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第8話

体育祭が終わり、次は文化祭である。

出会いの場としてはこれ以上のものはないだろう。今から気合いが入る。


が、その前に、つい先日生徒会選挙があった。

そう、森崎君が生徒会長になったのだ。

1年で? と思うかもしれないけど生徒会は1年の秋から2年の秋の1年間を務めることが多い。3年になれば受験があるからだ。

まあ、森崎君達は3年の秋まで務めるのだけど。


選挙は、うん、圧倒的だった。

容姿端麗、成績優秀となれば当然と言えば当然かな。

あれだけ女子にモテていたら男子からは嫌われそうとも思うけど、性格もいいからそうはならないんだよね。

乙女ゲームの攻略キャラって大体そうだよね。ちゃんと同性の友達もいて、嫌われたりしてない。


まあ、それはそれとして。

生徒会長は森崎君、副会長は速水君、会計が土居君で書記に瑞姫さん。庶務には2年の女子生徒がついた。庶務の人はゲームには出てこなかったなぁ。勝ち組のモブか…! 私が覚えてないだけでサブキャラくらいだったかもだけど。

でも、予想通り瑞姫さんは生徒会に入った。これはそっちのルートを通るってことでいいのかな。

坪田君とも仲がいいからまだまだ見逃せないけどね!

土居君は補佐委員ではなかったのだけど、相川先生の推薦で生徒会に入ったのだ。数学の成績いいからね。

ゲームではそのあたりもイベントとして描かれていたけど、今の私には見れないものさ…。

新生徒会からのあいさつで彼らが並んで立っていたときはもう、講堂の舞台がコンサート会場に見えたね!

瑞姫さんも美人だし、庶務の人もかわいいので生徒会に入るのには顔が必要なのかと思ったくらいだ。

…必要ないよね?

挨拶の時は盛り上がったこと、盛り上がったこと。



「新しく生徒会長になった森崎です。堅苦しいのは嫌いなので、俺流にあいさつさせてもらいます。…俺は、生徒会長としてみんなが最高に楽しめる学校生活を演出して見せる。俺と同じときにこの学校に入れて幸せだったと言わせてみせるぜ?」


女生徒からの悲鳴が響き渡る。すでに幸せ~という声もあった。


「手始めに来月にある文化祭。史上最高の盛り上がりにしてやろうぜ!」


もう、大歓声である。もちろん私も歓声をあげたけどね。

すると速水君がそんな森崎君の頭を軽く叩いて後ろに下がらせた。


「皆さん、静粛に。」


そのよく通る声にピタッと歓声がおさまる。


「副会長を務める速水です。森崎の言うことは話半分に聞いてくださいね。調子に乗らせるとやりすぎるので。」


笑い声が響く。


「ですが、皆さんに楽しんでもらえるものを作り上げることはお約束します。困ったことがあればいつでも生徒会室に来てください。」


続いて土居君があいさつする。


「えーっと、俺も堅苦しいのは嫌いなので軽く。会計の土居です。ま、二人と同じようなことになっちゃうけど一生に一度の高校生活楽しんだもの勝ちだからさ。言うだけはただってことで、いろいろ意見、言ってくれよな。無茶苦茶な意見見て生徒会の皆でこれは無理だわーって笑うから。」


またも笑い声。下がる際に軽く手を振っていったため女生徒からの歓声が上がる。


「書記を務める瑞姫です。至らないところも多いと思いますがみんなと一緒に精いっぱいやらせていただきます。」


瑞姫さんはそんな無難な挨拶だった。これが普通なのだけどね。

庶務の人も普通にあいさつをして、新生徒会のお披露目は終了したのだった。




「でも、ああ言われたら文化祭盛り上げよーって思うよね。」

「うんうん。」


最近の話題はもっぱら生徒会メンバーのことか文化祭のことだ。


「森崎君が無茶なこと言っては速水君が却下してるらしいわよ。」

「あはは、その光景が目に浮かぶね。」


浮かぶけど、生で見たい…。生徒会に入れるくらいのモブだったらよかったのに!


「意見箱も投書でいっぱいだったよ。」

「そうなるでしょうね。」

「言うだけはただだからねー。」


いったいどんな無茶ぶりがかかれている事やら。

と言っても、もう文化祭まで1か月を切っている。文化祭に関してはぶっちゃけもうほとんどのことは決まっているだろう。

実際クラスの出し物なんかは夏休み前に決まってるしね。


出し物を決めるときはかなりもめたものである。

やはり定番ものというのはほかのクラスとかぶる。お化け屋敷や喫茶店がその筆頭だ。

定番だからこそ自分もやりたいという意見と、ほかと同じなんてつまらないという意見がぶつかった。

猫耳喫茶やらメイド喫茶やらお化け喫茶やらいろんな意見が出たけど、やはりほかのクラスも希望が多いようだったので違うのにしようと言う意見が勝った。

演劇や食べ物の屋台という意見も出たけど、劇は舞台の使用権の競争率が高いので1年では難しい。屋台は部活の出し物で毎年やっているためにすでに決まっているものが多く、定番ものは網羅されていた。

イケメンたちが来てくれるような出し物がいい、という意見や、ほかのクラスの出し物に行きたいから当番の時間が少なくて済むものがいい、という意見も出つつ、結局は縁日をやることになった。

これも結構定番だと思うけど幸いかぶらなかったようだ。


というわけで今は、その準備で大忙しというわけだ。

縁日はとりあえず必要な景品数が多い。

ぶっちゃけどれもしょぼいものだけど、できる限り種類を増やそうといろいろ画策している。

基本はそういうものを扱っている店で買うのだけど、それ以外にも家にある要らないものを持ち寄ったりしてね。


設備に関しては幸いにも過去に縁日をやったところがあり、その大道具が残っているらしく、借りることができるらしい。


「とりあえずどんなものがあって、どれくらい修理が必要か見てくる。」


そういって数人の男子が教室を出ようとしたとき、女子の静止がかかった。


「ちょっと待った! 私も行くわ!」

「ずるい! 私も!」

「そんなに行っても仕方ないでしょ? 私、日曜大工得意だから。」


途端にみんなが同行を申し出た。

もちろん、理由がある。

倉庫のカギは、生徒会室に借りに行くのだ。


「お前らなぁ…。」

「俺らだけでいいっての。」


呆れたたように彼らは言うが、生徒会室に行く用事なんてそうそうないのだ。察しろ!


「よくない!」

「全然よくないわよ!」

「女視点だって必要かもしれないじゃん!」


出し物を決める時以上にもめつつ、最終的に男子女子二人ずつの合計4人で行くことになった。


「じゃんけん?」

「この人数じゃ、あいこが続くだけよ。」

「じゃあ、あみだかな。」

「恨みっこなしだからね。」


もちろん私も参加だ。亜紀も参加しているけど、真理は辞退した。

生徒会室に興味はあるけど、みんなほどではないから、とのこと。

うん、ドン引きだよね、申し訳ない。


「じゃあ、いくよ!」


そしてその結果…。



「ふふふふ、私のくじ運も捨てたものじゃないね!」

「ねー。」


見事、あたりを引きましたよ!

これは、波が来てるかも? モブ脱却しちゃう?

ちなみに亜紀ははずれだった。残念。


「お前ら女子のその熱意にはいっそ感心する。」

「もはやあいつらに同情したくなるよな。こんな奴らに付きまとわれてな。」

「失礼なー。」

「ちゃんとわきまえてるよ。」

「「ねー。」」


共に行く男子二人に冗談交じりにため息をつかれ、反論する。


「そっちだって、絶世の美少女とかが学校にいたら同じようなことするって。」

「否定できねぇな。」


ちなみにF組の男女仲は意外と悪くないのだ。一部の男子は情報を提供してくれたりもする。男にしか手に入れれない情報というのも多いので超助かる。いいやつである。


「っと、ここだな。」


そういうや否や、彼は生徒会室の扉をノックした。

心の準備位させてよ!


「どうぞー。」

「失礼しまーす。」


私の内心などお構いなしに、扉を開けて入っていく男子を軽くにらんでから、あとに続く。


「はーい。何の御用ですか?」


対応をしてくれたのは庶務の先輩だった。

内心でものすごくがっかりしたが、部屋の中にはちゃんとほかのメンバーもいた。

私は対応を男子に任せることにして、そちらに意識をやった。


みんなが、みんなが仕事してるよ!


もうその景色だけで胸がいっぱいだ。

真剣に書類と格闘している姿はとてもかっこいい。

何をしていてもかっこいいとしか言っていないけど、事実なのだから仕方がない。


「修司、これのチェック頼むわ。」

「急ぎか?」

「今日中。」

「ん。」


うわあああああ! 二人が会話してるよ! そりゃするだろうけど! さすが幼馴染!


「速水ー、これも頼む~。やっと終わったー。」

「まだまだ仕事はありますよ。」

「うええぇ…。こんなにハードだとは…。」


そういって土居君が机に倒れ伏す。


「会長、これ、チェック終わりました。」


その横で、瑞姫さんが森崎君に向かって書類を差し出した。


「会長?」


しかし、反応がないため、瑞姫さんがもう一度呼びかけると森崎君ははっとしたように顔をあげた。


「っわり、今は俺が会長なんだっけな。まだ呼ばれなれねぇわ。」


そういって困ったように笑った。


かっこいいの中に可愛いが混ざって…最強か!!


決して表に出さないように気を付けながら悶えていると後頭部を軽くたたかれた。


「お前ら行くぞー。」


時間切れだった。



倉庫での作業はつつがなく終わり、カギを返しに行ったが、その時は返すだけなので覗き見る暇もなかった。

というか、返す役くらいさせてくれたらいいのに、けちめ。


「私、今年の運使い切ったと思う。」


とりあえず、隣から漏れたその言葉には全力で同意しておいた。


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