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第203話 瞳の要求

「彩音の友達って、何者なの?」


 更衣室に入るなり、瞳が私にそう言ってきた。


 当然、いのすけのことである。


 美少女4人を引き連れてさっそうと登場した百合の人のリーダー、鈴木伊乃莉。


 瞳にはそう見えているに違いない。


「普通の強コミュの、女子高生、だよ。」


 他に何と言えばいいんだろうか?


「親友なんでしょう、あの鈴木って子。」


「同じ中学で、親友は間違いない。でも恋人じゃないからね、瞳。」


 そう言うと瞳は少し顔を赤らめた。

 まあ、狩野先輩命ってくらいだから、その気はあるのかもしれない。


 私たちは自分の私物を入れたロッカーの前に移動する。


「でも、あの鈴木さんが百合の人であれば、少し安心できるんだけど…。」


 そうだね、瞳からすれば、女性は好きな可愛い美少女であれば、佐藤君とどうなることもない、って考えるよね。

 でも、佐藤君がいのすけに惚れちゃったらそういう訳にもいかないんだよ。

 さらに、いのすけが百合って話は中学では一切なかった。

 だからと言って男子と付き合ってたかというと、そういう噂も私の耳には入ってこなかったけど…。


「さすがにそれは解んないな。私とはそんな仲じゃないし。中学で男子とも女子ともそういう仲の人がいたって話は聞いたことがない。ただ、コミュニケーション能力は凄かったな。小5から中1までボッチだった私のコミュ障の壁をあっさり破壊した子でもあるからな、いのすけは。」


 うーん、唯一の悩みがいまだ解消されないことに、ちょっとしょんぼりしてる。


 見た目だけじゃ、いのすけ軍団には及ばないもんな。

 お胸も武器にならないし…。身長が高いことも、この世代ではマイナスポイントだな。


「お願いだよ、彩音!佐藤君のこと、なんかあったらすぐに連絡してね。…それと。」


 ん、他には何も約束してないよな。


「できれば、佐藤君の好きな女の子のタイプ、聞いてくれると、嬉しいな…。」


 あちゃー、追加注文出ちゃったよお。

 私が突然そんなこと聞いたら、いのすけの家に集まった人たちはどう思うかな。

 まさか、私が佐藤君に興味あるとは思わないよなあ。

 特に、光人君にそんなこと思われちゃったら、…やだなあ。」


 まあ、これだけ班の中で佐藤君LOVEを溢れさせたから、きっと、大丈夫だとは思うけど…。

 それはそれで、明らかに瞳からの依頼って当の佐藤君は気付くよね。

 だと、正確には教えてくれないよな…。


「分かった、さりげなく聞いてくるようにはするけど…。失敗したらごめんね。」


 この失敗は聞き出せないことじゃなくて、佐藤君に感づかれて、瞳と距離を置きかねないってことなんだけど…。


「うん、彩音ならきっと大丈夫だよ。だからお願いね。」


 ああ、失敗の所を聞かなかったことにしたんだか、スルーしてきやがったよ、瞳。


「う、うん、頑張る。」


 私はそう言って、ロッカーを開け、中からスマホを取り出した。


「忘れないうちにID交換しとこ、瞳。」


「あ、そうだね、ちょっと待ってて。」


 瞳はすでに上半身はスポブラ状態だった。素早い!


 そのままバッグからスマホを取り出して、IDを交換した。


 すぐに短パンを脱ぎ去り、しなやかな長い脚を見せつけてくる。

 瞳はその手足の長さを生かしたファッションなら、佐藤君も関心を示すかもしれない。


 私も早くこの苦しい胸を解放したくて、さっさと体操服の上を脱いで、キャミも脱ぐ。


 潰れている自分の胸が少し悲しい。


 バッグからお気に入りのピンクのブラを引っ張り出して、ロッカーの扉にひっかける。

 そして胸を押さえつけているスポブラを懸命に上にずらして、やっと脱ぐと、自分でも結構気に入っていた胸が、やたらブラで押さえられていた部分が縦横無尽に赤い線が浮かんでいた。


「折角の胸が、結構なことになっちゃてるね。」


 瞳が、少し皮肉口調で言ってきた。

 彼女の言う通り、結構赤くなってる。

 まあ、明日には消えてると思うけど、仕方ない。

 それよりも押さえつけられていた苦しさから解放されて、すごく気持ちよかった。

 

 と、油断したのがいけなかった。


 あの悪魔が、全く音を発せず私の後方に近づき、痛ましい私の胸を両手で揉んできた。

 しかも、お胸の先っちょを指ではじかれた。


「ひん。」


 また変な声を出してしまった。


「いい加減にしなよ!いのすけ。」


「いや、そこのお胸があったら、揉まないと!」


「人の胸を山か何かとでも思ってんの!」


「うん、あやねるのお胸は立派な山。私なんか公園の丘みたいなもんよ。」


 いのすけが自虐を入れつつ、変な事を言ってきた。


 私はいのすけの手を振り払い、急いでブラを付ける。

 カップの中に周りの肉を集めて、胸の形を整えた。


「おお、かっこいい胸が出来上がった。これなら光人をイチコロに出来るな。」


「もう、ほんとうにやめてよね。」


 私はすぐさまキャミを被り、ブラウスを着て、ブレザーをひっつかんで、瞳を促して更衣室から逃げるように飛び出した。


 やれやれと、いのすけがあきれ顔になっている。


 お前が悪いんだろう!


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