってる理由は全然違うんだ。なんか自分の親が航空会社に居て、ただで飛行機乗せてやるよ、みたいなこと言って千城駅でナンパしてるとこを試合帰りのサッカー部員に見られてな、それも複数の学校の。そのうち一人が嫌がってる女の子を庇ったらしい。まあそこそこイケメンに見えるし、サッカーもしてたから、見栄えはいいんだけど、そんな親のことをナンパに使うってのはな。しかも、庇ったそのサッカー部員に変に絡んだところで、塩入の顔を知ってる他校の部員が大声で「お前、尼川中の塩入だろう!」なんて言っちゃってな。そいつ、大慌てで逃げ出したらしい。それから、「我儘坊ちゃん」塩入君って有名。塩入って名字も珍しいからな。」


 うわあ、何やってんの、塩入!お前の方がよっぽど「クズ野郎」じゃねえか!


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