婚約破棄と王子
王都で開かれた王族も参加するパーティーにフランチェスカは参加していた。
「フランチェスカ・フォン・ユロリング辺境伯令嬢、あなたとの婚約を破棄させてもらう!」
唐突に響き渡った声にホールの中にいた人々が振り返り目にした先にいたのは、茶色の髪をした整った顔立ちできっちりとした貴族服を着た青年だった。
さらに彼は続けて言った。
「あなたがこのような卑劣な行いをする人物だとは思いもしなかった。」
言われた相手、つまり、フランチェスカ・フォン・カロリング辺境伯令嬢は、腰まで届くまるで月の光を宿したかのような銀髪で、貴族の女性としては少し日焼けをしているが、それでもなお陶磁器のような白色を保っている肌、そして、まるでサファイアのような強い意志を持った輝きを宿す蒼い目、10人いれば10人とも振り返るであろう美少女だった。
彼女はしばらく止まっていたが、はっと我に返り言った。
「一体何のことでしょう?」
「とぼけるな!貴様が嫉妬をして、フィオネリア・フォン・ブロア男爵令嬢に行った嫌がらせのことだ。」
フランチェスカの返事は冷静で、彼らを見るその目は冷たいかった。
「唐突にそのようなことを言われても困ります。具体的にどのようなことをしたのかおきかせねがえますか?ジャクソン・フォン・バーゼル男爵」
ジャクソン・フォン・バーゼル男爵はバーゼル公爵の次男で特に目立つこともない男だったが、国の規定に従い公爵家の次男ということで、15の時に男爵位をえていた。その時にフランチェスカとの婚約がなされ、現在23歳だつた。
「いつも私にだけ招待状を送らなかったり、パーティーに出られないように馬車の通行の妨害をさせていたでしょう。今更そんな見苦しい言い訳をしないでくださいまし。」
と、ジャクソンの後ろに隠れるように立っていた、ピンク色の髪を長く伸ばし、素晴らしく大きな胸をもち、その胸を強調するかのように大きく胸元が開いたドレスを着て、全身から色気を醸し出した、前に女性が出てきてそういった。
「私はそのようなことは、一切しておりません。」
もはやフランチェスカはゴミを見るかのようで、その蒼い目は深海を写したかのように冷たい目だった。彼らはその目にやや怯んだようだったが、
「今更嘘をつかないでください!」
「もう証拠も掴んでいる。大人しくするんだな。」
と言った。
彼らはフランチェスカの発言をはなから否定した。
剣呑な雰囲気になって来て、人々の注目が集まってきたところで、突然割り込んできた人物がいた。
「フランチェスカ嬢がそのようなことをする訳がないでしょう!」
その人物に注目が集まった。その人を見た周囲の人たちは驚いた表情になった。
「フリードリヒ殿下!」
「何故殿下がこのような場所に?」
フリードリヒと呼ばれた彼は、フリードリヒ・フォン・ヘプスブルクといい、この国の第二王子である。あまりパーティーなど人の集まる場所には出ないが、軍人として優れていて、 次期国王候補として祭り上げられることを嫌いあまり貴族との繋がりを持っていなかった。
「殿下!何故ですか?この女は醜い嫉妬のあまり私のフィオネリアに嫌がらせをしたのですよ。」
「殿下?あの人がですか?」
彼らは王族に対する礼すらせずに話かけた。
「申し訳ありません。 ジャクソン、殿下に対して失礼であろう。」
そう言ったのは殿下と一緒にいたバーゼル公爵だった。彼らは殿下とフランチェスカにきを取られていて気がつかなかったのだ。
「ですが、父上、フランチェスカが行ったことは許されることではありません。」
「つまりそれは私が決めた招待客や、この国で決められた爵位ごとの馬車の順番に納得がいかなかったと?」
バーゼル公爵の言葉にジャクソンは驚愕の表情を浮かべた。
「で、ですかそれ以外にも」
「もうよい。これ以上、恥をさらすな。控え室に連れて行け。」
バーゼル公爵の言葉に従い側にいた護衛が彼らを連れてゆくのを周囲の人々はみていた。
そして、公爵と王子は顔を見つめあって、アイコンタクトをとったようで、公爵はうなだれ、王子の顔に喜びな表情が浮かんだ。
フリードリヒ第二王子は見事な金髪で、物語から出てきたかのような王子のようだった。
「フランチェスカ嬢、此度の我が息子の蛮行を許していただきたい。そして、ジャクソンとの婚約の破棄を行ないたい。」
「ええ、許します。ですが、何故このタイミングでジャクソン卿との婚約破棄を?」
フランチェスカはそう問い返した。
「フランチェスカ嬢、この私、フリードリヒ・フォン・ヘロリングと婚約をしていただけないでしょうか?」
公爵の返信を遮り、フリードリヒがいきなり跪き、驚くフランチェスカの手を取り騎士のように言った。
「フリードリヒ殿下、何故わたしなのでしょうか?申し訳ありませんが、以前殿下とあったことがないと思われるのですが」
「私がフランチェスカ嬢とあったのは、東方戦線です。そこで私はあなたに会い運命を感じたのです。」
何を隠そうフランチェスカは、普通の令嬢ではなく、辺境伯令嬢として東方戦線で指揮をとっていたことがあり、そのことを思い出し何故か嫌な予感がした。
そんなフランチェスカの予感が当たったのか、王子が続けた言葉は、
「東方戦線にて、私は王子としてではなく、王国騎士として、参加していました。」
「つまりは私の指揮下にいたということですか?」
フランチェスカはこの予感があっていませんようにと思いながら、王子に聞いた。
「そうです。フランチェスカ嬢の指揮のもと、部隊を率いていました。」
その言葉を聞いたフランチェスカは真っ青になり頭を下げて謝罪した。
その謝罪を受けた王子は驚いたようで、
「フランチェスカ閣下、頭をあげてください。」
この言葉を聞いたフランチェスカは恐る恐る顔を上げながら、あの頃をおもいだしていた。彼女が顔を上げた後、王子は言った。
「私はあの時、あなたに惚れたのです。
東方戦線にて、さっきのようなゴミを見るかのごとき冷たく冷徹な目、その小さく可憐な口から飛び出る、まるで月の女神のような声からは信じられないような罵声、そして人を人とも思わないような命令を下して、最良の結果を導き出したあなたの脳、そして、戦場で敵を蹴散らす圧倒的な強さ、極め付けは、その妖精のように小さな体から繰り出される部下に対する蹴り、まるで物語に出てくる魔王のようなあなたに惚れたのです。」
え……!
そう言った突然の王子の告白に、当事者のみならず周囲の人々も硬直した。
硬直した人々を無視して王子の告白は続いた。
「戦場でのフランチェスカ閣下は私が一介の騎士として参加していた私にかけた素晴らしい罵声、今でもあのことは鮮明に覚えています。どうか私と婚約をして、また以前のように罵っていただけませんか?」
その言葉に全員の気持ちが一致した。
――この 変態は何を言ってるんだ!と――
「な、何をいっていらっしゃるんですか?」
フランチェスカは思わず口走ってしまった。王子は気にした様子はなく迫ってきた。王子に迫られフランチェスカは一歩下がろうとしたが、王子が流れるような動作で腰に手を回したので下がれず、体の近さに顔が赤くなるのを感じた。助けを求め、周囲を見渡し、彼の父親、つまり国王を見つめた。目線があった後、
「フランチェスカ嬢が責任を取る他あるまい」
国王はそう投げやりに言った。それを許可と取ったのか王子はますます迫ってきた。顔が間近に迫り、抱き合うような体勢になり、お互いの呼吸が感じ取れる程の距離で、その無駄に整った顔と目線を合わせてしまい、フランチェスカを顔は真っ赤に染まってしまった。王子はチャンスと見たのか鼻が触れ合いそうになるくらいに迫り、
「フランチェスカ嬢、どうか婚約していただけませんか」
この後、二人は結婚して幸せになったそうです。
王子は武術を鍛えるために、きびしい訓練をしていました。。フランチェスカに罵られたことで違う方向に目覚めてしまいました。ただ罵られてたいだけで、普通にフランチェスカを愛しています。登場人物は20歳ほどです。あと、フランチェスカはロリ体型です。