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第161話 村さんから智ちゃんへ

(まあ、お前の好きでいいけど。智子ちゃん、可愛いと思うけどな)


(可愛いとかじゃなくて、二戸と三笠との今の俺の関係を考えたら、今はこの関係が一番なんだよ)


(いいんだけどね。今は、か)


「今の話を基本と思って聞いてくれ。俺と宍倉さんは付き合っていない。でも宍倉さんが俺に好意を持ってることは、違う言い方で村さんに言ったとおりだよ。その中で、俺に対する安心感の正体みたいなものが、少しわかった気がする。」


『そんなの、どうすればわかるの?』


「宍倉さんのお母さんが俺を夕食を招待したのが、その理由ともつながるけど、その前になぜ俺と電車の嫌いなはずの宍倉さんが帰ることになったかは聞いたよな?」


『まあね。』


「それが、宍倉さんが、一人で通学するためのステップアップだった、としたら?」


『それはどういう意味?』


「親友の子は宍倉さんを本当に心配している。ここで嫌いなはずの男性と電車で帰れれば、一つのハードルを越えられるんじゃないかと考えた。ただ、もしものことを考え、宍倉さんのお母さんに報告した。」


『なんとなくは解るけど、それで夕食の話は?』


「無事、家に着けば、男性、電車の両方が苦手のはずが多少は克服できたと考えられる。そうしてくれた男性、つまり俺に感謝の意を伝えたいから、家に来てもらいたいということらしい。それともう一つ。」


 すでに俺の声で起きたと思える静海がうっすらと目を開け、うつぶせ寝のままで俺に顔を向けている。

 俺は気づいているが、妹に対する説明の意味も込めて、話し続けた。


「相手の宍倉さんのお母さん、宍倉真理さんは、俺の父親、白石影人と顔見知りだった。」


『影人おじさんと知り合い?宍倉さんのお母さんが?』


「宍倉さんの家の少し先に親父の勤めていた鈴蘭堂っていう調剤薬局の門前仲町店があった。そこは親父が5年位前まで勤めていた薬局だった。」


『じゃあ、宍倉さんとも顔見知りだったの。』


「それは微妙だが、ただ宍倉真理さんが旦那さんの薬をもらいに行くときに、よく一緒に薬局に行っていたって話。」


 正確な話はぼかした。

 記憶の封印は、ちょっと説明しづらい。


「だから、息子の俺に親近感を待ったんじゃないかって。」


『あの安心感ってそういうことなの?じゃあ、宍倉さんもおじさんのこと知ってるってこと?そんな話、全く出てなかったよね。』


「なんだよね。どうも覚えてはいないらしいんだよ。まあ、5,6年前の話だし、そんなに親しくなければ、覚えてなくてもおかしくないけど、ただその雰囲気は懐かしいと思うんじゃないかって、宍倉さんのお母さんが言ってた。うちの親父の話を宍倉さんに昨日話したらしいんだけど全然覚えてなかったらしい。」


 自分で言うのもなんだが、この話はかなり無理がある。


『よくわからないけど、宍倉さんのお母さんはそれで確かめるためにコウくんを家に呼んだってこと?』


「そんな感じ。お礼とお悔やみを言われた。そんな感じで宍倉さんの俺に対する行為の片鱗は理解できたと思ってる。正直、こんな陰キャにはそんなことでもないと、あそこまでの行為は理解できなかったけどね。」


『そんなことない。コウくんはこの数か月ですごく格好良くなった。私が保証する。』


「それは、どうも。」


 直球で褒められるとどう反応していいかわからない。


(これだから陰キャのマイナス志向は…。もう少し自分に自信持てよ、光人!)


 ちゃちゃを入れるなって、あれほど言ってんのに!


『とりあえず、わかったよ、コウくん。まだ、誰にも恋愛感情を持つ気はないってことも。宍倉さんを大事に思ってることも。そして、私のことも…。でも、いい、コウくん。1年くらい前のコウくんは確かに陰キャのボッチに近かったかもしれないけど、今は影人おじさんを亡くして、家族を支えていこうと頑張ってて、凄く格好良くなってる。人との付き合い方も、すっかり変わってる。これから、コウくんに言い寄ってくる女性は増える気がする。それがいいかどうかは解んないけど。でも、しっかり自分に自信を持っていいんだからね。変に卑屈になっちゃ、だめだよ。』


「ああ、わかった。ありがとう、村さん。」


『だから村さんはやめてって。じゃあ、もう遅いから。お休み、コウくん。』


「ああ、おやすみ。村さん、じゃなくて智ちゃん。」


『そう、それでいいよ。』


「あと、明日のブラはノンワイヤーね、岡崎先生より。」


『そんなことは覚えてなくていいの!おやすみ』


 かなり照れた声だった。

 少し可愛いと思ってしまった。


 あ、12時過ぎてる。


(さて、第2ラウンドの開幕ね)


 ベッドから半身起こした静海がこちらを見ていた。


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