親の威を借る子ども
今回は一話だけです。
実生活がいそがしくて...
「おやおや。そこにいるのはディーン君じゃあないか。」
こいつはカマセ伯爵のとこの嫡男、マーケ。
ことあるごとに俺につっかかってくるウザい奴だ。
こいつのご両親はかなりの人格者なのに、息子のこいつがこんなのになったのは不思議で仕方ない。
ちなみにこの学園では貴族の子息・子女同士なら親の爵位関係は持ち込んではいけないという校則があるので、爵位のことでとやかく言われることはない。
というのも、その爵位を実際に持っているのは自分たちでは無いため、伯爵だの男爵だのは誇っても無意味なのだ。唯一の例外は王族だけである。とはいえ、実際に王家の人間が学園に通い始めるのは高等部からなのだが。
マーケが言っていることを要約すると、貴族の子息としてふさわしくないとか、満点といってもどうせ不正したんだろとか、まあズタボロに言ってくれた。
いつもなら無視しするのだが、如何せん今は虫の居所が悪い。
だから、今回は俺にしては珍しく挑発に乗ってみることにした。
「おやおや、今日は小鳥がよく鳴いているかと思えば、マーケ君じゃないか。」
自分のことをうるさいだけの存在だと言外に言われてむかついたのか、顔を真っ赤に染め上げ、ぷるぷると小刻みに震え始めた。
「どうしたんだい? レッドスライムみたいに真っ赤な顔をして震えて... まさか体調でも悪いんじゃないか?
おい! ロッカス。マーケ君を保健室に運んで差し上げなさい。」
俺に命令されたロッカスは顔にこそ出ていないが、小刻みに震えていた。
ピーターは吹き出すのをこらえているのか、時々「キヒッ」とか「フヒッ」とか漏れている。
余談だが、レッドスライムとは、赤いスライムのことだ。色が違うだけで強さには違いが無い。
周りからもクスクスと笑われ、いたたまれなくなったのか 「覚えてろ! 」と吐き捨てて去って行った。
それよりも、なぜ俺の魔法学の成績が、たかだか伯爵の嫡男程度に知られているのかが気になった。
それはロッカスとピーターも気になったようで、マーケたちが去っていった途端、真面目な顔に戻った。
俺は、
「ピーター。」とだけ声を発すると「御意に」と短い返事が返ってきた。
***
ここでピーターの略歴を説明しよう。
ピーター・オズムンド。平民の出だが、彼の才は騎士学校で見いだされる。
「どんな武器でも扱うことができる」という才は、普通の騎士には必要の無いものだ。
しかし、公にはその存在が明らかにされていない騎士団がある。
暁の騎士団。
あくまで噂でしかないその存在。
ある者は、隣国の王家の首を一つ残らず、城にいる誰もが気づかぬうちに撥ねた諜報部隊だと。
またある者は、狼藉を働いた貴族を内々に処理する王家直属の暗殺部隊だと。
実をいうとその両方を兼ね備えた存在が暁の騎士団である。
あるときは他国のトップを暗殺し、またあるときは不正をした自国の貴族を処理する。
だからこそ我が国では、「明日の朝日を望む者は、夕暮れに悔い改める」ということわざがある。
これは、悪人は暁の騎士団に狙われて初めて自らの悪事を悔いる、ことを意味する。また、別の解釈は、気づいた時にはもう手遅れ、である。
そんなやばい騎士団からその才を買われたピーターは3年ほどその任に着いた後、私有騎士として身を立てることとなった。その3年の間に何があったかは聞いていないが、ピーターが話さないうちは無理に聞き出そうとはしないつもりである。
***
そんな訳でこういった調査はピーターに一任している。
ロッカスは不満げだが。
ピーターの捜査ははやかった。
結果からいうとマーケと教頭が繋がっていた事が分かった。
これは子供だけでなんとかできる話ではないので、父さんに手紙をしたためるた。
さてさてどうなることやら。
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