番外編1
※「番外編1」は読んでも読まなくても構わない話ですが、読むと次回以降の話が分かりやすくなります。※
これは、紅羽ら一行が屋敷を手に入れて数日のこと。魔力の感知性能が高い瑠愛や南瀬を差し置いて、敵モンスターの魔力を感じた季優は屋敷の裏庭に立っていた。夕方から夜に移り変わる、薄暮の時間。人間の魔力ではない、明らかに敵モンスターの魔力を感じるのだ。屋敷の裏庭は小規模な森と隣接しているため、敵モンスターの魔力を感じるのもおかしくはない話なのだが。魔力の反応が途切れ途切れであり、かつ薄くて見落としそうになるもの。でも、人っぽくはない…
「…もう1人の瑠愛、の魔力ではないし…あの占い師のものでもない…人間の魔力じゃないのは確実か…」
心地よい風と共に、結えた紺色の長髪と青い鱗柄の羽織が靡く。その瞬間、あの謎の魔力を感じる。右手に刀を出現させる。どこからでもかかってこい…そう構えるが、どこからもモンスターはやってこない。気のせいか…?と刀を下げると、突如何者かに肩を叩かれた。驚きながら刀を突きつけると、それは見知った人物、もとい同じパーティのメンバー且つ同居人だった。
[こんな所で何してるんだ?]
「…南瀬か。いや…ちょっと、変な魔力を感じて。」
[雫石の魔力性質は、敵対生物や濃度の薄い魔力を感じ取りやすいのか。]
[雫石以外…主に僕や杠は純粋な敵対生物にしか反応しづらい体質だから、感じ取れなかったのだろうか。]
「多分。お前、そんなことも分かるのか?」
南瀬はコクリと頷くと、再び画面に文章を打ち込んだ。
[魔法使いジョブの人の大体は他人の魔力の性質を見ることができる。]
[ちなみに、津々楽と胡桃沢は味方の魔力の感知に優れている反面、敵対生物の魔力を感じづらい。]
[羽月はAIだからよく分からん。]
「そりゃあ…そうだろうな。ところで、ついさっきその薄い魔力感じたんだけど。南瀬は感じたか?」
特に何も、と南瀬は首を横に振る。じゃあ、さっきの魔力は気のせいか…?そう思うことにした季優は、南瀬と共に屋敷の中に戻って行った。
その日の夜。眠ろうとしたらやはり魔力を感じ取った季優は、パジャマであるスウェット姿で外に出た。何もない…そうげんなりすると、季優はとりあえず護衛として屋敷の四方の地面に外部からの敵対魔力を遮断することができる結界を作ることができる矢を刺した。これでどうにかなるだろう…と、季優は溜息を吐きながら再び自室に戻って行った。
「…はぁ…」
だが、矢の効果は全くなく、次の日の夜も、また次の日の夜も濃度の薄い魔力を感じ取った。訳が分からない。敵対魔力を遮断できる結界なのに…と溜息を吐いていると、季優が座っているソファの隣に南瀬が本を持ちながら座ったのが見えた。ペラペラとページをめくり、ある一箇所のページを見つけると、南瀬はそのページを季優に見せた。
「…除霊…?」
[濃度の薄い魔力を持っているモンスターはゴースト種族しかいない。]
[ゴースト種族には普通の結界を無効化する力があるが、除霊効果のある結界には有効だ。]
「除霊効果…そんな矢あったな。ちょっと通販で調達してみるか…」
後日、除霊効果のある結界を作ることができる矢を設置した季優は、半年程度は謎の魔力に悩まされなくなったとさ。




