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第8話「基礎が出来ないなんて事は無い」

「では初めての授業を行う!」


先生は楽しそうにそう宣言した。

何をするのだろう?私はわくわくしてきた。


「まずは属性についてだな。基本魔力属性は火、水、風、土、光、闇の6つ。変異属性として、炎、氷、疾風、大地、雷、無の6つ。合計12の属性がある」


おっとお勉強だ。眠たい。


「修練度、というのは皆知っているか?魔法や技をどのくらい練習したか、習得できたか。それの指標なんだが、これは才能の有無も確認出来る。才能、適正とも言うな。が、高い属性の魔法又は技は、使いこなせるようになるのに必要な修練度が少ない」


ちょっとわかんないなって思ってたらミッシェルがこっそり教えてくれた。才能がある属性を使うのには練習が少なくていいってことらしい。


「他にも、才能がある属性の魔法を放つと他の属性よりも威力が高かったりする。だからこの学園では、自分の才能を伸ばすことを推奨しているんだ」


なるほど。得意な事を伸ばして行こうってことね。じゃあ私はお勉強はあまりしなくていいかも?


「初日から勉強はつまらないよな?だが、お前らはまだ魔力の動かし方も知らない新入生だ。だから基礎を行う必要がある。まぁ今日は実技だ。これを使う」


先生は水晶玉のようなものを取り出してクラス全員に配った。


「これは魔水晶だ。今は無色透明だが、魔力を込めるとその魔力の色に染まる。俺だったらこうだ」


先生が持っていた水晶玉があっという間に赤に染まる。

クラスの女子はうっとりとそれを眺めている。

分かるよ。宝石みたいで綺麗だもの。


「触れただけでは魔力は込められない。自分の意思で魔力を動かして込める必要がある。これが出来ないと魔法も技も使えないからな。では始め!」


先生の号令に皆ハッとして魔水晶を手に取る。私も持ってみたけど確かに色は全く変わらない。

とりあえず出ろ~出ろ~と念を込めてみる。変わらない。何故。


「魔力を動かすかぁ......」


狩りの時のお父様やお兄様を思い出す。2人が技を使っている所を思い出せば手がかりが得られるかと思ったから。

剣に炎を纏っているお父様かっこいいな。私も早くあんな風に戦いたい。

剣を思い描きながら魔水晶を握る。想像の中の剣に炎を纏わせる。手からなにか抜けていく感じがして、剣が炎を纏い終わる。後は振り下ろすだけだと思って私は席から立ち上がり──────。


「アイリーン止まれ!止まるんだ!」


先生の声で我に返った。私は虚空に向かって手を振りあげていた。周りの生徒は変なものを見る目でこちらを見ている。


「あ......すみません。想像の世界に入り込んでいたみたいです......」


流石の私も恥ずかしくなって席に座る。奇行に走る趣味はなかったはずなんだけどな。クラッシュベリー王子が笑っている。ムカつく。私の方が先に魔水晶を染めてやる。

もう一度挑戦だ、と意気込んで魔水晶を見る。


「あれー!!???」

「今度はなんだアイリーン!」


大声を出した私に先生が近寄ってくる。あれ、入学2日目で問題児みたいな扱いされてない?気のせい?


「先生!染まってます!これ染まってます!!」


私は大慌てで魔水晶を先生に差し出す。それは先生と同じ、赤色で染まっていた。けれど私のは先生と違って黄色が混ざっていた。


「炎属性、それに光属性の魔力か。......さっき何を想像していたのか教えてくれないか」


頭痛を堪えるかのように眉間をおさえている先生に少し申し訳ない気持ちになりながら私は話した。


「お父様とお兄様が剣に炎を纏わせているのを見たことがあるので、それを想像で作っていました。先生に止められた時はその剣を振り下ろそうとしていたところです」


なんで染まったのか分からないんだよなぁ......。そういえば手からなにか抜けていく感じがしたかも?

そうか!なにか、じゃなくて魔力なのか。

なら簡単じゃない?さっきの感覚を思い出しながら掌に魔力を集めて押し出して。そうしていると手の上に火が現れた。


「火が出た!」


私は魔力を扱えたことが嬉しくってたまらなかった。そして周りを見ていなかった。

先生はそんな私を怒鳴りつけた。


「火が出たってどうやって消すつもりだ!」

「どうやってって......あら?どうしましょう」


1度点いてしまった火は、魔力を扱うのを止めても消えないらしい。私の手の上に存在し続けている。


「水属性を持つ先生はどこのクラスだったか......」

「あの......僕、水なら出せます」


今にも頭を抱えそうな先生に控えめに声をかけたのはサクヤだった。


「出せる!?本当か!」


藁にもすがる思いなのだろう。先生はサクヤの手を取って確認している。これ以上アイリーンが何かをやらかす前に止めてくれという思いが言外に伝わってくる。


「は、はい。一応」

「消せるならお願い!なんか熱いような気がしてきたの!」


私は仲良くなるチャンスだとサクヤの方へ駆け寄る。サクヤは困ったような怯えたような様子で水を作り出した。

そして、どうしようかと少し悩んだ後に私の手に向かってその水をぶつけてくる。

ジョワアァって音を立てながら私の作った火の玉は消えた。水も消えた。何故。


「ひとまず解決だな!アイリーンはもう勝手に火の玉を作らないようにな。......そうだな。2人とも放課後に先生に着いてくるように!」


居残りが決定してしまったみたい。やらかしましたわ。


「他の皆はこの2人を参考にするなよ!特殊みたいだからな」


私は王子がサクヤに意味深な視線を送っているのに気がついた。強い感情。好意的ではない。その先はわからない。


先生は皆に魔水晶を染める続きをするように指示した。

私は自分の意識で魔水晶を染める練習をして、結局10個以上染める事が出来たのだった。

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