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第108話 部活動紹介Ⅷ サッカー部

「では続きまして、サッカー部です。」


 男子をいたわりながら退場した女神のようなバレー部主将にかわり、男女の爽やかなカップルのような先輩たちが登場した。


「サッカー部、主将の3年の大神颯斗(オオガミハヤト)です。こちらはサッカー部の美人マネージャーとして名高い2年の浪牧来夢(ナミマキライム)さんです。はい、部員は盛大な拍手!」


 その号令に従い、景樹が苦笑いしながら拍手する。

 なんとなく俺と須藤も一緒に拍手した。

 いろいろなところから拍手が起こることから、中学生も拍手しているらしい。


 その拍手を受けた美人マネージャーさんは顔を赤らめて俯いてしまった。

 背丈もそんなに高いわけではなく、小動物系のそのマネージャーさんは確かにマスコット的で可愛らしさ満点だ。

 持っている書類をまとめているクリップボードでとうとう顔を隠してしまった。


「いいか、この可愛らしい浪牧さんは俺の愛しい恋人だ。後輩ども、絶対手を出すんじゃねえぞ!」


 俺たちはいったい何を見せられてるんだ?

 ここは神聖な部活動紹介の会場じゃないのか?


(神聖って、お前、意味知って使ってんのか?)

 無視!

(この部活動紹介のどこが神聖なんだ?)

 無視、無視!

(自分が見せられて都合の悪いことを神聖な場所って言うの、父さんは感心しないな)

(もう、本当にうっさい。すいませんでした、私が悪うございました)

(わかればよろしい!)


「あーあ、本当にやっちゃったよ。大神先輩は、去年、浪牧先輩がマネージャーになってからずっと押してたらしくてさ。この前のバレンタインでやっとOKもらったって言って、ずーっとあんな調子なんだって。」


 景樹が今の状況を解説し始めた。


「サッカー部のマネージャーって3人いるんだけど、本当は3年の本田真央(ホンダマオ)って先輩がリーダーなんだ。副主将か本田さんが本来ならあの壇上にいるはずだったんだけど…。主将が今度入ってくる部員が浪牧さんに手を出さないようにって言って、壇上で威嚇するって大騒ぎでね、結局こうなちまった。」


 サッカー部の主将の発言にみんな苦笑している。

 マネージャーさんは一回り小さくなったような感がある。


「なもんだから、1年のサッカー部員、あんま出てないんだよ。塩入(シオイリ)もその口。まあ、宍倉さんに無視される傾向があるから、余計、人の順調な恋愛が疎ましいらしい。」


 景樹が補足を入れてきた。


「と、重要な要件は話したんで、簡単にサッカー部を紹介します。今回は1年生で有望な部員も入ってくれて、県大会のみならず、全国を目指します。一緒に国立競技場を目指す気骨のあるものはサッカー部に来てくれ、以上。」


 本当にこの人は何を考えているんだ?


(面白いな、この学校。私の高校時代はこんなに愉快な仲間たちはいなかったな)


(親父のころとは時代が違うからな。とはいえ、陰キャの俺としてはあまりにも眩しすぎる世界だ)


(お前が陰キャねえ。「女泣かせのクズ野郎」という二つ名を持つお前が)


(うるさい!なんなんだよ、その二つ名)


「ああ見えて、主将に選ばれるくらいだからさ、サッカーはすげえ技術もってだぜ。機会があったら見に来てくれ、光人も須藤も。」


「ああ、彼女作って見せびらかしに行ってやるよ。な、須藤。」


「いや、白石、お前は出来るかもしれないけど、俺は無理だ!」


「ちょっと違うな、須藤。難しいのは光人の方だよ。あれだけ周りに美女をはべらかしておいて、一人に決められるほどの胆力もないよ。」


 景樹が俺の本質をものの見事に突き刺してくる。


 俺は胸を抑えて倒れる真似をした。


「このリア充が!」


 須藤が笑いながら、俺に向かって吐き出すように口にした。



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