表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未来スケッチ

作者: 夢入カロン

絵師としてパッとしないオレ、生活に困ってしまう。そこで、いい考えを思いついた。


西暦二二〇〇年の世界、タイムトラベルが身近な世の中。世界旅行感覚で過去や未来に行くことができる。当然、その時代に永住することも、申請すればできてしまう。

何を考えているか? 勘のいい人ならわかると思うが、過去の時代の出来事を絵として描いて、その時代で『預言』という形で公表すれば、瞬く間に注目がいく。『預言』欲しさに、お金を払うやつもいるだろう。そうなりゃオレは金持ちだ。この際、絵の評価は二の次だ。


オレはそのために、先ずは専用ビザを作らなければならない。それとここ数百年分の出来事を、まとめ作業することも忘れてはならない。

準備が終われば、過去に行くだけ。警察にバレないよう、過去に向かおう。今からしようとしているのは、時空法に違反するからな。


タイムトラベルは新幹線のような乗り物で行くことができる。オレが行こうとしている時代は、二時間で到着する予定だ。

その間、駅弁、空弁ならぬ"時代弁当"という、タイムマシン内で買える弁当を食べることにしよう。ソイツはある時代をピックアップして、その時代の流行った食べ物を弁当に詰めたというものだ。なかなか好評で、買えない時もあるそうだ。

……まぁ、オレは今回初めての時間旅行だから、知識としてあるだけだけどな。


今回はパンケーキ弁当、これが流行ったのは二〇一一年か……白メシが良かったなー。

二〇一一年……オレが行く年付近だな。


イチゴの乗った可愛らしいパンケーキを堪能しタイムマシンに揺られ、その時代に着いた。


二〇一六年二月十四日。バレンタインデーのとある街にオレは足を踏み入れた。

大分違う。歴史の教科書でも見たことあったけど、オレの住んでる時代と大分違う。

乗り物は人の手で操作してるし、建物は宙を浮いてない。都市農園や牧場すらない。かろうじて、この時代はVRゲームが出てくるが……まだ、先のようだ。


さて、何を描こうか? あまり天変地異に関することだと、時代の流れがおかしくなって、"あるべき未来"が危うくなるからな……慎重にしなければならない。


この時代何が流行ったっけな?

……まとめておいたのを振り替えるか。

そういや、この年はある歌が流行ったっけな? まだ、表には出てないようだし、それを絵に描いててみよう。

近くのネットカフェに行き、その絵を描く。なんでこんな変なオッサンのワケわからん歌が流行ったのだろう?

この歌、オレの時代までこの歌は歌われている。童謡として……。


この絵はネットの大手イラストサイトに投稿して……と。次、何描こうか。

そういや、この年は歴史ある漫画が連載終了したんだっけ……? それも描いて投稿しよう。それは今でも語り継がれている、伝説の漫画だ。


あともうひとつだ。三つも的中されれば信用されるだろう。

何か……。この国じゃないけど、とある国の大統領が暴言野郎になる光景でも描くか。なんでこんなやつ大統領になれたんだろう?


この三枚の絵を投稿して、翌年に移動するとしよう。




翌年、二〇一七年三月一日の世界に着くと、オレの絵は話題になっていた。予想通りだ。

オレの居場所を探そうとしているヤツもいるらしい。それは予想外だけどな。


また前に入ったネットカフェに入店し、あのサイトにログインしてみる。サイトから連絡が来ていた。

どうやら、オレに会いたいそうだ。想定内。


そのサイトの運営会社は、ここから数分で着く場所にある。そこに行くと、着いて事情をいうなり、すぐさま社長のところへ連れて行かれた。そいつはオレに「絵も上手い、それに預言できるというキミなら。その画力で私の未来を預言してくれんか?」というが……個人の未来がどうなるなんてわかる訳がない。


最初は断っていたが、莫大な報酬に目がくらみ、引き受けてしまった。直ぐにはムリだといってここを後にする。


個人の歴史を調べるには地道に調べるしかない。それには莫大な金額をかけてタイムトラベルする必用がある。そんなお金はない。どうしよう……?


そういや、オレの時代の歴史学者は、偉人に監視カメラをつけて史実が間違っていないか確認すると聞いたことがある。

そのカメラさえあれば、簡単に個人の歴史がわかるということだ。幸いにも、そのカメラは貸し出しも容易ということがわかった。理由は単純に確認する人物が多すぎるから。そういうことらしい。


終わったとき、その映像を提供しなければならないが、歴史的価値が低い映像であれば拒否される。

どうせ、あの社長の映像に価値はないだろう。


それを使い、あの社長の歴史を調べてみることにする。カメラを持って再び二〇一七年に行き、カメラをあの社長にセットする。カメラは監視者にはわからないよう、セット後は透明化する。


再びもとの世界に戻る。お金もなくなりそうだけど、もうひと踏ん張りし、社長の歴史を調べあげて絵にまとめる。重要なもの数十枚をサッと描き上げる。

描いてる時頭の中で「こんなことしたら、歴史が改変されるんじゃ……?」と思ったが、一人だけなら大丈夫だろうと軽く考えた。


その絵を持って社長に会いに行く。


「意外に早くできたんだな、キミ」


「はい。見えてからは早いんです」


ウソ。実際は一ヶ月位かかってしまっている。


「どれどれ……ふむ、私の未来は人に恨まれて死ぬんだな?」


「はい、絵に描いてある人物が犯人です」


どうやらその一枚が気になったようだ。そりゃ人に殺されるんだからな、無理もないか。社長は殺す相手の顔に検討が付かない表情を浮かべている。ここでオレは補足を入れる。


「どうやら晩年の仕事仲間で、お金がらみでそうなってしまったと見えました」


この時、オレは体が軽くなるような気がして何かと思う。


「キミ、どうしたんだい!! 体が消えているではないか?!」


言われて見てみると、体が透明になっている。すでに下半身はなくなっている。

……もしかして未来が変わって、オレが生まれないようになるということか?


このときオレはある言葉を思い出した。


『バタフライ効果』


小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏側で竜巻を起こすというというもの。


今回は一人の人生を変えるようなことをしたあまりに、オレが消えるという代償を払うことになってしまったようだ。




こうなること描けたはずなのにな……バカだな、オレ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ