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旅立ち

全部で3話あります

 



 従者・騎士を決めた後は大変だった。


 マリーナ母さんやエイデン父さんからは

「本当のにこいつらでいいのか」 としつこいぐらい聞かれたし、


 セバスからは呆れられるし、メイからは無言の圧力がかかるし、


 選ばれた側も

「本当に自分でいいのか」 と二分おきぐらいに聞かれるしで本当に疲れた。




 結局、全部が落ち着いたのは3日後だった。




 ***




「エリック。忘れ物は無い? 」



「無いよって、お母さんそれ何回目? 」


 エリック兄ちゃんが呆れるなんて珍しいことが起きたのは俺が従者・騎士を決めた日から約二週間後の出来事だった。


 この世界では7歳になる年、国立学園・初等部、日本で言う小学校に入学しなければならない。これは貴族の子供だろうが、平民の子供だろうが関係なく1つの学び舎で6年間過ごさなければならない。


 この初等部とその上の中等部では他国籍の者は原則入学できない。この学園では顔合わせ、自国の歴史や地理、文化といった物を学ぶお勉強ちっくな意味合いが強いのだ。

 本当に日本の小学校・中学校に似ている。



 また、魔法の本格的な訓練は中等部に入ってからである。エイデン父さんに理由を聞いたら子供が勝手に魔法を使うと危ないからだそうだ。

 学園内では魔法の使用が緊急時を除いて使用がいるらしい。



 そしてこの日はエリック兄ちゃんとイーシャ姉ちゃんが初等部に向けて出発する日でもあり、俺とサムにとっては初めて領地から出る日でもあるのだ。


 一応我が家も貴族なので本国の方にも領地があるのだが、今住んでいる領地の方が圧倒的に広いのと周りの反応をいちいち気にしなくていい(他の貴族に気を遣ったり、見下されないようにしなくていいとも言う)ので楽なのだ。




 ちなみに、学園は初等部・中等部限らず寮制のため次にエリック兄ちゃんとイーシャ姉ちゃんが帰って来るのは夏休みだ。


 さみしくなるなぁ。



 エリック兄ちゃんはマリーナ母さんにあれやこれや言われてやりずらそうだけど、イーシャ姉ちゃんの方はメイドや従者・騎士たちと淡々と準備をしている。




 ***




 なんやかんやでみんなの準備が終わり、王都に着いた。


 え? 道中何も無かったのかって? それが不思議なことに何も無かったのかったんだよね~

 ナンデカナ~ オレナニモミテナイ。

 エイデン父サンヤセバス、メイタチガマモノアイテニムソウシテトカアリエナイヨ。ハハハ...



 王都の我が家に着いたら休憩もそこそこに学園へと向かった。

 なんでも他の貴族に挨拶をしておくらしい。


 なるほど、これをわざわざ入学式の前にやっておくことで子供たちがスムーズに友好関係を築けるようにしたり、自分が所属する派閥ないしグループを学園の中でも形成させるのか。



 というわけで、早速他の貴族と顔合わせである。ちなみに貴族教育の一環として「うちと仲の良い家」と「あまり仲がよくない家」は勉強済みだ。


 普通の子供なら言葉通りに受け取ってしまうが、あいにく俺は普通ではないのでその裏の意味を知っている。なのでこの場で全部無理に覚えなくても最悪グループ分けさえできてしまえばいいのだ。







 なんて思ってたけど結構あるぞ!? まああまり顔と名前を一致させられてはいないがそれなりに派閥が見えてきた。



 まず俺たちアンガー家が所属する派閥。この派閥はシェブ侯爵家を中心とした派閥である。


 次に最大勢力の派閥。これはラーオ公爵家が中心の派閥で、派閥こそ違うがうちの派閥とかなり仲が良い。おそらく敵ではなく、ライバルといった形に近いポジションだ。


 最後にたぶん最近できた派閥。これはイルワ侯爵家が中心の派閥。うちの派閥とラーオ公爵家の派閥、共通の敵といった派閥だ。


比率でいうと上から順に 4:4:2 ってところかな?



 最後のイルワ侯爵家の派閥の人たちは何というかうさんくさい印象を受けた。同じ事を感じたのか、エリック兄ちゃんとイーシャ姉ちゃんは内心、嫌そうにしてた。







 他の貴族との挨拶が済んだ頃にはもう入学式が始まろうとしていた。エリック兄ちゃんとイーシャ姉ちゃんはしばしの別れに涙する事も無く、自らの従者・騎士を引き連れて自分の席に向かって歩を進めた。



 入学式が終わった後、本国の方の領地にて一泊し、翌日の午前中を買い出しに費やした後、愛しのアンガー家領に帰宅したのだった。




 ***




 さて、なんやかんやで従者・騎士と俺の今後について話すのは初めてである。

 話し合いに使う部屋は勿論鑑定済みだ。



「ピーター、ロッカス。なんだかんだで俺の今後について話す機会が無かったな。

 今日はそれについて話したい。」



「と言ってもディーン様。ディーン様はアンガー家の次男であられますので何ら悩むことは無いと思うのですが... 」


 どうやらピーターはロッカスと同じ意見のようだ。



「そうだな。一般的にはエリック兄さんのサポートをするのが当たり前かもしれん。

 だが、俺は成人したらよほどのことが無い限り、アンガー家の継承権を放棄しようと思う。」



「「へ? 」」



「そしてハンターになろうと思う。そのときには二人にはできたら俺に着いてきて欲しいと思っている。」



「な、何をおっしゃっているのですか?! 」



「そうだぜ。それにハンターになるのと貴族の次男じゃ大してやること変らない上に、世間の評価は貴族の次男の方が圧倒的に上だぞ?! 」



「二人の言うことは最もなんだが、正直俺がいたら余計な争いを生みそうでな。」



「そんなこと! 」



「無いとは言い切れない。俺の魔法属性は月属性だぞ? 中にはそれだけでやっかみを言ってくる奴もいる。そんなことでエリック兄さんに迷惑をかけたくないんだ。」


 そう聞いてロッカスとピーターは少し悲しそうな顔をした。



「そんな顔するな。俺はハンターになってもやっていく自信があるし、その根拠だってある。

 だけど、それが原因でエリック兄さんが頭首になれないなんてことは避けたいんだ。」



「いくらなんでもそこまで... 」



「そこまでしてもまだ迷惑がかかるかもしれないほど、俺は異質だよ。

 まあ、見てない物は信じられないと思うから... そうだな、二年後。俺が学園に入学すれば家の目が届かない。だから学園に入学したら見せてあげるよ、俺がここまで言うのか。」


 俺は自信たっぷりに言った。



「「...。 」」


 ロッカスとピーターは顔を見合わせている。

 ちょっと時期が早かったかな?



「ディーン様。私たちはディーン様の聡明さは充分に理解しています。ディーン様がそこまで言うのならそれ相応の理由が有るのでしょう。なので、二年後。学園に入ったらその理由の一端でもいいので私たちに見せてください。ここに居るピーターはこんな顔をしてますが、「おい! 」 それなりに貴族内のゴタゴタに詳しいのでそこで判断します。

 ですので、このことは、」



「分かってるよ。ロッカスとピーター以外にはこんなこと話さないって。

 あ、あとピーター。明日から武術の訓練をしたいから俺とロッカスの指導を頼む。」



「おう。任せとけ」



「またそんな言葉遣いをして... 」



「良いんだよ、ロッカス。君ももう少し砕けた話し方をしてくれていいんだよ? 」



「しかし... 」



「おやぁ~、ロッカスくん。ディーン様の命令が聞けないと? 」



 やはりこの二人を従者・騎士にしてよかったと思える一日だった。


 ちなみに、この後メイに見つかってこってり怒られたのは秘密だ。

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