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8話 overwhelm-1

「あたし達、何でこんな街中で遭難してるの?」

「こっちが聞きたいよ。ともかく早く解決しないと全滅だ」

「装備はまだちょっとは持つように作ってるよ。でもまだ死にたくないから、早いとこお願いするね。できればあと十分以内で」

「「無茶言わないで!」」

「冗談だって、怒らないでよ」


 三人の人物が、動かない車の中で忙しなく視線を交錯させている。エンジンが止まっているわけではない。運転者はアクセルペダルに足を乗せ何度も踏み込んでいる。動力はタイヤに伝達されており回転はしている。それでも車が動かないのは積雪のせいだ。


「クソッ、動かない!」


 雪にはまったタイヤは空回りするだけで一向にその役目を果たさない。三人の内の一人が窓から外を見て叫んだ。


「見て! どんどん広がってる! このままじゃ街全部が凍っちゃう!!」


 その者の言うとおり街路樹が、店舗が、住宅が、猛烈な勢いの吹雪にさらされ、凍りついていく様子があった。その光景は車の進行方向に対して反対側に向けて広がっていく。後方のまだ無事な街並みが少しずつ冷凍の世界に飲まれていく様を、その者の目が捉えていた。


「分かってる!」


 暖房は全開にしているが、役に立っていなかった。車内は冷え切っているようで、吐く息が白い。運転者がしかめっ面でスイッチをオフにすると、ついでにエンジンも切った。


「車は諦めよう、歩いていくしかない」

「しかたないね」


 その日の最低気温は、ウィルチェスターシティの観測史上の記録を大幅に更新するものだった。冬はとうに過ぎ去り、時期外れもいいところに発生した大寒波は、突如として街を襲い猛威を振るった。幸いなことに数時間で極低温の嵐は去り、街が被ったダメージはさほど大きくなかった。事の真相について、当然のようにテレビのニュースや新聞、SNSなどで取りざたされ、様々な仮説や憶測が飛び交うことになる。が、それも一時のもので次第に皆に忘れられていった。結局のところ寒波は街の外からではなく、街の内側から発生したものだった、とだけ判明しているのみである。発生から収束に至るまで、原因は一切不明のままだと公式には記されている。


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