第17話 柊夏帆 Ⅲ
自分がたまにバイトでやっている読者モデルになったきっかけのことを考えているうちに、生徒会室まで来ていた。
あの時、言葉通りに発売前の雑誌JAが送られてきた。
写真は3人がクレープを食べているところと、3人が並んでいるところが写っていたが、企画は変わっていた。
「イマドキ10代の恋愛事情」
3人の下の名前がカタカナで書かれていたが、それ以外は全くした覚えのないインタビューだった。
年齢も言わなかったはずだが、全員17歳になっていた。
確かに瑠衣は中学3年には見えなかっただろうが、高校2年生扱いになっていたのは驚いた。
さらに恋愛体験に至っては、そのものずばりとは書いていないが、におわせる書き方は流石としか言いようがない嘘が書かれていた。
瑠衣から撮影の事情は聞いていた父親柊吾は、連絡場所となっている狩野法律事務所にその雑誌が届けられた日に、当然その雑誌を開いた。
自分の愛娘が写っているのを楽しみにしていた柊吾は、その記事に度肝を抜かれ、しばし言葉を失ったそうだ。
そこに書かれている内容が全くの創作であることを父親に説明するのにたっぷり2時間かかったとは瑠衣の弁。
弁護士である柊吾は、すぐに法的措置を取ろうとして、瑠衣から止められたようだ。
実際、扱いはそんなに大きいものではないうえ、誤魔化し方が絶妙であったため、訴訟を起こしたとしても割に合わない。
冷静になった柊吾から言われたと瑠衣が言っていたっけ。
とはいえ、さすがに嘘八百を書かれ、知り合いに見られることを考えると文句を言わないわけにはいかなかった。
そして、私にはどうしても聞きたいことがあった。
雑誌が送られてきた日の2日後、二人の同意を得て、放課後にJA編集部に連絡を入れた。
椎名さんの名前を言ったらすぐに本人が出た。
「あの時はありがとうね、かほちゃん。わかってる、記事の企画のことでしょう」
やっぱり、意図的にやったな、この人。
「そうです。こちらが全く言ってないことを、ああいう風に書かれると迷惑です。やっぱり信用できない人、ってことですね」
「あはは、申し訳ないと思ってるよ。説明した時の企画がね、あなたたち以外にあんまり可愛い子がいなくて、没になっちゃったんだよね。」
微妙に自意識をくすぐってくる。
「笑いながら謝られても、信用はされないと思いませんか、椎名さん」
「全くその通り。場を変えてちゃんと謝らせてもらえないかな、今度の日曜日空いてない?」
「突然ですね。もう話を聞いてもしょうがないので切っていいですか。」
私は、ふざけているようにしか聞こえない椎名さんに不快感が込み上げてきた。
もう、いい。
「あ、待って、かほちゃん。かほちゃんにも私たちに聞きたいこと、あるんじゃない」
図星だった。電話でも済む話かと思ったんだけど。
私は傍らで聞いている二人に向かった。
「椎名さんが私たちに謝りたいから、今度の日曜、空いていないかって。どう?」
瑠衣はすぐに「うん」と頷いた。
香音は「ちょっと待ってね」と言って、自分のスマホを見ていたが、「大丈夫、ずらせそう。何時頃。」
「わかりました。どちらに伺えばよろしいですか。」




