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第121話 岡崎先生写真鑑賞会 Ⅳ 柊セレクト②

 写真が変わった。

 雰囲気としては文化祭の最中だろうか。

 向井さんが白いジーンズに、少しゆったりなピンクのニット地のセーターを着て、柱によりかかっている。

 カメラに気付いたのか、柔らかい笑みをこちらに向けていた。


「ちっ、あいつ、この時の写真に残してやがったのか!」


 突如先生が大声を上げた。

 その声に全員が先生を凝視している。


「あ、いや、すまなかった。ちょっとびっくりしてな。次の…。」


「いえ、先生、ちょっと待ってください。」


 俺の席の列の一番前の今野さんが先生を止めた。


「ねえ、光人君。この写真の何がまずいのかな、先生」


 前の席のあやねるが、振り返って俺にそんなことを聞いてきた。


 まあ、多分あそこに映ってるものが嫌なんだろうなあ、と見当はついていた。


「うん、柱のところに写っていてほしくないものが写ってるからだろうね。」


「え、どこ?」


「向井さんだっけ、先生の恋人が寄りかかってる柱のとこさ、右手が変な感じになってない?」


 あやねるが俺の言ったとこをガン見する。


「あ、そういうこと!」


 あやねるではなく、俺の後ろの須藤が素っ頓狂な声を上げた。


 周りからも、ああ、そういう事か、って声が相次ぐ。


「白石、ばらしてんじゃねえよ。」


 岡崎先生が少し強い口調で俺に文句を言ってきた。


 いや、最初に気付いたのはきっと、今野さんだよ。


 向さんの右手が不自然に柱の方にあり、そしてその指が明らかに5本より多く写ってる。

 心霊写真でなければこれは他の手と繋がってるってことだ。

 さらに、そうしてみるとその柱の向こうに人影らしきものが写っている。


 単純に考えて、二人でいるところにこのカメラマンと会ってしまい、慌てて岡崎先生が隠れたんだけども、繋いでいた手は離さなかったという事だろう。


 ほほえましい写真と言えば言えなくもないが、撮られた方としては頭から湯気が出るくらい恥ずかしい。

 完全に黒歴史だ!


「先生!この写真にもメモ付いてるみたいですから、開いてください。」


 容赦ないな、今野さん。

 一番前の席だからよく見えるとは思うけど。


 先生が諦めて、うなだれたままPCの操作をした。


「バレてますよ!」


 今回は短かったが、見逃していたらこのメモは凄いヒントになる筈のものだった。


「もう勘弁してくれよ。」


 後悔先に立たず。


 岡崎先生は今、この言葉を身に染みていることだろう。


 自己紹介を面白くする煽りとして付けた条件。

 婚約者の顔写真が、まさかこんなことになろうとは考えてもいなかっただろうに。

 柊先輩の美しい顔の下にはえげつない悪魔がいたわけだ。

 スカートの下にはきっと黒い矢の付いたしっぽがあるに違いない。


 続いての写真はやはり文化祭の時のものだ。

 ただし、先ほどから1年経った去年の「翔智祭」。


 岡崎先生が真ん中で左に柊先輩、右に向井さん。

 通常なら、別に教師をはさんだ記念写真と言ったところだが…。


「おお、二人の美女と手を繋いでる!悪徳教師だ。」


 ラガーマン、室伏君の野太い声がこだまする。

 先生は何も言わずにメモを開く。


「両手に花。こんな美少女に囲まれてるなんて羨ましい!後ろに写ってる男子の顔、要注目。」


 3人の後ろに偶然写ったのだろう、男子生徒がさも羨ましそうな顔で振り返っている。


 岡崎先生はPCの前でほぼ死人状態。


 この写真、柊先輩が「折角だから手を繋いで撮ろう!」と言うノリで取ったのだろう。

 苦笑いの岡崎先生、悪魔的なニヤニヤしている柊先輩と対照的に向井さんは頬を赤らめて少し恥ずかしがってるような感じで写ってる。

 よく見ると先生と柊さんの手のつなぎ方は握手するような感じだが、向井さんとはガッチリ恋人繋ぎをしていた。

 この雰囲気では率先してやったのは岡崎先生ってとこだろうか。


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