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第9話

「待ちに待ったこの日がとうとう来た。千照高校文化祭、始めるぞ――!!」

「「「おおーーー!!」」」


森崎君の宣言がなされ、皆が雄たけびをあげた。

文化祭の始まりだ。


と言っても、実は全校生徒のほとんどが校庭に集まっている状況で、どの出し物も始まってはいない。

もちろん、理由がある。


「じゃあさっそくいくぞ! 千照高校、○×クイズ!!」

「うおおーーー!!」

「待ってました!」


歓声と拍手が上がる。


千照高校の文化祭は1日目が生徒だけのもので、2日目に外部の人を招く。なので2日目だけの出し物もあるが、逆にお客がいないからこそできるイベントなどが1日目にされる。

そして、今から始まる○×クイズもまさしくそれだ。


「事前に発表していた通り、千照高校に関するクイズを○×で出す。外れたやつは校庭から出ていくように。」


生徒会が主催するこのイベント。事前に参加希望者数をアンケートで調べた結果、かなりの人が参加を希望したことから1日目の一番最初に行われることになった。

出し物を始めた後だと当番の人が出れなくなるからだ。

なぜこんなに人気かというと、


「上位入賞者には賞品がある。事前に言っていたように文房具一式、食堂の食券、購買の商品券、この文化祭で使える金券などだ。」


これが目的である。

結構な金額分なのだ。馬鹿にはできない。さらに、参加率をあげている要因がもう一つある。


「そして、だ。俺たち生徒会メンバーが各々用意した賞品を発表したいと思う!」


これだ。

生徒会メンバー5人が自腹で用意する賞品。

何なのかはそこまで重要ではない。彼らにもらえるもの、というのがでかい。

おかげで女子生徒の参加率はほぼ100%らしい。

とはいえいったい何を用意したのか、わくわくする。ゲームではこんなイベント自体なかったから全く予想がつかない。描かれていなかっただけなんだろうけどね。


「まず、俺からな。俺からの賞品は『一日生徒会長権』だ! 一日だけ生徒会長をやらせてやる! 先生方の許可は取ってあるから安心しろ。」


やりたい!


歓声と野次が上がる。

やりたーいという声や、元手ただで済ませてんなーという声などだ。


生徒会長という役職に興味はないけど、彼らに接触できるということじゃないか! なんというチャンス! 欲しすぎる!


「まあ、仕事とかは簡単なものしかさせないから安心しろ。一日生徒会長と呼ばれる日って感じになるだろうな。次行くぞー。」


次は速水君だ。


「私からは『問題集と参考書』を。どの学年の方が当たっても役に立つと思います。」


ええーーー!!? と声が上がる。

いいものかもしれないが、文化祭の賞品にそれって…。


「あー…まあ、微妙って思うかもしれねえけどこいつの参考書選びに外れはないからな。まじで役立つと思うぜ。次!」


森崎君が微妙にフォローする。


「はーい。俺からは『俺との一日デート権』をプレゼントしちゃうよー。」


土居君のその言葉に女子生徒から特大の歓声が上がり、男子生徒からブーイングが上がる。

なんという賞品をだすんだ、あやつは。

周りの空気が変わった気がする。

皆で頑張ろうねーという空気から、絶対勝つ、お前らはみんなライバルだ! という空気にね。

死人が出なければいいけど…。冗談だけどさ。

もちろん、欲しい。だけど生徒会長権のほうがいいかなぁ。


「男に渡っちまえ。はい、次~。」


ちょ! 会長!? という土居君の声を無視して進行させる。仲がいいねぇ。


「はい。私からは『紅茶セット』です。茶器とおすすめの紅茶の詰め合わせです。紅茶嫌いな人にはごめんなさい。」


瑞姫さんはそういって頭を下げる。一番まともだ。

周りからも全然OK~と声がかかる。まともなのがあって安心した~という声もあって笑える。


「まあ、本人が苦手でも家族とかでも飲めるしな。俺はいいと思うぜ? で、最後!」

「えー、私からは生徒会メンバーのメルアドでも…。」


本日最大の歓声が上がる。

まじっすか!?


「冗談です。さすがにしません。」


デスヨネー。

落胆の声が上がるも、さすがにみんな冗談だと分かっていたので半笑いだ。


「先輩…。」


さすがの森崎君もあきれ顔だ。そんな顔もかっこいい!


「『遊園地の1日フリーパスのペアチケット』でーす。普通でーす。彼氏彼女あるいは気になる人を誘っていってくださーい。」


ほっとしたような、残念なような、そんな歓声が上がる。

うん、ちょっと期待したよね。

それにしても、庶務の人…川岸先輩だったかな。いい性格してるなぁ。あの立ち位置に立ちたかった…!


「以上! 欲しいものはあったか!?」


あったー!! とみんな声をあげる。


「この賞品聞いてやっぱりやりたくなったってやつがいたら早く校庭に来いよー! 今ならまだ間に合うからな!」


校舎のほうからもうちょっと待ってーー!! と声が聞こえた。そりゃあの賞品聞いたらね。


「じゃ、待つ間にもうちょっと詳しく説明するな。これらの賞品だけど、最終的に残ったメンバーでくじ引きだ。」


ええーーー!!? 選べないの!?


周りからも大量のブーイングだ。


「最初は選んでもらうつもりだったんだけどな。もめるという意見が強かったからこういう形式にさせてもらった。悪いな。ちなみに、俺のと、智也のは譲渡不可だ。本人のみ有効な。」


まあ、それが妥当だろう。


「まあつまりだ、男に当たったらおもしれえな、ってことだな!」

「会長さっきからひどくない!?」

「辞退は自由だからな。まあ、せっかくなんだから使ってほしいとは思うけどな。むしろ男だったらぜひ使えよ。で、いろいろおごらせてやれ。」

「勘弁して!」


男子生徒の雄たけびがあがる。

使う気なのか…。


「さーて、そろそろ始めるぞー。準備は大丈夫か―!?」


ごくり、と息をのむ。

一度でも間違えたら終わりなのだから、緊張する。


「二人とも、頑張ろうね。」

「まずは協力しながら、ね。」

「意見が分かれたらそこからは別行動ね。」


亜紀や真理と相談しあうつもりだけど、まったくわからない場合は各々の直感で行くことにしている。ずっと一緒に行動して全員で落ちたら意味ないしね。


「おっと、一つ大事なことを言い忘れてた。相談は自由だけど、締め切った後に移動したり、間違えたのに抜けなかったりなんかの不正が発覚した暁には相応の罰を用意してある。」


なんだろう? 会長と接触できるならある意味ありかも?


「具体的に言えば、各学年主任による特別補講だ。たっぷりと課題を用意してくれるらしいぞ。ほぼマンツーマンで教われるから受けたい奴は不正するといい!」


不正ダメ、絶対。





「縁日で遊びませんかー? 童心に帰って遊びましょう! いろんな景品がありますよー。」


呼び込みって何を言ったらいいのか、難しい。

ちなみに衣装などは経費節約のためない。制服で十分だしね。


○×クイズ? 言うまでもない結果ですとも。

F組で二人、賞品をゲットできたけれども生徒会メンバーのものは当たらなかった。

一日生徒会長権は三年の女の先輩が、一日デート権は、まあ、予想通りというか、一年の男子がゲットした。

双方が悲鳴をあげていて、周りは大爆笑だった。

絶対そうなると思ってたよ、うん。

まだ先輩じゃなかっただけましじゃないかな。

ちなみに後に聞くことになるのだけど、二人でゲーセンで一日中対戦したりして遊んだらしいよ。


「藤本ー、もっと気合い入れて呼び込みしてくれよ。」

「入れてるよー。」


受付の男子につっこまれる。これでもへこんでるのだよ。一日生徒会長、やりたかったなぁ。


「ん?」

「どうかした?」

「いや、あの団体…。」


彼が指差したその先にいたのは、


「F組は縁日か。楽しそうでいいじゃねえか!」


せ、生徒会の皆様ーー!!?


「明日お客を迎えても問題ないかを確認するためにもお邪魔しますね。」

「は、はい! どうぞ!」


私が受付してればよかった! そしたら速水君に話しかけてもらえたのは私だったのに!

ぶっちゃけ私がいない時間に来ると思ってたから油断した!


中に入っていく5人を見送る。

いっそ中に入ろうか、呼び込みとかしなくても…。


「わわわ、ちょっと待った! そこでストップ! そんなに一度に入られたら困るって!」


見ると、生徒会メンバーについてきていたらしい大量の女子生徒たちが同じように入ろうとしていた。

必死に止めて、入場制限をかけるクラスメイトの姿を見てもなお持ち場を離れる勇気は私にはなかった。


「ハーイ、並んでくださーい。ただいま教室内混雑のためはいれませーん。」

「ちょっとくらいいいじゃない!」

「皆様に快適に遊んでいただくためです、ご理解ください。」


扉に押し寄せようとする人たちを押しとどめて列を作る。

こちとら飲食店でバイトしているのだよ。これくらいはできる。

幸い、この教室は校舎の端っこなのでこちら側を抑えておくだけですむしね。


「出てきた人数見て、次いれてよ。」

「悪い、助かる。」


それでもしつこく教室内を覗き込もうとする人がいたので、開けっ放しにしていた扉を閉める。

私だって、覗き込みたかったのに!

閉める際、速水君がこちらを見ていた気がした。うるさかったかな。


結局、生徒会メンバーが出ていくと、並んでいた人たちも入らずに去っていった。

あの一員にはなりたくないな。似たようなことは、してるけどさ。ちょっと反省。


「あー、あせった。」

「お疲れ~。」


せっかくのチャンスだったのに、無下にしちゃったなぁ。


「おれ、藤本は中に入ると思ったよ。いっつも騒いでるしさ。」

「さすがに空気くらい読むよ。」

「悪い悪い。ほら、呼び込み頼むぜ。」


いくら私でもあの状況で見捨てたりはしないよ。見捨てたかったけどさ!



その後、亜紀たちと校内を回っているときに何度が生徒会メンバーを見かけたけど、ずっと忙しそうにしていた。

残念ながら坪田君を見かけることはなかった。明日に期待である。


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