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前回の絵を詳しく解説

 前回描いた犬のアクリル画ですが、描く際のポイントがかなり多くあるので、そこを掘り返して行こうと思います。

 

挿絵(By みてみん)


 これですが、描くべきポイントと描かないべきポイントというのがあります。

 描くべきポイントは白い部分。描かないべき部分は黒の薄い部分になります。

 描くべき部分を赤、描かないべき部分を青で囲うと、このようになります。


挿絵(By みてみん)


 茶色くなっている部分にはもちろん絵の具が乗っていますが、水色で囲った部分はスパッタリングの後、黒で描いて水で溶かしたそのままの状態を手をつけずに使っています。

 

挿絵(By みてみん)


 この状態で下に透けている緑っぽい色が透けて見えているというわけです。

 こうして並べてみるとなんとなく分かり易いと思いますが、全てを描写すれば繊細な表現が出来るというわけではなありません。スパッタリングの点描の様な跡を、特にヒゲの生えている所なんかに活用すれば無駄な描写をせずに済む上に、繊細な表現を兼ね備えるということでもあります。

 私は個人的には絵を描くのに最も重要なことは描写する手ではなく目だと考えているので、特にこの様な描き方をするのですが、描写部分と下地部分の対比は実際に上手く扱えば手抜きではなく魅力として活きることになります。

 本気で手を抜く、という描き方なわけです。


挿絵(By みてみん)


 思いっきり拡大するとこのようになっています。

 もちろん肉眼では違和感の無いように注意していますが、このような対比を作ることで人工的になりすぎないと言う効果も見込めるわけです。

 髪の毛なんかを描くときも同じで、アクリルや油絵の具で髪の毛を描く時には黒い部分はほとんど描かず、ハイライト部分のみを描くことで自然な流れを描くことができます。何から何まで描いていけばその分人工的な人形の様になっていくリスクは増えていくのです。

 しかも、それは実は器用な人ほど陥り易いです。器用な人は手が上手く動いてしまうので、動くように描いた結果描き過ぎて自然さを失ってしまう。そんなことがとても多くあります。


 逆に、不器用な人は意識して多くの描写をすることが重要になります。

 それは何故かと言えば、思ったとおりに手が動かないので、描写を多くしたところで不自然の集積。

 その不自然が自然に見えるまで描写をし続ければいつか自然な描写に辿り着く、ということになります。


 私自身以前書いたように器用ではないので、時にはその方法を使うときがあります。

 毎日デッサンしては全て消して、それをひたすら繰り返した結果、消しきれずに残った線の重なりが最も自然な線となる。その為に毎日数時間描きまくっては次の日は消してからやり直す。そんなこともしてきました。


 その為、自分がどの程度の器用さと目を持っているのか知るというのが案外と重要なポイントになります。私の場合は美術の大学を出た中で言えば、「どちらかと言えば不器用」というレベルです。

 その為、何度同じものを描いて毎回新鮮なところからスタート出来るので、手馴れることが有りません。

 今回最初の方の偶然が上手くいかずにスパッタリングまで入り込んだ理由はそれが主になります。 

 上手くいかない時は上手くいくまでやって、上手く行ったと思ったときには疑う。そんなスタンスです。


 器用な人ほど時には描くことを止めてみたり、不器用な人ほど丁寧に描写してみる。そんなことが魅力的な絵を描くためには重要なことの一つとなります。


 ――


 さて、今回はそれと同時にもう一つ、リアルな絵の部類に入るこの絵でも、輪郭線を多様したので、それを解説しようと思います。

 よく絵を見てもらえば分かると思いますが、頭頂部の下図の赤線部分はほぼ輪郭線のみで描いています。

 

挿絵(By みてみん)


 以前書いたように、アクリル絵具や油絵の具の基本は光を描くことなので、暗い部分はあまり描きません。

 それは言い換えると、暗部は平面的なシルエットが重要ということになります。

 なので、暗い部分はあえて立体感を出さずに平面的に描き、そこに隣接する輪郭線もそこまで立体感は出しません。

 その代わり明部をしっかりと描くことで、相対的にその平面的な暗部が影で色も奥行も分かりづらいそれを描写することになります。

 とは言えこの輪郭線ですが少し工夫をしており、目の上は辺りは上に行くほど明るく、逆に耳の付け根の部分は内側程明るくしてあります。


挿絵(By みてみん)


 この様な感じに。

 それ以外は特に明るさを変えないただの茶色い輪郭線ですが、この二箇所にグラデーションをつけることで、ほぼ輪郭線であっても立体感が出る様な工夫をしています。

 と言うのも、耳のすぐ後ろの後頭部をバックに沈み込むよう、輪郭線を使わずに暗めに描いているので、この輪郭線で頭の形、後頭部の形までをはっきりとさせています。特に目の前にある輪郭線は後頭部に直接影響してくる線で、これを指で隠すと途端に犬の要素が減ってしまうことがわかると思います。


 絵は意外とこのように相対的な要素の重なりで出来ている部分が多いので、その辺りを意識出来るととても面白くなります。


 さて、今回はこの辺りで。

 デッサン的な話から一気に難しい話になってしまった気もしますが、絵の解説というのも地味に役に立つと思いますので、今回はこのようにさせていただきました。

 

 

 この方法が使えるのは基本的にアクリル絵の具のみです。

油絵の具は以前書いた様に顔料が一粒ずつ塗膜で覆われている為、構造上必ず透けます。黒の上に乗せた絵の具には下の黒が影響してきてしまうので、その透けを考慮した下色が必要になります。

例えば前に出ず、落ち着いた赤を描きたい場合には下色を黒にします。

逆もまた然り、暖色の下色に黒を乗せることによって穴が空いた様な違和感を取り去ることができます。

絵画空間はキャンバスの表面ラインよりも奥に空間が広がる様に見せる為に技術を使います。その為、主張の強い色と主張の弱い色を同じ位置にある様に見せる為の手段の一つとして、下色の工夫があります。

アクリル絵の具でも下色が透けるように絵の具を乗せれば同じ様な効果が得られます。





おまけ


最後にアクリル絵の具の基本色を書いておきます。セットで売っているのものと違う、発色の良い基本色です。

趣味で絵を始めるにはもってこいの絵の具なので、参考にされる方はどうぞ。


チタニウムホワイト(大きいものを買う方が良)


マースブラック(今回の技術で最も綺麗に見える絵の具)

アイボリーブラック(暖色の黒)


カドミウムレッド(高いが綺麗。パーマネントなんかは安物プラスチックみたいな色なので雲泥の差がある。赤は最もその差が分かりやすい為カドミウム推奨)


黄色

カドミウムイエロー(同上)

イエローオーカー(オキサイドと言う表記の場合も。土なのでメーカーによって違いが大きい)


ビリジアン(アクリルではヒューしかないかもしれません。カドミウムイエローを混ぜて調整できる)


セルリアンブルー

コバルトブルー

ウルトラマリンブルー

(青は日本人と西洋人で真っ青と感じる色が違うそう。この三色は全く違う青なので全部あると幅が広がる)


茶色(全て土の為メーカーによって違いが大きい)

ローシェンナ(明るい茶色)

バーントシェンナ(焼き土。赤い)

ローアンバー(こげ茶。くすみやすい)

バーントアンバー(焼き土。赤い)



後は各自必要だと思う色を買うことになります。私はあまり色味の強い絵を描かない為ほぼここにある色しか使いませんが、紫なんかは市販のものでなければ綺麗な色は出ません。

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