表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

第6話

本日晴天!

絶好の遊園地日和!


夏休みということもあって、開園1時間前だというのにすごい人。

これは想像以上に難関かも。


「とりあえず何は外せないか決めとこっか。」

「私はホラーハウス。夏季限定だしね。」

「私はこのパレードが見たいな。」

「このジェットコースターは乗っときたいわね。」


入場待ち列に並びながらどういう順番に廻るか決めておく。

もちろん待ち時間次第で変えるけどね。

そうしながらも、周りに目をやるのは忘れない。


いないかなぁ。


探しているのはもちろん瑞姫さんたちだ。

イケメン情報網によると、今日来ることは確定らしい。

さすがにこの状況で接触するのは無理だろうけど、私服姿くらいはぜひ拝みたい。


普通に考えれば見つけるなんて無理だけど、あれだけのイケメンが二人並ぶのだ。目立つはず!


今のところ、今日遊園地に来ているほかのクラスメイトからも目撃情報はない。

まだ来ていない可能性もあるから仕方がない。


遊園地もしっかり楽しみたいしね!



この間あった夏祭りも、ゲームイベントは見れなかったけど十分楽しんだ。

事前情報では森崎君と速水君は森崎君の弟妹と一緒に、土居君はC組の人たちと、井沢会長は生徒会メンバーと来るとのことだった。坪田君と相川先生は不参加だ。

だけど、探す気にはなれなかった。

あそこまで人がごった返していたらね…。

二人とはぐれないようにするので精いっぱいだよ。

一応気にはしてたけどね。

買い食いしたり、要りもしないのに出店のゲームに興じておもちゃをゲットしたり、ゲームのことはほとんど忘れて楽しんだ。

イケメン情報網でいくつか目撃情報が回ってきたときはちょっと悔しかったけど!

向かいたくても人多すぎて無理だったんだよね。

ちなみに瑞姫さんは友達と行っていたみたい。

攻略、進んでないのかなぁ。



まあ、今日のイベントで一気に好感度が上がるのかもしれない。

ゲームとは違うけど、デートイベントに相当すると思うし。


「うーん、いないわね。」

「この人混みでは難しいかもね。」

「私たちにイケメン運はないしねぇ。」


亜紀は残念そうにそういった。


「ま、遊園地を楽しも―!」

「「おー!」」



目撃情報第一報が来たのは私たちがホラーハウスの待ち列に並んでいるときだった。


「あ、森崎君たち今来たんだって。」


亜紀のその言葉に、私も携帯をチェックする。


「『3人の姿を入場ゲートにて確認、私服超ステキ~!』 うわー! みたい!」

「『森崎君の弟達もやはりイケメン』 だって!」


すぐにでも入場ゲートに向かいたかったけど、そうもいかない。せっかくここまで並んだものを無下にするなんて無理だ。

ちなみに、わがクラスのイケメン情報網では隠し撮りを広めるのはご法度だ。

こうやって騒いで楽しませてもらっているけど彼らはただの高校生。

中学の時に、自分の写真を大勢が持っていていやな気持ちになった人もいるらしいから、自重しているのだ。

ならこういう付きまといもやめろ、と言われればそれまでなのだけどこれくらいは勘弁。


「ほら、二人とももうすぐだから携帯しまわないと。」

「はーい。」


ホラーハウスでは3人とも怖いの平気なので、ハプニングもなく楽しんだ。

むしろじっくり見てしまって、お化け役の人には居心地の悪い思いさせたかも。

怖くはないけど、驚かされるから楽しいんだよね。


「ほかのに並ぶとパレードに間に合わなくなるかもだし、何か食べる?」

「ちょっと待ってね。『ホラーハウスに入るのを確認。怖いの無理なので諦め。』 だって。」

「えー! 見事にすれ違ってるよ…。」


待ち列を見るも見える範囲にはいないみたいだ。建物内でも結構並ぶのですぐには出てこないだろう。


「出口が見えるところで何か食べようか。」


適当な屋台で買った軽食を食べながら出口を見ているが出てこない。

気が付けば周囲にクラスメイトが数人いた。


「やっほー。もう出てきた?」

「まだみたい。」


もちろん目的は同じ。


「あ、もうすぐパレード始まっちゃう。」

「う、もうそんな時間かぁ。」

「仕方ないわね。移動しましょ。」


出てくるまで待ちたかったけど、真理が見たいと言っていたものだからそちらが優先だ。

いくらチャンスでも友達をないがしろにはできない。

私服姿拝むだけだしね。


「二人はここにいても…。」

「何言ってるのさー。一緒に行くに決まってるじゃん。」

「一人にしたりしないわよ。」


そうして移動した直後に出てくるのはもはやお約束。

わかってたよ…。


「『妹ちゃん、かわいい~。速水君と手をつないでうらやましい!』『パレードを見るみたい。人混みに紛れちゃった。』 だって。」


パレードが終わった後、携帯で情報をチェックしたけど今は見失っているみたい。


「じゃ、予定通りジェットコースターに行こうか。」

「う、うん。」

「そんなに怖くないって。」


ジェットコースターは怖いけど好きだ。

上っているときのドキドキ感がたまらない。


「ね、あれ森崎君じゃない?」

「え! どこ!?」


まさにジェットコースターが進み始めた時、真理が下を指さしてそういった。

私が座っている位置からだとうまく見えない。


「ほんとだ! 速水君は…いないわね。隣にいるのは瑞姫さんっぽい。」

「私も見たい~!」


そっち側に座ればよかった!


そうしている間にもコースターは進み、離れてしまった。

乗っている間も、気にして見てたけどさすがに個人の判別は無理だった。

気になりすぎて、ちゃんと楽しめなかったよ…。


ちなみに乗り終わった後にそこに行ってみたけどもう誰もいなかった。


「二人で何してたのかなぁ。」

「うーん、遠目だし自信ないけど瑞姫さんがちょっと具合悪そうだったかな。」

「私はそこまではっきりとは見えなかったわ。」


もしやそれは森崎君とのデートイベントでは!?

遊園地でのデートでヒロインが乗り物酔いで具合を悪くするというものがあったはずだ。

やっぱり現状では森崎君ルートが有力と考えるべきだろうか。

一番メインキャラだし、瑞姫さんが転生者でなければそれが一番自然なのかな。


「しっかし、見事にすれ違うわね。呪われてるんじゃない?」

「え! 私!?」


確かに一番すれ違っている気もする。

モブの呪い…?

それとも物欲センサー的な…?

ありそうで怖い。


「もう今日は諦めだね。」

「お、諦めた。」


なんだかやる気がそがれてしまった。


「またいくらでもチャンスはあるよ。」


真理が慰めてくれる。でも、目的はイケメンの私服姿だからね。慰める価値ないよ。


「残りの時間は気にせず楽しもう!」


そう意気込んだとき、誰かとぶつかってしまった。


「あ、すみません。」

「いえ、こちらこそよそ見してました。すみません。」


その相手は中学生っぽい少年で、とても礼儀正しく去っていった。

一緒にいた子と顔がそっくりで、双子なのだろう。なかなかイケメンだった。


…ん?


「今の子…誰かに似てた。」

「森崎君だと思うよ。弟君かな?」


真理がさらっとそういった。


「!!」


思わず亜紀と顔を見合わせた。


なんで気づかなかった、私!


というか、私たちが気付かなくて一番興味ないと言っている真理が気付くというのがすごいというかなんというか。


「まだ幼いなりにイケメンだと思って眺めてたけど、なるほどね。」

「確かにかっこよかった! 気づかなかった~!」


すでに彼らの姿はない。

ついていけば森崎君たちを拝めたかもしれないのに!

諦めた瞬間にチャンスが来るって、やっぱり物欲センサー?


しかし、あのイケメン顔で双子か…。

続編が出ていたら、きっと攻略対象に違いない。

双子キャラって定番だしね。


結局そのあとは特に何事もなく遊んで帰った。


モブの呪いか…。あえてゲームを意識しないほうがいいのかなぁ。


そう思って花火大会のときは普通に楽しんでみた。

まあ、誰とも遭遇しなかったけどね!



そうして私服姿を拝むというささやかな野望すら叶うことなく夏休みは終わったのである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ