アクリル絵の具で描いてみる
今回は今までのことを応用して実際に一枚の絵を描いていきたいと思います。
モチーフはともかくとして、今回はアクリル画ということで、アクリルならではの扱い方をしていきたいと思います。
今回は余っていた122×127mmのベニヤ片に描きます。本来は割れが起こらないように綿布を膠で貼って、その上に描くのですが、今回は少しばかり割れを覚悟して直接絵の具を乗せていきます。とは言え一度乗せた上に水研ぎして、乾かしてからまた載せているので多少は強度があると思いますが……。
まずは下地。
一度水研ぎした上にチタニウムホワイト+イエローオーカー(オキサイド)+ローシェンナにジェルメディウムを混ぜてもりもりっと乗せます。分厚く適当に。
こんな感じで仕上がったら1週間放置。
#240の程度の耐水ペーパーで水研ぎします。
するとこのように綺麗に平になりますので、 丸一日乾かしてからこれを下地として使っていきます。
下地の色は特に決まっているわけではありませんが、このくらいの色が使いやすいと思います。
次にマースブラックを使い適当に描いたあと、少しだけ放置して上から水をぶっかけます。
すると乾いていない部分が浮かび上がってくるので、それをランダム要素として扱います。途中でいじったりなんなりとして構いません。ほかの色を追加するのも有りですが、最初はマースブラックを推奨します。
他の色も使って放置したり、邪魔な部分を飛ばしたり色々やってたらこんな感じになりました。
これにヤスリをかけたり、更に上から追加したりしても良いのですが、今回はこれで納得がいかなかったので偶然の要素をもう少し追加したいと思います。と言うより、この状態から描こうと思ったら無理だったので、方法を変更しました。ここまでの状態で良い感じに行っていれば良かったのですが、ちょうど以前買って使っていなかった金網があるので、それを使ってスパッタリングという技術を使います。
絵の具を荒いスプレーの様に画面に落とすのですが、スプレーのように噴射するわけではなく、金網に溶いた絵の具を歯ブラシで擦りつけて落とすだけなので、かなりのランダム性が生まれます。
ビリジアン → コバルトブルー → カドミウムレッド → カドミウムイエロー
という順番で位置をある程度考えつつ、絵の具をかけていくとこのようになりました。
こうなった段階で、改めて考えます。
何を描こう。
いや、描くものは決まっているのですが、どうにもしっくりきません。
しかし、偶然作られた画面には必ず何かしらのヒントがあるので、色々と回転させながら眺めます。
その結果、描こうと思っていたものを少しだけ変えて、板の向きは左に90°回転させることにしました。
再びマースブラックで描いて少し待って、水をぶっかけて弄って、水が飛ぶのを待ちます。
するとこんな感じになりました。
誰でも描けるしょぼさの犬の横顔シルエットですね。
さて、ここからが技術の面です。偶然にはここまでで散々頼ってきたので、描写に入ります。
完全に私の描き方になるので、いきなり色に入るというのも面白いかもしれません。
まずはチタニウムホワイトだけを使い0号の筆で、ハッチング的に描いていきます。
黒い部分は一先ずヒントだと考えて、部分の関係性をしっかり見て行きます。
一筆置いた時点で全ての位置関係が決まる。以前形をとる時に書いたことですが、それを実践します。
余りに無駄な筆致は許されないので、最初はかなり薄く溶いて描くのがいいかもしれません。
間違えたら軽く水に濡らしたティッシュとかで拭けばとれると思います。
今回私のイメージでは、口元をいかに可愛く描くかに全てがかかっているのではということになっているので、そこから描いていきました。
どうでしょうか。30分弱弄ってみただけですが、誰でも描ける犬のシルエットから、少しだけできる感じになって来たように見えると思います。白のみのハッチングなので、重ねるほど白くなります。時には水を少なくして描いていますが、白のみで描く場合は層が重なれば明るく見えるので、私は一先ず白だけで描くことにしています。
これが別の色だとそういうわけにはいきません。透けている絵の具は特にですが、重ねれば重ねるほど色が濁っていくので、一旦無彩色で止める、と言うのが私の方法になります。
さて、残った分を完成させていきます。ローシェンナ、バーントシェンナ、ローアンバー、バーントアンバーにチタニウムホワイトとマースブラックで描写を続けていきます。
まずは柔らかい筆で、水ではあまり溶かずに後頭部部分にバーントアンバーで白部分に透けるように乗せていきます。その後に少しずつ他の色も使って描写。
厚みは明るい部分程水を含ませず厚く、暗い部分は溶いて薄くを意識して、明るい部分は0号筆で描いていきます。
最後に瞳の光を入れるときには、マースブラックで瞳を少し濡らしてから白で点を打ちます。
そうでなければ瞳の光が浮いてしまう可能性が高いので、このような処理をします。
今回はサンプルなのでこの辺りで完成。
いかがでしょうか。
アクリル絵の具は他の絵の具に比べて自由度が高いので遊ぶには持ってこいの絵の具です。
水をあまり使わず全部べったりとのせても面白いですし、水彩絵具の様に使うこともできます。
今回使った絵具は11色。やはり愛犬は世界一可愛いです。
ちなみにかかった期間は9日間、描いている時間だけなら2時間も行っていない位です。
描き方の関係上アクリルであっても乾燥時間がかなり長いので、大半は乾燥時間でした。
追加で手を加えました。