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第7話

やってきました、2学期です!


夏休みは散々に終わったけれどもこれからはそうはいかないよ。

なんといっても行事目白押し!

体育祭、文化祭、クリスマスなどなど乙女ゲームで定番のイベントチャンス。

ゲームでは各イベント、一度に起こせるのは一人だけ。

つまり、瑞姫さんが起こしたイベント以外はほかの誰かにチャンスがあるかも! …と淡い期待を持ってみる。

乙女ゲームのヒロインだからこそ起こるイベントだ、と言われたらそれまでだけどね。

だけど、イベントは起こせなくてもモブとして彼らの勇姿を見れるだけで幸せである。



まずは体育祭。

一つのグラウンドを囲んで行うのだから当然攻略対象たちを見れる。楽しみ。


「亜紀は何に出るの?」

「第一希望は玉入れ。走るの苦手なのよね。」

「イケメンのためなら疾走する癖に。」

「それはそれ、これはこれ。」


まあ、気持ちはわかる。


「そういう結衣は?」

「第一希望は借り物競争~。第二希望はパン食い競争かな。」


どちらも前世では有名だけど意外となかったものだ。物語では定番だけど、実際やるにはいろいろと面倒だもんね。


「えー。めんどくさそうなの選ぶわね。」

「借り物で好きな人が来たら彼らの誰かに頼んでみせる!」


ぐっとこぶしを握る。


「そんなお題、現実にあるわけないでしょ。」

「えー、可能性は0じゃないって。」


まあ、ゲームでもそんなお題は出なかったので多分ないのだけど。

しかし、ここは乙女ゲームの世界。もしかしたらあるかもしれない。

実際引いても絶対に声かけれないけどね…。


「まあ、好きな人は冗談でももしかしたら何か借りれるかもしれないしさ。」

「どうせ無理だろうけどね。」

「言うだけはただなの!」


同じことを考えた子が少なくなかったのか抽選になったけど勝ち取った。

たまには私だってやるのだよ。

ちなみに亜紀は宣言通り玉入れ、真理はリレーだ。


あとは全員参加の競技に出る。

クラス対抗全員リレーと大縄跳びの二つ。


まあ、私が出る競技などどうでもいい。

勝ち負けはさらにどうでもいい。

彼らのかっこいい姿を見れる。それが大事。

とりあえず、双眼鏡は用意すべき?




「で、用意したんだ?」

「備えあれば憂いなし!」


体育祭当日、双眼鏡を持った私に真理は苦笑した。

まあ、浮きそうだったら使わないけどさ。でも、結構みんな持ってるよ。考えることは同じだね。

観戦位置はクラスごとに決まっているので観戦中の彼らを見るのは難しそうだ。遠い。

まあ、競技中の姿が拝めれば十分か。


「まずは、この200メートル走だっけ?」

「速水君が出るはず。」


プログラムでチェックすべきは当然彼らの出場種目だ。


「あ、でもその直後が大縄跳びだから移動で見れないかも。」

「えー!」


タイミングが悪い!

と言っても一つ二つそういうのがあるのは仕方がない。


そうこうしている間に開会式が始まった。

開会式と言っても、全員で行進したりはしない。生徒会長が宣誓をするくらいだ。

かっこいいけど、井沢会長は結構朝礼などで檀上にあがるのでもうだいぶ見慣れている。


「結衣、大縄の準備だってさ。」

「もう? りょうかーい。」


大縄跳びは1年女子のクラス対抗戦だ。多く飛べた順に点が入る。

気合の入っているクラスはかなり練習をしていたみたい。

わがF組? それよりも大切なことがあるのである。


グラウンドに入場すると当然周りも見える。

というわけで彼らの姿を探す。

じっと見たら怪しいのでのぞき見程度だ。


…うん、かっこいい!


イケメンはジャージ一つとっても着こなしが違う。

A組のほうを見るとちょうど速水君が席に戻るところだった。

入場ゲートに並んでたから結局見れなかったんだよなぁ。

がっかりしながらも、競技に集中しようとした時、速水君のそばに森崎君が近づくのが見えた。そして軽くハイタッチをする。

思わずガン見した私は、直後に始まった大縄跳びのタイミングをつかめずに1回目で足を引っかけたのであった。


ちなみに後で聞いたところによると、私以外にも2、3人引っかかっていたらしい。見てたところは多分同じだね。もちろん最下位で得点なしだけど、反省はしていない!



そのあとはしばらくひたすら観戦だ。

まさしくモブの一員となって彼らを全力で応援した。クラスの応援は後回しである。

ほかのクラスも同じような状況で、森崎君が出た800メートルリレーでは森崎君がほかのランナーを抜かしトップになった瞬間、特大の歓声が上がった。

ちょっと他の人がかわいそうになるレベルだった。

まあ、私も全力で応援したけどね! 自分のクラス? 気にするな!

真剣な顔で走り抜ける姿はそれはもうかっこよかったです。

1位でゴールし、クラスメイトに向けて笑顔でこぶしをあげた姿にはものすごい悲鳴が上がったくらいだ。


私? 感動に打ち震えて声も出ませんでした。かっこよすぎる…。


土居君は二人三脚だ。乙女ゲームでは定番かな。

瑞姫さんは別のクラスだから、今年はゲームイベントではないけど。

ペアの子は壮絶な戦いを制したのだろう。

ほかの女生徒たちから嫉妬の視線が突き刺さっているが、ドヤ顔で返している。

あれが勝ち組というものか…!

土居君は応援したいけど、応援したくない…!

皆も似たようなことを思ったのか、声援はおとなしめだった。


相川先生はクラブ対抗リレーで出ていた。顧問もありなのね。

生徒会として井沢会長も出ていたので二人が並走していた時はキラキラエフェクトが見えた気がしたね!

お遊び競技なので二人とも余裕を持って走っていた。相川先生が手を振りながら走ってた時は、それはもう全力で振り返しながら応援しましたとも。


そして、本日一番の見どころ! 大玉転がし!

これには瑞姫さんと坪田君がペアで出るのですよ!

イベント! イベント!

双眼鏡の準備も万端。

イベント通りなら、瑞姫さんが転びそうになるはずだ。それをすんでのところで坪田君が支える。単純なものだけど胸キュンものだ。


スタート地点に並ぶ二人。

瑞姫さんが頑張ろう的なことを言ったのだろう。坪田君が笑顔で頷いている。ああ、かっこいい…。

そしてスタート!

イベントは起きるだろうか。ドキドキしながら見守る。

そしてちょうど真ん中あたりに来た時に、それは起きた。

転びそうになった瑞姫さんを、坪田君が支えた。


イベント来たーーーー!!


声が聞こえないのが惜しい! 脳内アテレコをしておこう。


「あっぶねぇな。」

「あ、ありがとう。」

「ほら、立てるか?」

「うん、平気だよ。」


ゲーム内のセリフを一部変更してお届けしております。

ちなみにこの瞬間にも大玉はあらぬ方向に転がり続けている。二人の世界作ってて気づいてないみたいだけどね!

ほぼ全員の視線集めていることにも気づいてないね。皆ガン見ですよ。


「怪我とかないか?」

「良君が支えてくれたから、大丈夫だよ。…あ! 大玉!」

「あ!」


そしてようやく大玉を回収して、再開する。まあ、ほぼ皆すでにゴールしてたけどね。

こうやってリアルで見ると、なんというか、リア充爆発しろ! って言いたくなるイベントだなぁ。

きっと男子の多くは思っているに違いない。


でもやっぱりゲームと同じなんだと再認識。にまにまが止まりません。

坪田君のイベントが起きたということはほかの人のは起きないのかな。

確認したいけど、そのためにはここを離れないといけない。

起きるかどうかわからないもののために、確実に見れる彼らの競技姿を見逃せるか、と言ったら無理だね。

と、いうわけであとはひたすらキャーキャーいいながら観戦を続けた。


さて、借り物競争である。

すでに終わっているグループの借り物を見たところ、まあ普通だ。

何人かが、靴やはちまきを森崎君や土居君に借りようとしていたけど、周りの人たちが見事に妨害していた。

先にほかの人に差し出されたら断れないよね。

彼らしか持ってないもの…難しい。借りに行くのは無理そうだ。

無難にクラスメイトに借りてゴールしよう。


そう、思っていたのだけど…。


置かれている紙を拾い上げて、開く。


………。


フリーズした。

周りでは、お箸誰かここに持ってきてないー!? とか、大玉ーー!? とかが聞こえてくる。

なかなかに難しいものを書かれているようだ。でもこれは…。


そこには『かつら』と書かれていた。


バッと教員席を見る。

…いやいやいや、無理でしょう! そんな度胸ないよ!


かつらってこと公言してる先生いたっけ!? それとも秘密を暴けと!?

教員席に行って、かつらの人いませんかー? って言えと!?


「結衣ー!」


混乱して動けないでいると、亜紀が手招きしていた。動けないでいる私を心配してくれたのだろう。


「亜紀ーー! へるぷみー!」


そういってお題を見せる。

周りにいた皆もそれを見て押し黙る。


「結衣。」


亜紀がぽんっと肩をたたいて言う。


「レッツゴー。」


くいっと教員席を指さされる。


「無理無理無理!」


みんなが笑いながら、いけるいける! 教頭とか、ねらい目。などと無責任なことを言ってくれる。

完全に遊ばれている!


後にして思えばかなり注目を浴びていたと思う。恥ずかしい…。


結局タイムアップで最下位に終わった。


お題として成立しているってことはかつらの人、いたのかな…。

それともはずれお題だった?



こうして体育祭はイケメン鑑賞としては大満足だったけど、何とも言えない疑問が残ったまま終わったのだった。


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