お友達
入学式が無事終わり、家族と別れの挨拶を済ませた後、早速自分がこれから生活する寮へと向かった。
寮は貴族用のものと市民用のものがあり、貴族用の寮は従者・騎士と一緒に生活しても少し余裕がある程度で、市民用の寮は初等部までは四人部屋で、中等部になると二人部屋になる。
また、貴族用の寮は爵位・学年に関係なく同じ大きさである。
ちなみに言うまでも無く寮は男女別だ。
寮の窓口で自分の部屋を確認した後自分の部屋へと向かった。
広さ的には分譲マンションの4LDKくらいだ。
部屋に入るとすでに自分たちの荷物は運び込まれていた。なので手分けして荷物の開封と仕分けを行った。
隣近所への挨拶はもう少しあとからにしよう。みんな忙しいと思うし。
一時間ほどかけて荷物の開封・仕分けをした後は各自の部屋だ。
部屋にはベットと机・椅子と収納という最低限のものしかないので着替えや勉強道具は自分で用意しなければならない。
勉強道具といっても教科書は学園側が用意しており、すでに部屋ごとに教科書が束になっておいてあるので用意したのは筆記用具くらいだし、さらに言えば着替えも制服があるのでそこまで多くないのだが。
地球と違って家電等が無いため着替え以外はそんなに大きな荷物はない。
なので着替えを種類ごとに分けて収納した後、枕を家から持ってきた物に替えて、持ってきた本と勉強道具を机の上に置いたらやることが無くなってしまった。
仕方なく教科書がキチンと全部あるか確認リストを見ながら確かめる。
確かめた後は明日の授業の準備をして鞄に詰めた後、ロッカスの手伝いに行った。
ロッカスの荷物は着替え、練習用の武器、勉強道具、本程度ですぐに終わってしまったとのことなので、ピーターの手伝いをしに行った。
以前のロッカスなら「上に立つ者として~~ 」 とか言われそうだがこの二年間ですっかり俺やピーターに毒? されたのか特に何も言わなくなった。諦めたとも言えるかもしれないが、気付かないふりをしていれば関係ないのだ!
ピーター部屋はひどいの一言に尽きた。
どうやったらこの短時間でこんなに部屋が散らかるのか不思議なレベルだ。
これにはロッカスもこめかみをひくつかせている。
「ピーター?一体どうやったらここまで部屋を散らかせるのですか!? 」
「んなこと言ったってどれに何を入れたかワカンネーんだもん。」
「あれほど出発前に整理をしたのかと聞いたでしょう!! 」
「まあまあ、ロッカス。今ピーターを責めたって部屋は片づかないしご近所さんに迷惑だ。」
そう言うとロッカスはしぶしぶといった表情で引き下がった。
「ピーターも成人してるんだから自分の荷物ぐらいしっかり整理しないと困るのは自分だけじゃ無くて他の人にも迷惑がかかることもあるんだぞ。」
こうしてピーターの部屋を片付けたのだが、三人でやっての二時間近くかかった。
ちなみに四分の一ぐらいはロッカスとピーターの喧嘩である。
ピーターの部屋をやっとのことで片付けた俺たちはひと休みした後、隣・近所に挨拶をすることにした。
一応手土産が合った方がいいとのことなので、アンガー領に本店がある割と有名な焼き菓子を用意したのだが、大丈夫だろうか。
男から見て焼き菓子は魅力的にみえるだろううか。
***
まずは俺たちの右隣の部屋から。
ノックを二回して相手からの返事を待つ。
「はーい」 と従者と思わしき声が聞こえた。
従者に自分たちが隣室の者であることとこれから仲良くしたい旨を話し、主人と直接話しができないか聞いてみたところ、今呼んでくるとのこと。
出てきたのはバー男爵家の次男、バウだ。
彼は部屋がまだ人を呼べる状態ではないので玄関ですまないと言われたが、
こちらのタイミングが悪かっただけなので気にしなくていいのに。
自分の名前とこれから仲良くしたい旨を説明し、手土産を渡すと、バウからも土産を手渡された。
バウからもらった土産を部屋に置き、今度は左隣の部屋に行く。
左隣はマクローン子爵家の長男、ベルツだった。
こちらからも土産をもらったので再び部屋に戻ったら、今度はお向かいさんがこちらを訪ねてきた。
訪ねてきたのはナリーク子爵家の長男、ダキだった。
土産をもらったので部屋に案内しようとしたら、他の貴族にも挨拶しなければならないので、と辞退された。
ダキが去っていった後も向かい隣の二人も従者・騎士を伴って来た。ポンカ伯爵家の次男、フレデリクとシェブ侯爵家の三男、ジロだ。
どうやらここ一体はシェブ家の派閥の者で固まっているらしい、ということをジロから聞いた。
ちなみに二人ともから改まった言葉はやめてくれと言われたので、呼び捨てで呼んだらとても満足そうにしていた。なんでもずっと丁寧な言葉で話し続けるのは苦しいらしい。
両名からも土産をもらった。
なんでもジロの土産は最近王都ではやっている飲み物で、フレデリクの土産はポンカ領の特産品らしい。
こちらも土産を渡すとたいそう喜ばれた。ここの焼き菓子は評判が良いらしく、自分の姉や妹へのいい手土産になると言われた。
多分言葉通りの意味では無く、手札の一つという意味だろう。
そんなこんなで俺はご近所さんへの挨拶を済ませたが、やはり違和感が拭えない一日となった。
なお、渡した手土産は大人気だった。
さすがは甘い物に目が無いメイの一押しである。
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次回は10月5日の予定です。