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何度目かの入学式

 



 エリック兄ちゃんとイーシャ姉ちゃんが学園に入学してから早二年が過ぎた。


 俺も学園に入学する日が遂に来たのである。




「ディーン、忘れ物は無い? 」



「マリーナ母さん、それもう八回目だよ? それに、荷物を準備するのは母さんも一緒にやったじゃん。」


 エリック兄ちゃんの時もやったやりとりだが、エリック兄ちゃんとは異なる点が一つ。



「でも、お母さん不安で不安で... 」



「マリーナ、大丈夫だよ。僕もメイもセバスも一緒に確認したじゃないか。」



 そう。俺の場合、マリーナ母さんだけで無くエイデン父さん、セバスとメイまで一緒になって準備をしたのだ。



 やれ、あれは持ったのか だの、これは持って行かなくていいのか だの。本当に疲れた。

 地球でもあそこまで過保護な準備は見たことも、経験したことも無かった。



 俺としてはやっと親元を離れて自由に行動できるようになるので、不安や悲しみよりもワクワク・ドキドキのほうが圧倒的に大きい。




 そうそう、ここ二年俺が何をしていたのかというと、ロッカスと一緒にピーターから武術を仕込まれていた。




 ***

 約二年前



「んで、ディーン様。結局武器は何を使うつもりで? 」



「一番適性が高いのは刀なんだよね。」



「やめとけ、やめとけ。刀は使いづらいぞ。」



「具体的に刀と他の武器、何が違うんだ? 」



「まず、普通の武器は扱いが適当でもスキルさえあればどうにかなる。

 それにスキルレベルが上がれば使える技が増える。


 が、刀は違う。そもそも刀スキルにはレベルの上限がないくせしてどれだけレベルを上げようと技が発現しねぇ。それに刀スキルを持ってるからって特段何かが変る訳でもない。」



「レベル上限が無い? 」



「そう。普通のスキルなら10で打ち止めだろ? でも、刀スキルには11以上があるんだ。

 かく言う俺もレベル31だ。」



「ふむ、一度やってみるか。」




 こうして俺たちは刀スキルの検証をした。



 そして分かったことは、刀スキルのレベルが上がると本当に少しだが動きによどみが無くなった。つまり、刀スキルのレベルを上げると、よりスムーズに刀を振れるようになるのだ。



「なるほどな。つまり刀スキルは無いよりはまし程度ってこった。」



「いや、そうとも限らないぞ。

 刀スキルを鑑定してみたんだが、刀の摩耗も少しだが抑えられるようだ。

 刀スキルの真価は刀の扱いがうまくなることだな。」



「けど、結局スキルはレベルが上がらないと効果は薄い。

 やっぱり最初からそこそこの恩恵が受けられる他の武器の方が... 」



「そもそも疑問なんだが、スキルによる技って、技名を叫ばなくちゃならないんだろ? 

 それって魔物相手以外だと決まりづらいんじゃ無い? 」


 ピーターは少し考え込んだ後、ゆっくりとうなずいた。



「それに、魔物も上位になると知恵がつくと聞いた。なら余計にどんな技か分かったらやりづらいんじゃない? 」


 そこに疲れた様子のロッカスが声をかけてきた。



「でぇ、ですがディーン様。

 はぁ、それだと他の武器と戦った時不利なのでは? 」



「おう、ロッカス。やっと終わったのか? 」


 ピーターがからかうように言う。



「はぁ、はぁ。あなたが素振り1000回なんて言うからです。」



「だが、坊ちゃんは軽々都やってのけたぜ? 」



「武器の重さが違うでしょう!? 」


 確かに、俺は剣だがロッカスは柄が槍のように長いハンマーだ。これを振るのは確かに疲れるだろう。

 それにこのままにしておくといつまでも喧嘩? を続けるのでロッカスの疑問に答える。



「確かに、他の武器と打ち合うのは不利だが受け流すことはできなくもない。」



「ですが、やはり武器がもたないのでは? 」



「なるほど。だから坊ちゃんは刀スキルがいるって言ったのか。」



「ああ。『武器の摩耗』が抑えられるってことは打ち合いでも適用されるだろう。」



「そう考えると実用的っちゃあ実用的なのか。」



「ですが、技が使えないのは何かと不利では? 」



「いや、実際そんなに技を使う機会はそんなにない。

 対魔物でもそんなに使う機会が無い。使ってるのは低いランクのハンターぐらいだな。」



「高ランクのハンターや騎士は使わないのですか? 」



「騎士は普通は騎士学校に入って一月もすれば技なんざ使う余裕が無いことにどんなバカでも気づく。

 確かに、技は高威力だがその分動作が単調になるし、実力が上がれば上がるほど格下の奴の技なんざ目をつぶっててもかわせるようになる。」


 ピーターの意外な答えにロッカスは驚いた顔をしている。



「だがそうすると剣とかとは違う戦い方をしなければならないぞ。」



「そうだな... 」




 ***




 そんなこんなで俺の武器は刀に決まった。

 が、如何せん刀という武器がメジャーじゃないので、いろいろ手探り状態だ。


 ちなみにロッカスは鍛冶に使うハンマーをそのまま武器として使うようだ。



「じゃあ忘れ物は無いね? 」


 エイデン父さんが最後の確認をする。



「うん。大丈夫。」



「それじゃあ学園に出発するよ。」


 そう言って俺たちは学園に向けて出発した。




 ***




 学園に着いた俺たちはエリック兄さんたちの時と同じように他の貴族たちに挨拶しに行った。

 前回はあまり名前を覚えらえなかったが、今回はほとんどの貴族の名前を覚えることができた。


 そこで気になることが分かった。


 我がアンガー家は子爵家だが、扱いや他の貴族の様子から考えるに我が家は子爵というよりも伯爵といった方がしっくりくる。

 基本的にこの世界の爵位とはその貴族の武力を表していると言っても過言では無い。だからこそ地球とは違い、爵位の入れ替わりが多い。


 だが、アンガー家はここ10年子爵のままだ。



 色々と腑に落ちないことが多いまま入学式が進んだ。







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