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前世メイド、水蓮街へ行きます。

鍛冶屋を後にし、紅羽(くれは)達3人は本日2度目の依頼所に到着した。一応依頼所の前に立っているミッションの貼り紙が貼られた看板を見るが、探している水蓮街(すいれんがい)行きのミッションはなかった。貼られているミッションは大体は千成街内や街近くの草原に行く物ばかりだ。今日はあるのだろうか…?と半ば不安になりながら、3人は依頼所へ入っていった。

依頼所に入ると、今日は紅羽と瑠愛(るあ)がお世話になったあの水色のポニーテールの女性職員・(おと)はいない模様だった。今朝依頼所の救護室では会ったのだが。


「今日は花里(はなざと)さん朝までだったのかな?」


「なのでしょうかね…?」


「あ…じゃあ、私がよく会う職員さん、いるのでそこに行きましょうか…?」


「あ、それいいかも!いいよね、紅羽?」


「はい、構いません。」


(かなめ)の意見に賛成すると、紅羽と瑠愛は彼女がよく会うと言う職員のいる受付へ向かった。

こちらです、と要が足を止めた受付に行くと、窓口には茶色の短髪姿の男性が座っていた。銀縁の眼鏡をかけた男性がこちらの存在に気付くと、笑顔を浮かべながらお辞儀をした。「こんにちは…(かがり)さん。」と要が喋りかけると、(かがり)さんと呼ばれた男性もその血色の良い唇を開いた。


「こんにちは、胡桃沢(くるみざわ)さん。そちらは?」


「その…私の、初めてできたパーティ、です…それで、今日はその申請書と、あと…ミッションを、探してまして。」


「なるほど、かしこまりました。はじめまして、僕は篝 柊羽(しゅう)です。以後お見知り置きを。」


丁寧なお辞儀に釣られて紅羽と瑠愛も頭を下げる。「では、申請書でしたね。」と言うと、柊羽は律が使った時と似たような、と言うより同じタブレットを操作し始めた。タブレットの上にメニュー画面のような半透明の画面が現れ、上部にはパーティ結成申請書と書かれている。


「こちらをメニュー画面を使用する際と同じ要領で操作してください。ご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお声掛けを。」


「わ、分かりました。いつも、ご丁寧にどうも…」


要は軽く頭を下げ、タブレットの上に浮かぶ半透明の画面を操作し始めようとしたが、操作を紅羽か瑠愛に任せようと画面の前から数歩離れた。瑠愛が首を傾げると、要は誘われた自分ではなく、誘ってくれた2人のどちらかがやった方がいい、という理由だった。言えてる…と納得した2人は顔を見合わせたが、この世界に来て日が浅いから、と紅羽は瑠愛に操作を任せた。何か紅羽って1歩後ろにずっといる感じだな~っと苦笑しながら瑠愛は画面を操作し始めた。前世がメイドと言う、決して最前列には出ない職に大学に通いながら就いていた紅羽は前に出る事を率先してやらない。否、やらなく()()()と言った方が正しい。むやみやたらに前に出るものではない、と心に決めた頃から紅羽(くれは)は人やグループの前には出なくなった。主人様より目立ってはならない、メイドは、メイドらしく一歩後ろで相手を見て、相手を引き立てる事こそがメイドなんだと。もう昔の事と言うべきか生前の話と言うべきか分からない事を思い出していると、瑠愛が後ろを振り向いた。


「あとは名前だけだから、自分の名前は自分で書いてくれる?本人確認も兼ねてだって。」


「わ、分かりました…!」


そう要が返事をすると、「では、お先に書かせていただきますね。」と紅羽に一言言って画面を触り始めた。10秒ほどで要は場所を譲り、紅羽も画面を触り始めた。1番上に少し走り書き地味の(ゆずりは) 瑠愛という文字、その下には丸文字の様な可愛らしい胡桃沢 要という文字が書かれており、字だけで個性があって面白く感じた。紅羽も津々楽(つづら) 紅羽と丁寧に書き、画面から離れた。一通り書き終わった事に柊羽は気付き、口を開いた。


「ありがとうございます。もし6人集まりましたら、リーダーを決める事を頭の中に入れといて下さい。では、お次はミッションですね。どのようなミッションをお探しですか?」


「えーと、水蓮街って所に行けるミッションってありますか?」


「水蓮街ですね。少々お待ちください。」


瑠愛が問うと、柊羽はすぐに浮かび続けている半透明の画面で調べ始めた。ある一点に触れると画面いっぱいのミッションが現れ、検索画面から街の名前を入力し、再びミッションの一覧を見ると、3つだけ該当するミッションが現れた。1つは指定モンスターの討伐、1つは店の手伝い、1つはアイテムを納品するミッションだった。では、お好きに操作をしてください、と柊羽は言う。指定モンスターや店の手伝いはよくあるが、アイテムを納品するのはごく稀、という事で瑠愛はそのミッションに触れた。


「水蓮街の旅館が依頼者…希望アイテムは、スティールスライムの宝石20個…だって。室内の飾り用かなぁ?」


「恐らく、そうかと思います…水蓮街の宿泊施設は…確か、室内に宝石を飾ってる所が多い、らしいので…」


そう答えると要はメニュー画面を開き、水蓮街の旅館を調べ始めた。画像検索をすると、生前紅羽達が住んでいたような所謂()()な廊下や部屋に小さい、だがキラキラと輝く宝石が壁を彩っている、そんな画像が見つかる。この装飾品の宝石、という事なのかと何となく納得した紅羽は、2人にこう聞いた。


「あの…そのミッション受けませんか?単純に、面白そうだかららという理由ですが…」


「私は全然オッケー!要ちゃんは?」


「私も…これで大丈夫、です…宝石の質によっては報酬額も上乗せすると書いてありますし…いいと思います…!」


これ受けますと紅羽が言うと、柊羽は「かしこまりました。」と以前律とやったような作業をした。

作業後ミッションの内容を見ると、先程の画面よりも細かく内容が書かれていた。要が言ったように宝石の質によって報酬額は上乗せ、さらには宝石の所持率が高いスティールスライムの居場所も書いてあった。また、柊羽の話によると依頼先の旅館は予約が数年先までいっぱいになってる程の人気旅館らしく、報酬額の上乗せができるのもそのお陰との事。予約がいっぱいという事は、その旅館には泊まる事は出来ないのだろうか、と紅羽は聞いたが柊羽曰く、泊まれない可能性は高いが、ミッションがあるという事は受託者用の部屋を残している可能性も捨てれない、という事だ。明らかに低い可能性を信じながらスキップをしながら駅まで行く瑠愛は突如後ろを振り向いた。


「ねぇねぇ、ふと思ったんだけどさ~2人共敬語じゃん?私さ、2人から敬語で言われるのって何か距離がある感じで嫌なんだけど…どっちか敬語やめない?」


「敬語…ですか。では、要様。私のために犠牲になってくださいませ。」


「ふえっ!?ぎ、犠牲…?」


「いや、だって…私、もう癖でこんな感じですし。ここは要様が敬語をやめれば良い問題でしょう?」


「で、でもお2人共…私よりも、年上なんですが…」


「そこは全然大丈夫!ねー、紅羽♪」


はい、と軽く頷くと、要は先程よりも困り顔になった。何だか、強制的に敬語をやめさせようとしている…そんな訳ない…?2人の事だから、そんな事はないと信じた要は1つ咳払いをし、頬を赤くしながら口を開いた。


「で、では…これから、よろしく…ね、く、紅羽…ちゃん、る、瑠愛、ちゃん…!」


「うん!改めてよろしくね(かなめ)ちゃん、紅羽!」


「はい、私からもよろしくお願い致します、瑠愛様、要様。」

第8話までのご愛読、ありがとうございます。作者の夢坂姫乃です。

投稿する大体の日付をお伝えしていなかったので、この場をお借りしてお伝えさせて頂きます。当小説は、おおよそ1週間に1話ほどのペースで投稿する予定でいます。ですが、私の都合や筆記ペースによって数日、数週間ずれる事があると思いますが、そこはご了承下さい。

では、今後とも「前世メイド、今世はヒーラー兼重戦士でエンジョイします。〜前代未聞の特殊能力・魔力向上は所謂チート能力かもしれません。〜」を、よろしくお願い致します!感想、評価、ブックマーク登録お待ちしております♪

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