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第143話 宍倉彩音の告白 Ⅱ

 宍倉彩音は男に触られたがっている。


 この噂は私にとって恐怖以外の何物でもありません。


 幸い、伊乃莉をはじめ一緒にいた友人や、他のクラスメイトは事情をしっかりと認識してくれていて、そんなとんでもないうわさを流す男子に対して、かなりきつい口調で反論してくれました。


 当然、そんな噂を流したり、信じたりした一部の男子が私に謝りに来てくれたこともありましたが、その噂を一時でも信じられたという事に対して、嫌悪感を抱きました。


 宍倉彩音は男に触られたがっている。


 この噂が本当だから触ってくる、というような男子は流石にいませんでしたが、こそこそと話をしている男子はそこそこいました。


 それから急激に男子が怖くなりました。


 道行く男性が怖くなりました。


 こちらに視線を向ける男が怖くなりました。


 私はそれから、うちの父親以外とはほぼ会話をしなくなりました。


 学校の先生とも必要な時だけ、伊乃莉に付き合ってもらって、やっと会話ができるほどでした。


 電車嫌いで男性恐怖症。

 両親も友人も心配していました。


 とりあえず、一番は同級の男子への嫌悪感でした。


 その為、あまりうちの中学から行く人のいない高校を考えていた時に、伊乃莉の弟が通ってるこの日照大学付属千歳高校を紹介してくれました。

 電車通学、男子の方が多いと自分にとってあまりいい条件とは思えませんでした。


 ただ、その頃には満員電車のように、近くに人がいなければ結構大丈夫なことが多かったんです。

 それと、これは重要な事だったんですが、電車に乗らずに行ける高校には、ほとんど同級の男子が受験する可能性が高いという事でした。

 であれば、都心に向かう電車と逆方向なら、結構大丈夫ではないかという事。


 女子高という選択もあったんですが、伊乃莉は絶対嫌だと言って、これは譲れなかったんです。

 当然伊乃莉と別の学校という話を考える人もいると思いますが、あの時点で、伊乃莉のいない高校に行くことは、恐怖以外何物ではなかったんです。


 結果的に、偏差値なども考慮すると、この高校がベストではないもののベターだという考えに落ち着きました。


 年を開けるころには男性に対しての嫌悪感も少しは薄れてきたようで、男性の先生とは何とか喋れるようにはなりましたし、両親や伊乃莉といったような信用できる人といれば電車も苦ではなくなりつつありましたので、受験時に困ることはありませんでした。

 まあ、同級生の男子は全く喋る気なんかありませんでしたけどね。


 卒業式なんか最悪で、同級生の男子から呼び出しを受け、告白されるなんていじめ迄受けました。

 あの時は本当に、気持ち悪くて、吐きそうになりました。

 フラッシュバックっていうんですか。

 一瞬、痴漢の時のことが襲ってきそうでした。


 そんな時に助けてくれたのも伊乃莉でした。

 その後、私は知らなかったのですが、伊乃莉はその人脈を使ってその男子を中学には来られないような仕打ちをしたそうです。

 最近聞いたんですけどね。


 流石に高校入学式には緊張しました。

 伊乃莉と同じ学校とはいえ、クラスは別れてしまい、少し不安がありました。


 クラスを確認して、座席を確認して鞄を置き、伊乃莉のいるクラスで少し時間を潰しました。


 戻った時にであったのが、白石光人君でした。


 座席表で名前は確かめていましたが、名前の呼び方が分かりませんでした。

 ただ、その白石という苗字は私に特別に心を温かくしてくれるものでした。

 どうしてかは聞かないでください、私にもわからないんです。

 昔発行された、「生協に白石さん」、ラブコメの「久保さんは僕を許さない」の主人公、有名なところだと芸能人で坂グループの方や女優さんでも、その方たちに心を癒されてきたんですよ、小さい頃から…。


 そして、少し緊張しながら自分から男子に声を掛けて、簡単に自己紹介をしたんですが、その時に私の憧れていた人の愛称「あやねる」という言葉が返ってきました。


 そして、その男子の雰囲気が、どう説明していいか分からないんですが、どこか懐かしい温かい雰囲気にさせてくれたんです。


 その時から、白石光人君は、私にとっては問答無用で信用できる人として、認識されたんです。


 そういう意味では、男子の中では「特別な人」と言って差し支えないんです。

 その人から冷たい態度を取られた時は死にそうな気持になりました。


 西村さんの言うとおり、一緒にいて辛い事が多いのなら距離を取るべきだというお話は確かに理解できます。


 でも、私にとっては、父以外で一緒にいて心が安らげる人なんです。

 一時期の辛さなんて、どうという事はありません。



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