俺の騎士になってください。
今回は別視点です。
「次に騎士を決めたい。
今から名前を呼ぶ7人は前に出てくれ。
ヴィンチ、マヌス、... 」
坊ちゃんが呼んだ名前の中に俺の名前があった。
ああ、自己紹介がまだだったな。俺はピーター。元々は王立騎士だったが色々あって今はアンガー家の私有騎士になった。今日はなんでもアンガー家の次男、ディーン様が従者と騎士を決めるらしい。
残ったのは俺含めて7人。槍が一番上手いやつ、格闘が一番上手いやつ、結構バラバラな奴らが残ったもんだ。俺? 俺はいろんなモノが使えるぜ。剣でも槍でもモップでもそれなりに使える。が、言い換えれば器用貧乏ってこった。
だからこそ解せない。なぜ俺が残った? さっきのやりとりを見てれば嫌でも分かる。この坊ちゃんは使える・使えないをはっきりさせるタイプだ。
それと未来が見えてるんじゃないかと錯覚するほどの、異常ともとれる眼力を持っている。そんな奴がどうして俺みたいな「使えないやつ」を残した?
俺は色々な武器に適性があった。それこそ槍や剣といったメジャーなものから、カトラリー果てはおぼんなんてものにまで。けどそのどれにおいても一番にはなれなかった。
「悪くて中の上、よくて上の下」 これが俺だ。
どんなに努力しても凡人の域をでないし、少し前まで自分と同じ位置にいたのにいつの間にか俺の手が届かない所に行ってやがる。
どうせ今回だって残されるだけ残されてけっky
「ピーター。」
「は。どうかしましたでしょうか、ディーン様。」
おっと危ない。自己嫌悪に夢中だった。
「ピーター。お前には数多の武術に精通しているようだな。
その中でも一番得意なものを申してみよ。」
でた。俺が一番嫌いな質問だ。
しかし、嘘をつくわけにはいかない。こいつの鑑定スキルはセバスさん並だ。嘘をついたらすぐにばれる。それにこいつの性格上、なぜ嘘をついた? とか聞いてきそうだ。なら素直に答えた方がずっとマシだ。
「はい。俺が一番得意なものは、刀です。」
刀。それはどんな武器よりも切れ味が高いが、如何せん扱いが難しく、他の武器と違ってスキルがあるからと言って何かが変る訳でもない。それに、武器自体の摩耗が激しい、という凄く微妙な武器だ。
「ほう、やはりな。
では、」
どうせ俺じゃ無いんだろ? どうせさっきの従者候補たちみたくブラフ扱いだよ。
「では、私の専属騎士はピーターとする。」
「「「「「「「は? 」」」」」」」
俺含め騎士候補として残った7人は声を揃えた。いや、旦那様や奥様たちさえ、顔にこそ出さないが驚きが隠せていない。
それに声を上げた他の6人は悪くない。俺がそっちの立場でも同じ反応をするだろう。
てかこいつ何考えてるんだ? 専属騎士だぞ? それも一番最初の専属騎士になんてビミョイの選んでるんだよ!!
「皆の気持ちも分かる。
たしかに、ピーターはどれも中途半端だ。
だが裏を返せば『場所や得物を選ばない』という事だろう? それに私自信、どの武器を使おうかまだ決め切れていないのだ。」
だからって...
「だから 」
だからって... ...
「だから、私の騎士になってくれないか? ピーター。」
だからって... こんなのありかよ...... ......