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第197話 身体測定にて

 第一体育館には結構な人がいた。

 まだ前半のクラスの者も残ってるようだ。


 俺は須藤と、景樹の3人で身体測定を受けに来た。

 瀬良は他の友人と同じ体育館にいる。

 普通なら景樹は、同じクラスで同じ部活の塩入と行くとこだと思うが、やはり微妙な距離感だ。


「結構、人、いるな。適当に空いてるのからやってくか。」


 俺は測定している人たちを見渡していった。


「そうだな。別に順番はないんだし。この表を埋めてけばいい、ってことだったよな。」


 須藤がそう言って相槌をうつ。


 表の中では大したものはないんだけど、やっぱり時間がかかりそうなのがレントゲンかな。

 特別のレントゲン車が男女別で校内に来てるようだ。

 これが例のブラ云々の原因だよな。


「そう言えば、塩入ってさあ、本当にペットボトルロケット、作ったこと、あんのかな?」


 須藤が、ぼそっと言った。


「ああ、あれ。おそらく、経験ないと思うよ。」


 すんごくきっぱりと、景樹が言い切った。


「あいつの性格考えたら、本当に作った経験があれば、もっと自信満々に言ってるよ。」


「あ、やっぱり。」


 須藤が景樹の言葉に納得している。

 これには俺が驚いた。

 須藤が疑っていたこともだが、景樹の言い切りに思わず顔を凝視してしまった。


「でも、なんでそんな嘘をつく?本番になったらバレるぜ。」


「光人はそう考えるとは思ったけどな。単純だよ、要はカッコつけたいだけ、好きな女子の前で。」


「ああ、そういう…。」


「分かりやすいよな。なまじ顔がいいと自惚れがあるから、目に前で好きな女子がほかの男といちゃついてたら、我慢できなかったんだろう。そんなところじゃないかい、イケメン佐藤君。」


 須藤がやけに説明がかったセリフを語った後に皮肉を景樹にぶつけた。

 須藤の気持ちはわかるが、景樹を塩入の仲間のように言うのは止めてくれ。


「俺は別にイケメンなんかじゃないよ。大体須藤だって分かってんだろう?今一番男の敵になってるやつを。」


 景樹はそう言って俺を見てきた。

 須藤も景樹に釣られるようにして俺を見てくる。


「うん、そうだった、ごめん、佐藤君。」


「ああーと、須藤さ、君付けは止めよう、な。」


「了解。」


 景樹と須藤が仲良くなってよかった、うん。って、俺を何気にディスってたよな、今。


「なんで俺が男の敵なんだよ!」


「いや、だってさ。入学してわずか二日で、可愛い宍倉さんからあんなに仲良くされて、読モやってる柊先輩からあんなアプローチされて、隣の組の鈴木さんだっけ?もう伊乃莉とか呼んでるかと思えば、文芸部のギャル先輩から意識されまくってんだろう。これ、男の、特に非モテ男子の俺からすれば、敵以外の何だっていうんだ?」


「須藤の言う通りだよ、光人。どういう前世で徳を積めばそうなるかって話だ。会ってすぐに惚れた女が、光人にぞっこんだったら、塩入が嘘をつきたくなる気持ちはわかるさ。もっとも、その嘘に巻き込まれるのはご免こうむりたいがな。」


 ひどい言われようだが、言い返すことはできない。


「まあ、でも、光人はえらい子に好かれたかなっとは思うよ。普通、自分の友人の家で会食するのに、関係ない奴は呼ばないぜ。まあ、面白そうだからって、乗っちまう俺も自分でどうかとは思ってるけどさ。」


「何、その話?聞いてないぞ、白石。」


「別に須藤に言う話でもないだろう。それとも一緒に来るか。」


 その返しに須藤は言葉を詰まらせた。

 きっと昨日のあやねるの態度を思い出して、怖くなったのだろう。


「伊乃莉が昨日、あや…、宍倉さんを送らせたことに対するお礼として、家に招待してくれたんだよ。まあ、理由はそれだけじゃないけど…。で、その送ってたところを景樹の友人に見られたみたいで、景樹がそれを俺に突いてきた。で、今日の放課後に時間がないかって景樹に誘われたんだけど、かぶっちゃたから、また今度っていったら、なあ、景樹。」


「うん。宍倉さんが、一緒に鈴木さんだっけ、宍倉さんの友人って、の家に一緒に行こうって言われた。」


 景樹がそう言って須藤を見た。

 須藤の頭の上に?マークが見えたのは、気のせいではないと思う。


「ちょっと待ってくれ、何、それ。自分の家でなくて、友人の家に行くのに、そういう事を勝手に決めちゃうってこと?宍倉さんは。」


 俺と景樹が同時に頷く。


「ああ、そうなんだ。やっぱり、あまり関わらないほうがよさそうだな、宍倉さんと。可愛い子だとは思うけど…。塩入もそれに気づけば今日みたいに、無駄に見栄を張る必要がないと思うんだよな。」


「それはそうだな。気付くかどうかってことでもなさそうな気はすっけど。変に光人を意識してるから、負けたくないって感じの方が強い気がする。」


 景樹が妙なことを言い出した。

 俺を意識するって?


「全くわからないって顔してるぞ、光人。まあ、ちょっと失礼な言い方になるけど、許してくれよ。塩入は自分を結構いい男だと思ってる。自惚れと取ってもらっていい。それは二人ともわかるだろう?」


 俺と須藤が、それは間違いないと、頷く。


「で、だ。自分がいいと思った女の子がいた。まあ、宍倉さんの事だけど。その子とやけに親しくしている男がいる。だが明らかにその男は自分より見劣りがする。納得がいかない。てなとこだ。」


 その説明に納得は出きるけど…。

 あの塩入よりはまともだと自分では思うんだよな。


(だから佐藤君は最初に断りを入れてるだろう。それに一般的な意見ではなく、塩入君が考えているであろう光人に対する評価だろう。怒るとこじゃないな)


「じゃあ、ペットボトルロケット、どうする。そのまま旅行でもなんとかなるとは思うけど。」


 須藤が心配そうに景樹に尋ねた。


「そんな心配すんな。基本的には、それこそ小学生の自由研究で選ばれるテーマだ。一応の下調べくらいは俺、やっとくよ。」


 こうスマートに言い切れるとこがイケメンなんだよな、見てくれじゃなくて。


「さあ、とっとと測定終わらせちまおうぜ。」


 イケメン景樹がそう言って、空いている列に向かって歩き出す。

 俺と須藤はその後を追った。


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