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第109話 部活動紹介Ⅸ 女子バスケ部

 野球部、男子バスケ部が普通に紹介を終えた。


 すると周りの雰囲気が少し熱を帯び始めた。

 ギャラリーがかなり増えている。特に女子が多いような…。


「では、何故か新入生というには、かなり場慣れしてるようなお姉さまっぽい人が多くなってきたような気がしますが、女子バスケ部の紹介に移ります。」


 バスケのユニフォームを着た二人の背がやたら高い女子が出てくる。


「キャー」

瑠衣(ルイ)先輩~!」

「綺麗です~瑠衣様~!」


 凄い黄色い声が館内を埋め尽くす。


(なんだ、この人気ぶり!)


(俺に聞かれて分かるかよ、親父)


 壇上の背の高い二人のうち、バスケットボールを抱えていた女子が軽くその黄色い声援を送るギャラリーに右手を振ると、声量がさらにヒートアップした。


「はい、瑠衣親衛隊の皆さん!部活紹介をはじめますので、静粛に!」


 司会進行の辺見先輩がマイクに向かって黄色い声援に対抗するように大声を出す。

 さすがに熱心なファンだけあって、その推しの声は聞きたいのだろう。

 すぐに声援が鎮まる。


 というより、瑠衣親衛隊って?


「はい、今回は新入生用の部活動紹介ですので、外野は静かにしてください!」


 バスケットボールを持たない女子の先輩がそう言ってマイクを持ち上げた。


「女子バスケ部主将、3年の末永(スエナガ)みなみです。新入生の皆さん、まずは入学おめでとう!」


 末永先輩も背が高い。

 優に180㎝は超えているだろう。

 スポーツ選手にしては長めの黒髪をポニーテールに束ねている。

 その自信あふれる容姿は充分可愛らしいものだが、背の丈の大きさに不釣り合いな感じは否めない。


 横にいる女子、おそらく加納瑠衣先輩は背丈では少し末永先輩より低めだが、180㎝は超えているのは確実だ。

 が、末永先輩のようなアンバランスさはない。

 さらに全般的なプロポーションが非常にバランスがいい。

 手足も長く、綺麗に整ってる。

 バスケをやるだけあってひょろ長さは感じず、とは言え筋肉の付きも美しさを損なわない感じだ。


 頭髪はショートに整えられているが、顔の各パーツもバランスがいい。


 目の感じは柊先輩よりも垂れた感じで綺麗というよりは柔らかい可愛さがあるものの、クウォーターの柊先輩に比べても鼻の形や小さめの口や唇もいい勝負という感じだ。


 実際にこの目で見るとその大きさに若干圧倒されるが、体型、顔立ち、共に人を惹きつける魅力があふれている。

 女性陣が大騒ぎするわけだ。


 美しく、そして格好いいのだ。


 柊先輩がいるとそこだけスポットライトがついたような目立つ感じなのだが、狩野先輩の場合、大きさで目立つというのもあるけれど、身体の中からあふれる光を感じる。

 柊先輩とはまた違った存在感だ。


「我が女子バスケットは、このエース加納瑠衣(カノウルイ)を筆頭に非常にバランスの取れたチームに仕上がってます。しかし、全国で戦うにはさらなる力が欲しい。」


 末永先輩は、まともな紹介もせずに話し始めた。

 きっと、紹介をする必要がないという事か。


「だが、狩野目当てにうちの部に入ることは断る。真剣にバスケに打ち込める人材を募集中だ。狩野のファンは応援をよろしくお願いしたい。」


 おーというよく解らない声援がギャラリー軍団から上がった。


「これ、すごいな。柊先輩で十分綺麗だと思われる人を見た気になってたけど、こんなにダイナミックな綺麗な人もいるわけか。」


 須藤が素直な想いを口にした。

 全くだ。


(綺麗でかわいい女の子が増えた気がしてたけど、私の学生時代にこんな子たちはいなかったな。)


(親父さ、この学校、変だよ。何なのこの芸能人みたいな人たち。芸能人コースなんて、この学校にはなかったはずだよね)


(私には全くわからん)


「みんな、ありがとう!では、皆さん待望のRUIこと、狩野瑠衣に後はお願いします!」


 すると隣にいた狩野先輩が、持っていたバスケットボールを床に2回バウンドさせ、おもむろに壇上から新入生の後方にそのバスケットボールを放った。


 ボールは放物線を描き、観衆の後方に設置されたバスケットゴールに鮮やかに吸い込まれていく。


 ゴールにダイレクトに入り、先ほど吹奏楽部が楽器を奏でていた場所にボールが落ちる。

 床をバウンドする音。


 一瞬の静寂。


 そして、大きな歓声。

 割れんばかりの拍手。


「みんな、ありがとう!うまくいくか緊張したけど、無事ゴール出来て、今、凄い興奮してます。そして、新入生の皆さん!初めまして!2年の狩野瑠衣です!」


 さらに周りのギャラリーが歓声を上げる。


 俺の周りも、あまりの見事さに拍手と声援に包まれてる。


「何度か見かけてるけど、あの体躯、あの顔立ちなのに技術もずば抜けてる。神に寵愛されてるって、こういうことを言うんだよなあ。」


 景樹が感激するように言ってるが、俺からすればイケメンの景樹も同じカテゴライズだと思う。


「佐藤がその言葉を言うのはおかしいな。イケメンで運動できるのは一緒じゃないか。」


「レベルが違いすぎるよ。」


「イケメンは認めるのね。」


「今更否定はしないよ。だからって、良いことばかりじゃないんだけどね。」


 景樹が須藤の言葉を否定している。


(まあ、自分のいる位置で見える景色は違うってことだよ)


 親父が訳知り風なことを言った。とりあえず無視する。


(お父さんはそんな光人に寂しさを感じる)


「先ほど主将からもありましたが、やる気のある新入生を待ってます。」


 狩野先輩が一言いうたびにRUI親衛隊の方々が、黄色い声で応援している。

 これでは部活動紹介でなく、アイドルのファンセッションではないのかと思えてきた。


「さて、部活動紹介としては、わたくし個人的に先程の超ロングシュートがうまくいきすぎてしまいましたので、そこで終了の気分です。で、誠に新入生の方々には申し訳なく思いますが、私個人のもう一つの活動について、説明兼アピールをさせて頂きたいと思うのですが、いいでしょうか?」


「待ってました!」

「ぜひお願いします!」

「瑠衣先輩!愛してます!」


 どう見ても新入生には見えない方々が声を出している。


 えーと、これ、部活動紹介だったよね、新入生のための…。


 完全に主旨が変わってしまっている様なんだけど。


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