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ホストは異世界で紳士を極める――社交と芸術無双で女たちから全力で愛される伊達男の伝説――  作者: 穂積潜


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第24話 商売

「ひさしぶりー! やくそくした通り、持ってきたよ。いい匂いのする枝」


「まいど!」


 俺はツケを払った妖精に、満面の笑みで対応した。


「あちしのイヤリングは!?」


「これ!」


 ワクワク顔で顔を近づけてくる女の妖精に、取り置きしておいたイヤリングを渡す。


「やったぁ、すてきすてきすてき!」


 俺の手からイヤリングを奪い取るように受け取った妖精が、その場で何度も回転して見せた。


「交換! 交換!」


「そうだった! ――はい、これでいいでしょ、いい匂いのするキノコ! これが好きなボーンボアに見つからないようにするのとっても大変だったのよ!」


 妖精は自慢げな様子でスカートの裾を掴み、バタバタと乱暴にはためかせると、中からいくつもの黒い塊が転げ出る。


 でこぼこして一見グロテスクなそれを、俺は鼻に近づけた。


(この匂い――トリュフに似ている……こんなのものも採れるのか)


「まいど! またこれ持ってきて」


「次は、腕輪をお願いね!」


 妖精は上機嫌で森に帰っていった。


「バイバイ――そこ、見えてる! 交換! 勝手に持ってっちゃダメ!」


 俺は左手で手を振りながら、唐突に後ろを振り返り、小刀を抜く。


「ヒャッ! 見てただけだよ!」


「嘘、紐、切ろうとした!」


 俺は、盗難防止のため、商品と結びつけていたカンムリ草の茎を指して言った。


 全く、隙あらば盗もうとしてくる性質の悪い妖精もいるから気が抜けない。


「お前! これはボクが先に見つけた奴だぞ!」


「違う! おいらだ!」


 目の前で取っ組み合う妖精もいる。


「喧嘩、ダメ! 二つあるから、だいじょぶ」


 二匹をなだめながら苦笑する。


(俺は子守ではないんだがな)


 遊び心をもった大人は好きだが、ただのガキは嫌いだ。


 どんどん、商品が減っていく。


 それに伴って、交易品も溜まっていった。


「これちょうだい!」


「それ、足りない。あと、二本、いる」


「えー、わかんないよ! どうして、あっちの枝はよくて、こっちの枝はダメなの? どっちもいい匂いのするやつなのに!」


「これ、覚えて」


 俺は、妖精たちに絵を見せる。


 左が俺の商品、右が妖精たちに要求する交易品。


 ポミナの枝三束=人形一個、といったように、文字文化のなさそうな妖精でも分かるようにした交換レートの対照表だ。


 もちろん、基本的には作るのに労力がかかる商品ほど対価も大きくなっている。


 向こうから新しい品が持ち込まれた場合には、その場で判断して、絵を描き加えていく。


「キミは、『ねこ集めの木』がそんなに欲しいの?」


 対照表を見た妖精が小首を傾げる。


「あれなら、森にいっぱい生えてるよね」


「でも、あれはそれぞれの木に、縄張りにしてる『ねこ』がいるよ。見つかったら食べられちゃう」


「ハゲ石の近くに、死にかけの『ねこ』がいるよ。あれなら、力を合わせれば、僕たちでも殺せるよ」


「じゃあ、赤土に住んでる「ねこ」をけしかけようよ。あの「ねこ」は、若くて、怒りっぽくて、ばかだから、ちょっとからかえば、ジジイねこを襲うはず――」


 一部の妖精たちが物騒な相談を始めた。


 日本だと妖精にポジティブなイメージしか持たない者も多いが、純粋な幼児性とは、時に残酷を孕む。


「よし。じゃあ、そういうことで――ねえ。キミ、次はいつ『おたから』を持ってきてくれるの?」


「次は、あの花が散る頃。この香りがしたら、来て! これが、『俺の匂い』! 匂いを、森に流す!」


 俺は受取ったばかりの複数の香木をナイフで削って調合する。


そして、出来上がったそれを、土のブロックに穴を開けて作った即席の香炉に放り込み、火をつけた。


「いい匂いだね。キミにぴったりだよ」


「うん。赤い月の光みたいな匂いがする。危なくて、あやしくて、でもなんか綺麗なかんじ」


 妖精たちが目を閉じて、うっとりと香りを吸い込む。


 やがて取引は一段落し、控えめに鼻歌など歌いながら、俺が静かな時を楽しんでいたその時――


「うわっ! ヤバイよ!」


「早く逃げなきゃ! 『でっかいねこ』が来る!」


 近くの樹の上で戯れていた妖精たちが、危機感も露わに叫んだ。


拙作をお読み頂き、ありがとうございます。

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