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前世メイド、列車で柘榴街へ行きます。

酔っ払いを撃退し、足早にミッションを受領した紅羽(くれは)達5人は、柘榴街(ざくろがい)行きの列車に乗り込んだ。今回の列車は個室仕様であり、余裕で4人入れる個室を選んで座った。ふぅ、と売店で買った紅茶を飲んで一息ついた紅羽は、メニュー画面で千成街(せんなりがい)から柘榴街までの時間を確認した。


「柘榴街までは1日近くかかるんですね…位置的には水蓮街(すいれんがい)よりも遠いのでしょうか?」


『東都最北端の街だからね〜千成街は大きいし、その間に小さい街とかがあるからどうしても結構時間がかかるみたいだね〜』


そう紫音(しおん)から説明された紅羽は、だから柘榴街行きの列車は個室仕様なのか…と何となく納得した。シャワー室もトイレもある、所謂寝台列車のような装いの列車は、ゆっくりと柘榴街に向かい始めた…

列車が出発してから数時間が経ち、すっかり空が暗くなった。時々様々な街を画像検索しながらぼんやりと空を見ていた(かなめ)は、眠さから目を閉じかけてきていた。確かに、部屋はちょうどいいくらいの暖房が効いており、眠気が来るのは分かる…と季優(きひろ)は心の中で頷いた。


「…要?夕飯のワゴンサービスが来ると思うが…いいのか?」


「…夕飯…?」


「要の好きなスイーツのデザートもあるかもだぞ。」


「デザート…!じゃぁ…まだ、起き、ます…」


この調子で起きれるのだろうか、と紅羽と瑠愛(るあ)が苦笑していると、コンコン、と扉を叩く音がした。ちょうど扉側に座っていた紅羽が引き戸を引くと、噂をすればなんとやら、ワゴンを押してやって来た女性が丁寧なお辞儀をして立っていた。夕飯のメニューを紅羽達に渡すと、ワゴンに付いたタブレットを操作し始めた。


「わー、どれも美味しそうー!ねね、紅羽はどうするー?」


「そうですね…洋食も良いですが、和食も美味しそうですね…」


「俺は…和食にしようかなー…要は?」


「…洋食、でしょうか…」


数分悩んだ後、紅羽はオムライスとコーンスープ、瑠愛は唐揚げ弁当と食後用のカフェラテ、要はチーズハンバーグとオレンジ味のゼリー、季優は海鮮丼と烏龍茶をそれぞれ頼んだ。しっかり自分の頼んだものは自分で金額を出し、午後8時前に4人の夕食が始まった。紫音はと言うと、メニュー画面の中でカルボナーラを食べていた───

各々食べ終わり、指定された場所に弁当の箱や器を捨てに行った後、ふと紅羽は思った。


「…ところで瑠愛様、何故この時間でカフェラテを買ったのですか?寝れなくなりますよ?」


「私を何歳だと思ってるのさ…まぁ、理由としては単純に私って寝付きが悪いからさ。この前の九重(ここのえ)さんのこともあるし…寝ずにいてもいいかなぁって。」


「見張り、みたいなものでしょうか。そういうことでしたら、私が…」


『いーや、ここはボクに任してよ!何だかんだこの中で魔力の消費が一番激しいのって瑠愛と紅羽が同率なんだよー?』


「え、そうなの?全然気にしてなかった…」


「瑠愛様、スキルも特殊能力も魔法系ですから…」


『と、いうことで見張りはボクに任せてー!ほら、そこの2人みたいにさっ、寝ろ寝ろー♪』


紫音が指差した先には、季優の青と黒の市松模様の羽織を掛けて寝ている要とそれに寄り添って寝ている季優がいた。小声で「わーお健康たーい…」と呟く瑠愛に苦笑した紅羽は、自分の深紅のカーディガンを自分に掛けて寝る体勢になる。瑠愛が「もう寝るのー…」と寂しそうな声を出すと、「明日に備えて寝るんで。おやすみなさい、瑠愛様。良い夜を。」と言って紅羽はそのまま目を閉じた。ぶーっと頬を膨らませると、瑠愛は犬ならば耳が垂れていそうな顔をしながら紫音に話しかけた。


「…みんな寝ちゃったぁー…紫音、私が眠くなるまで話そうよー…」


『お、ボクでいいのならぶっちゃけ話するー?』


「やろうやろー…」


その後、瑠愛が寝落ちしたのは2時間近く後だった───

列車が出発してからおよそ12時間経った朝6時半頃。朝日が昇り始め、車内の照明がいらないのでは、というくらい明るい晴天が広がっていた。1番に起きた季優は、浮かんだままのメニュー画面から外を眺める紫音に話しかけた。


「おはよう、紫音。見張りお疲れ様。」


『おはよ、季優!()()()()()()夜は得意だから、そんな苦じゃないよぉ〜それに、眠気も空腹も感じないプログラムが組み込まれているのが、ボク達AIだからね。』


「なるほど…って、お前前世の存在ってあったのか…!?」


『あるよ〜失礼な!ボクも人間の一種だし!』


「そうだったのか…失礼なことを言って、すまなかった。」


いいよいいよーと軽く流すと、紫音は明るい雲ひとつない青空を再び眺めた。その緑色の目に映るのは、見る機会が極端に減った青い空。前世の頃の自分からいることを望んだ暗い部屋の天井じゃない。今自分の背後に広がる青と黒と数字ばかりの背景じゃない。自分を貰ってくれた紅羽や瑠愛、要、仲間になった季優に会えたおかげで、この綺麗な青空を見ることができるようになった。


『…ボク、皆に会えて良かったなぁ…』


「ん?紫音、何か言ったか?」


『…ううんっ、何でもない!それよりも、そろそろ朝食のワゴンサービス来る時間だから、皆のこと起こさないとね!』


「…あぁ、そうだな。おーい、起きろ要ー」


『くーれは、瑠ー愛!起ーきてー!』

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