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第101話 部活動紹介Ⅰ 文芸部 前編

 壇上に二人の上級生が姿を現した。


「文芸部の部長の2年の大塚詩織(オオツカシオリ)です。こちらは副部長の有坂裕美(アリサカユミ)、副部長の2年です。」


 2人の女子生徒がそう挨拶した。


 部長の大塚先輩はいわゆるザ・文芸部と言っていいほど、見た目通りだ。


 長い黒髪に大人しそうな雰囲気。黒い細いフレームの眼鏡。


 さすがに顔の造り迄は距離があって微妙だが、雰囲気は完璧。


 ところが隣の副部長と紹介された有坂先輩は校則ギリギリか、アウトじゃないかという出で立ち。


 首のリボンタイを少し緩めていて、第2ボタン迄を外している。

 髪は脱色とも、地毛ともとれるブラウンで少しウェーブがかかってる。

 スカートも腰の位置が高いためなのか、かなり細い脚が膝上をかなりオーバーする感じで露出している。

 何の説明もなければ、この2人の並びは服装の校則の説明のためのサンプルにしか見えない。


「あたしぃ~、こんな感じだけどぉ、副部長やってます2年の有坂裕美です。で、他の部はまだ3年が部長やってんですけど、この文芸部は、3年がいないんで今は2年だけです。だから新入生にはぜひ入ってもらいたいな。ちなみにぃ~、うち、中学の子も入っても大丈夫ですよ。」


「副部長がこんな感じですが、この子、こう見えて結構真面目なんで引かないでね。」


 部長さんがギャルっぽく見える副部長を擁護していた。


 いや、せめてこの部活動紹介の時くらい、ちゃんとした方がよくないか?


「部長からもこの格好はまずいんじゃない?な~んて言われたけど、心が真面目だから問題なし!ていうても、こんなギャルチックな私が文芸部なんて似合わねえ~なんて思っちゃうよね、そこの君!」


 いきなり指さされた前方の男子がびっくりして、反射的だろう、立ち上がってしまった。


「あらあら、別に立たなくてもよかったんだけどさあ。ねえ、君、文芸部にあたしって似合わないかな?」


「あ、いえ、先輩は、その、か、可愛いです、はい。その服の、き、着こなしって言うか、雰囲気?最高です。」


 そう言ってその男子は顔を赤らめて座った。

 顔は両腕で隠しているようだ。

 隣の友だちの男子が「よく頑張った」と労いの言葉を掛けている。


「ありがとうね、君。ちょっとキュンときちゃった、あははは。」


 と、言う割には先輩の顔も赤くなってる。


(揶揄うつもりが、逆襲を受けた、って感じか)


(そんなとこだよね。でも、あの今の人は突然指名されてよくあの返しができるな。俺、ちょっと無理)


(たぶん、彼はあの副部長の格好に惚れてたんだろうと、私は思うよ、光人)


「ほら、裕美!自分で振っておいて、褒められたからって照れないで!全然進まないから、ちょっと辺見君の顔がやばくなってるよ。」


 部長の人が、進行を務めてる辺見先輩に視線を向けて、副部長の暴走をたしなめている。

 確かに、端正な辺見先輩の表情が少し歪んでる気がする。


 副部長の有坂先輩もそちらに顔を向け、すぐに俺たちに顔を向けなおした。


「あーと、変に時間を使ってすいません。ここから真面目にうちの文芸部の活動について説明します。プロジェクターお願いします。」


 体育館の光が少し暗くなり、演壇のスクリーンに後方からの投影が入る。

 そこには文化祭らしい写真が展開されている。


「私たち文芸部の主な活動は2つあります。その一つが、この学校の文化祭「翔智祭」での展示です。それに合わせて、部員は一つ以上の作品、小説やエッセイ、詩、感想文などを製作して、冊子を作る希望者に配布します。また、1年間で呼んだ書籍について、1番印象に残った作品をポスター展示をするよ言うことを毎年行っています。」


 プロジェクターから過去の展示ポスターや、冊子の表紙などを紹介している。


「2つめとして、「作家になるべき」や「ヨミカキ」などの文芸作品の投稿サイトに積極的に参加しています。これは基本自主的に行っているものですが、過去に、「作家になるべき」で1万ポイントまでいった作品もありました。」


 1万ポイントを取るとなるとかなり読まれて高評価を取ったという事だ。俺もたまに見てるけど、それ凄いな。


「須藤はさ、そういうところの投稿とかした事あんの?」


 景樹が今の話を聞いて、須藤に話を振った。


「うん、ちょっとね。あんまり読まれてないみたいだけど。でも1万ポイントって、凄いな。」


「へー、そういうもんなんだ。俺、そういうに今まで見たことないからよく解んないけど。」


「一般的には、そんな程度だよ。いわゆるラノベが主体だから、本格的なものはあんまり書かれないんじゃないかな。」


「ふーん。」


 サッカー大好きな体育会系の景樹では、そういう態度の方が納得できる。


「現在、2年の女子6名の部員で頑張ってます。今後、この文化祭だけでなく、演劇部や電脳部と協力していく企画も立ち上げていく予定ですので、本を読むのも、書くのも興味がある人は特別棟クラブハウス2階の文芸部まで見学に来てください。よろしくお願いします。」


 最後は部長の大塚先輩が挨拶して終わった。


「あの有坂って副部長の話聞いたことあるか?」


 景樹が俺に聞いてきた。


 ちょっと待て、俺たち入学して今日でまだ2日目で先輩の噂をそんなに聞くことがあるのか?


「文芸部のうわさ話は聞いたこと、あるよ。」


 と、思っていたら隣の須藤が知ってた。


 あれ?


 おれ、おかしいの?


(安心しろ、私も知らない)


(それは、親父は俺と一緒の情報しか入ってこないからじゃないか!)


「確か去年の2年生、今の3年生を全員叩き出しったっていう噂。」


「須藤、陰キャの割によく事情を知ってるじゃないか!」


「陰キャは余計だ、事実だとしても。」


 須藤が俺を挟んで景樹に文句を言ってきた。それを面白そうに笑う景樹。この二人、結構相性いいのか?


「その3年生を叩き出した張本人が、あの有坂先輩だって。」


 俺は今まさに演壇からにこやかに去ろうとするギャルチックの有坂先輩に驚きの眼差しを向けてしまった。


「文芸部なんてさ、どこの高校もそうなんだろうが幽霊部員のたまり場みたいなとこあって。さっきの文化祭の展示なんかも、基本1年生と1部の3年生のみのものらしい。で、大塚部長と有坂副部長たちは本気で活動したかったのを、結構去年の2年生の部員が茶々入れたり、邪魔したりしたらしいって言われてる。」


 須藤が景樹の言葉に続けて、その噂話を語った。 


「景樹は春休みから部活でここの事情を知る機会はあったと思うけどさ、須藤は何で知ってんの?」


「まあ、さっきの投稿サイトの口コミみたいなもので、高校の文芸部ネタが上がっててさ。この高校とダイレクトに書いてはいないけど、その話からある程度特定できたりするんだよね。だから、佐藤からその噂話のこと言われて思い出した。ギャルのような子が上級生を強制的にやめさせたって。」


「でもその態度に怒るって、かなりまじめな子ってことだよな。見た目はあんな感じなのに。」


と俺が言ったら俺の両隣が急に黙ってしまった。


俺の前に人が立っている気配。


恐る恐る上を見上げると、先程、噂していた可愛い先輩がひきつった笑みで俺たちを見ていた。

 どうも、噂話をする音量を間違えてしまったようだ。

 ステージ袖のとこまで声が届いていたことを知った。


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