第4話「スキルを手に入れるらしい」
「記憶の引き継ぎかぁ......」
実感が湧かないのだろう、ぼんやりと愛理は呟いた。
「ところで、あなた......えっと女神様?が管理している世界ってどんな所なんですか?」
咲夜は期待を隠さずに聞いた。少女......女神は咲夜に向き直り、頷いて答え始める。
「私の世界は、あなた方の言うところのファンタジーな剣と魔法の世界ですね。魔族、人間、獣人やエルフ、そして魔物等がいる世界です。あなた方がいた世界と比べると文明レベルはいくらか落ちてしまいますが」
それを聞いてガッツポーズをした咲夜の目は輝いていた。
「魔法!魔法は私でも使えますか!?あとテイムって可能な世界ですか?」
「両方可能ですよ。戦闘スキルや魔法スキルの才能は魂によるため、変えることは出来ませんが」
「えー私、戦いたくなーい後ろにいたーい。魔法使いがいいなぁ」
喜びを隠さずに嬉しそうな咲夜と、怖いもんねー?と女神を撫でる愛理。咲夜は、ふと気づいたように女神に問いかける。
「魂によるってことは、私の次の生の可能性は、前世の私に委ねられてるってことですか?」
「と言うよりは向いている傾向は変わらないのです。ただ、その生で努力したら次の生は更に可能性が広がるって感じですかね。」
「強くてニューゲームって感じになるのかな」
なるほどなるほどと、ひとり納得した様子の咲夜。女神も伝わって良かったです。と、にこやかな表情だ。
「他に質問はありませんか?」
なんでも聞いてくださいねと笑う女神に、咲夜は交渉をしてみることにした。
「スキルって......貰えませんか?」
「咲夜......どこまでも強欲ね......」
「貰えるもんなら貰って起きたいじゃん?」
それを聞いた少女は考える素振りを見せた後、告げた。
「そうですね、スキルを差し上げることは出来ます。あなた方で欲しいものを選んでください。そう全て希望のまま、とはいかないかもしれませんが、できる限り叶えましょう。ですが、おふたりともが持つスキルだけにさせてください」
「くれるんですか!?ありがとう!ラブ!」
歓喜の声を上げる咲夜の目の前に半透明なウインドウのようなものが現れる。
「それはスキルの一覧表です。扱い方はタブレット端末のようなものです。縦に線が入っていますね?欲しいと思ったスキルを左にドラッグしてください。」
「一覧表......」
多いなと呟く咲夜の後ろから覗き込んだ愛理はゲンナリとした声を出した。
「私パース。どうせよく分かんないし、咲夜に任せるわ」
「おっけ。任せといて」
意気揚々とウインドウを操作する咲夜を横目に愛理は再び女神を抱きしめる。
「女神ちゃん本当に可愛いねぇ。お姉さんがハグしてあげよう。あ~癒されるぅ」
「あの、私は愛玩動物ではないんですよ?」
「ん~?何か言った?」
聞こえていないはずもなく、わざとなのだろう。離す気配はない。
「これでいいかな」
満足そうに呟いた咲夜。顔を上げ、女神を探すと、未だ愛理に抱きしめられていた。
「まだやってたの?」
「だってぇ、可愛いから......」
2人が話していると女神が話しかけてくる。
「スキルの選定は終わったんですね?」
「終わりました。全部通ることを願う」
女神は咲夜が選んだスキル一覧に目を通す。そして頷いた。
「これなら全て授けられます。ただ、物によっては制約が付きますが......」
「制約とは?」
「魂の適性によって解放に一定レベルが必要になります」
前衛職に適性が高いなら魔力回復系のスキルは取得しづらいですからね、と続ける。
「で、どんなスキル選んだの?」
「あぁ、基本的なチートスキルだよ」
興味津々といった様子の愛理に咲夜は選んだスキルを教える。
アイテムボックス
鑑定
言語理解
身体強化
体力高速回復
魔力高速回復
契約魔法
「ほぇー、なんか凄そう」
「これがあるのは強いからねマジで」
とりあえず褒めとこうみたいなノリの愛理と自慢気に話す咲夜。
「まぁ、使ってみたら分かるよ」
「習うより慣れろって?」
それでも褒められて悪い気はしないらしい。説明は雑だが。
「では、転生しましょうか!」
楽しげに声を上げた女神にふたりは頷いた。
「過酷な人生じゃないといいなぁ」
「それは言えてる」
光に包まれながらも話し続けるふたりを微笑ましげに見ながら女神は言った。
「では、良い転生生活を。また会いましょう」
“また”?そんな疑問を残したまま、ふたりはその空間から姿を消した。
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