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お披露目

今日は二話更新です

 



 今日は学園に入学してから初めての休日だ。



 学園の授業内容は基礎の基礎で、正直つまらないと感じた。だからといってサボったりするつもりは毛頭ない。


 クラス分けは平民だろうが貴族だろうが関係なく一緒のクラスになっている。なので俺の学園での楽しみは平民の暮らしを聞くことだ。前世は特に金持ちでは無かったが、やはりこっちの普通と前世の普通にずれがあることがあるかもしれない。それにいずれはアンガー家を出て平民になる身としては知っておいて損の無い話だ。


 また、藤井さんことリサ・ファルツとは学園では何もなかったが、毎晩お互いの従者・騎士が寝静まってから秘密の文通をした。


 高校を卒業した後のこと、人間関係のこと、これまでのこっちの世界での体験・経験などなど内容は多岐に渡った。



 魔法属性鑑定後の実家での扱いは婚約破棄系や乙女ゲーの悪役令嬢並の扱いだったらしい。






 さて、俺が今何をしようとしているかと言うと、ロッカスとピーターを伴って人気の無い森に来ている。一応ハンターギルドで一番簡単な 『薪の採集』 という依頼をピーター名義で受注し、その依頼を達成するという名目で来ている。


 この依頼は年中出ていて、ハンターが出先で使う用のちょっとした暖をとる用としてギルドで販売する薪であるため、薪ストーブとかで使う薪とは違って木の枝みたいな薪を採集しなければならない。


 まあ今回俺たちの目的は依頼ではなく、俺の魔法をロッカスとピーターだけに見せることだからほんの少しで十分なのだが。






「よし、着いたぜ。」



「ありがとう、ピーター。」



「しかし、何もこんな隠れた所に来なくても... 」



「ピーター。ディーン様にはディーン様の事情があるのです。つべこべ言わないでください。」


 やっぱりロッカスとピーターがケンカになりそうなので早めに切り出す。



「おい、二人とも本来の目的を忘れてないか? 」


 俺が声をかけると二人は大人しくなる。



「とりあえず、ルナ・ボールから行くか。

『ルナ・ボール!! 』 」



「「!!! 」」


 ロッカスとピーターが驚いた顔をする。

 それもそうか。子供の俺が詠唱破棄なんかしてたら誰だって驚くか。


 この世界の呪文の役割は『イメージの補完』だ。



 例えば、火魔法の『ファイアー・ボール』は炎の球を発射する魔法だが、この世界の人はなぜ火は燃えるか知らない。けど、呪文を唱えることで火が燃える様をイメージし、スムーズに魔法を発動できるのだ。


 だが、俺はこの世界よりも化学が発展した世界の知識と生粋のオタク文化の知識がある。それ故呪文なんぞなくてもイメージ(妄想とも言う)など赤子の手をひねるよりも簡単だった。



 俺の手から発射された魔法は目の前の木にぶつかると、幹の半分ほどにひびを入れこちらに反射してきた。それを魔力をこめた右手でそっと向きを変え、左奥の木に飛ばした。若干威力が減衰したルナ・ボールはまるでピンボールのように木々の間を跳ね回っている。



「ディーン様!! お怪我はありませんか!? 」


 ロッカスが割れに返って声をかける。


 一般的には自分の魔法であれ、当たればダメージを受けるのだが、月属性の性質の一つ、『反射』のおかげで俺の魔力をまとっていればノーダメージだ。



「心配するな、ロッカス。この通り無傷だ。」


 俺はそう言って右手をひらひらさせた。



「はぁ?! おかしいだろ! 魔法をはじいたんだぞ?! 無傷で済むもんか!! 」


 ピーターが俺の手を引っ張ると、食い入るほど見つめた。



「ありえねぇ... 」



「月魔法は『弾む』んじゃない。鏡みたいに『反射』してるんだ。 

 俺の魔力が込められていれば無傷だ。 ほら、あの木を見ろ。一本だけ無傷だろ? 」


 俺が指したのはここに来たとき触れた木だ。

 触れたときに魔力を流しておいた。



「この木だけ確かに無傷です。」


ロッカスはまじまじと無傷の木を見た。



「それじゃあ次の魔法いくぞ。

『ルナ・アポート! 』」


 ルナ・ボールによって砕けた木片に向けて手をかざす。

 するとすぐに、手の先にあった木片は勢いよく俺の手向かってきた。


 尖った所を避けるようにキャッチすると、またもやポカーンとした二人の顔があった。



「アポートって言やぁ、もっとノロノロしてるんだが... 坊ちゃんのそれは別物だぞ?! 」



「潮の満ち引きって聞いたことある? あれって月が海を引っ張ってるからなんだ。

 他にも月の性質を利用すればこんなこともできるよ? 」


 そう言って俺は地面に手をつけると、小さく魔法を呟いた。


 すると地球で言う震度三くらいの地震が起きた。

 ピーターは少しバランスを崩した位だったが、ロッカスは尻もちをついてしまった。


 俺が地面から手を離した後もしばらく揺れは続いた。



「お、おい坊ちゃん。これは一体? 」



「今のは『ルナ・シェイク』といって地面を揺らす魔法さ。」




 月空洞説。

 月で起こった地震が長きにわたって継続していたことから「月は空洞なのではないか」 と学者たちは考えた。そして2017年のJAXAの調査により、本当に月は空洞であることが発見された。中には寿命を迎えた人工衛星を月にぶつけて、データをとった国があるとかないとか。




「『ルナ』ということはこの魔法も月に関連しているのですか? 」


 まだ揺れている感覚が抜けていないのか、少しふらふらしながらロッカスが尋ねてきた。



「そうだ。詳しい説明は省くがな。」



 ここで、なぜ俺がここまで月に詳しいか説明しよう。

 大学受験英語の長文に多いテーマとして、環境論や宇宙・化学論がある。


 「文系の学部でも?」と思うかもしれないが、文理問わずこの手のテーマは10校受ければ2,3個は目にする。



 ここまで多いと予備校や塾、問題集や過去問でも当然扱われ、好きでも無いのに変にマニアックな理系のことに詳しくなってしまうのは受験生あるあるだと思う。


 また、予備校や塾なんかではこの手の問題の正解率を上げるために、わざわざ理科的なことを説明するところも多い。

 俺の通っていた予備校も例外では無く、なんなら結構詳しめに説明された。だから、話のネタになる程度の知識はあるのだ。






 このあともいくつかの魔法を披露したあと、急いでクエスト用の薪を集めたのだった。



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