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第205話 笹木梨奈さんと柊秋葉さん

 中学棟との連絡通路で待っていると、静海が友達に手を振ってこちらに向かってくる。


 腹立つくらいに、可愛いな、わが妹ながら。


(当然だ!私と愛する舞子さん娘なんだぞ、光人)


(わかってるよ!)


「ごめんなさい、お兄ちゃん。宍倉さん、どうしたんですか?」


 そう言えば、あやねるが行くことは言ってなかったよな。


「なんだか、生徒会に入る決心したらしいんだ。それで出来れば、柊先輩に会いたいんだってさ。」


「そうなんだ。光人君も行くって言うし、どうせ一緒にいのすけのうちに行くなら、ついでにいいかな?静海ちゃん。」


「ええ、まあ、いいですけど…。」


 明らかに不服気味の言い方で、しぶしぶ了承してる。


 あやねるもその静海の仕草に、笑顔が引き攣っていた。


「まあ、そういう事で、行こうか。」


 俺はいたたまれなくなって、二人を促した。


 今回俺と静海は岡林先輩から呼ばれて生徒会室に行くんだが、他の先輩たちはいるんだろうか?


 生徒会室に付く。

 その間二人には微妙な雰囲気が漂っている。

 本来ならいるはずのないあやねるがいるっていうだけで、そんなに不機嫌にならなくてもいいと思うんですけど、静海さん。


 変な緊張感の中、俺は扉をノックした。


「白石君?どうぞ。」


 生徒会室に入ると、岡林先輩と2人の女子生徒がいた。

 一人は見覚えがあった。


 笹木莉奈。


 新入生代表で挨拶した生徒だ。

 思った通り眼鏡は外して、髪の毛の色も少し薄くなっている気がする。


 だが、もう一人の綺麗な女子生徒には、全く見覚えがない。

 いや、誰かに似ている気はするんだけど…。

 ダークブラウンの髪の毛をあやねる程度のボブでそろえ、かすかに見えた瞳の色は少し薄く感じた。


「お客さんですか、岡林先輩。でしたらまた別の日に来ますけど。」


「あ、大丈夫だよ、早く入って。」


 俺は先輩に言われるがまま、生徒会室に足を踏み入れる。


 続いて静海が入り、最後のあやねるが入ってきた。


「あ、宍倉さんも来てくれたんだ。やっぱり白石君と仲良しだよね。」


 そう言いながら含み笑いをしている。

 そんな岡林先輩を見ている笹木さんと綺麗な女子が、不思議そうな顔をしていた。


「あ、ごめんね、白石君。こちらの二人は同じ1年生の特進クラス1-Aの笹木梨奈さんと、柊秋葉さん。笹木さんは入学式で新入生代表を務めたから、知ってるかもね。もう一人は、カホ、柊夏帆の妹さんだよ。白石君と静海ちゃんには紹介した方がいいかと思って呼んでおいたんだ。笹木さんに関しては、ちょっと違う理由で来てるんだけどね。」


 ああ、それで誰かに似てると思ったんだ。

 柊先輩の妹さんだけあって、やっぱり綺麗なんだな。


「あなたが白石光人君で、そちらの中学生の子が白石静海さんなのね。」


 柊秋葉さんは座っていた席から慌てて立ち上がって、俺を見て、静海を見て、頭を下げた。


「姉からもお礼は言われたとは思いますが、私からも。白石君たちのお父さん、影人さんに従弟の浅見蓮を助けて頂いて、本当にありがとうございなす。影人さんがお亡くなりになって、こちらからはただお礼を申すしかありませんが、是非一度墓前で、お礼を言わせてください。よろしくお願いします!」


 静海が困った顔をしている。

 自分たちで決めていいのか、という感じだ。

 当然、母親である白石舞子の気持ちを考えなくてはいけない。


 すでに静海はかなり落ち着いているので大丈夫だろうが、まだお袋の心情までは分からない。


(そうだな。舞子さんは今、懸命に子供たちのために働いて、私が亡くなったことを感じないようにしてる雰囲気だからな。基本的には舞子さんに直接聞いて、それからだな)


(わかったよ、親父。一応、そう言って様子を見るよ)


「既にお姉さんの柊先輩には伝えてありますが、時間を置いて、うちの家族の気持ちが落ち着いてからという事でお願いしています。既に柊先輩だけでなく、浅見さんも親戚の柊さんの家も、うちの家族が恨んでるという事ではないことは理解して欲しいです。少し時間を頂ければ、正式にうちの母親から連絡をするという事でお願いします。」


 繰り返し、秋葉さんに語った。


 柊秋葉さんはその言葉に満足気に頷き、席に座りなおした。


 笹木さんはその光景を冷ややかに見ていた。

 そして、秋葉さんと笹木さん。

 見ている限り、顔見知りではあるけれど、それほど仲がよさそうには見えない。


 笹木さんのここに居る理由がよく解らなかった。


「では、岡林先輩、私の用は終わりましたので、これで失礼します。」


 笹木さんが岡林先輩にそう告げ、席を立ちあがった。


「ああ、ちょっと待ってね、梨奈ちゃん。こちら同じ1年の宍倉さん。この生徒会に入るかもしれないから、よろしくね。」


 岡林先輩にそう言われて、あやねるが慌てて頭を下げた。


「1-Gの宍倉彩音です。この高校の生徒会に興味を持っています。よろしくお願いします。」


「私は、今、先輩に生徒会役員申請書を提出したところ。もし、生徒会に入ったら宜しくね。私は来年の会長選挙に出るつもりだから。」


 笹木さんはあやねるの挨拶にそう答えた。

 あまりにも自然にそう言ったので、何を言ってるか一瞬、理解できなかった。


 笹木さんはそのまま生徒会室を出て行った。


 ドアが閉まる音に、笹木さんの言っていた意味が胸にしみこんできた。


「生徒会長になるつもりなんだ。」


 あやねるがそう呟いた。


「ははは、まあ、そういう事だから、よろしくね。」


「柊秋葉さんも、生徒会に入るんですか?」


 俺は、ここに柊先輩の妹がいる意味に回答を求めて、そう聞いてみた。


「ああーと、何なら秋葉でいいよ。うちのお姉ちゃんと混同しちゃうんでしょう。名前で呼んでくれた方が分かりやすいし。こちらも光人って呼ばせてもらっていいかな?」


「あ、うん、いいよ、それで。えっと、じゃあ、秋葉さんでいいかな。」


「うーん、私が光人って呼ぶんだから、秋葉でいいってば。」


 いや、その呼び方。

 伊乃莉はギリOKだったけど、秋葉なんて呼び捨てにしてると、隣のこの子の視線が痛いんですよ。

 秋葉さん。


「それは、おいおいってことで、秋葉さん。」


「そうね。「女泣かせのクズ野郎」の割にはヘタレだね。うん、まあ、それで行こう。」


 なんか何気にディスられた感が強いけど、隣の子の視線が弱くなったからノープロブレム。


(本当に、ヘタレだな、光人ッて)


(うっせい!)


「でも、なんでここに秋葉さんがいるんですか?柊先輩はいないようですけど…。」


「うん、カホには帰ってもらった。他の生徒会室のメンバーも後、1時間くらいは来ないはずだから、ゆっくりお話ができる。特にカホに関係するから、秋葉ちゃんに来てもらったの。秋葉ちゃんが知っていれば詳細を聞きたいし、もし知らないなら知ってもらいたいの。カホが何に悩んでるか。それは白石兄弟にも関わる話だから。」


 ああ、やっぱり親父の事故の事か。


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