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第13話

2月、と言えば何があるかはお察しの通り。

そう、バレンタインデー!


この日ばかりは我がF組も空気を読まずに特攻するつもりであります!

赤信号、みんなで渡れば怖くない! 渡っちゃだめだけど!

運のない私でも、皆と行けば渡せる! と思う。


ただ、何を渡すかが問題なんだよね。


え? チョコじゃないの? って思うかもだけど、チョコ一つとってもいろいろあるんだよ。

それに、たぶん、おそらく、きっと、大量のチョコをもらうだろう彼らにチョコを渡して食べてもらえるのかっていう話もあるよね。

渡す、ということが大事なのかもだけど、どうせ渡すなら喜んでもらえるもの渡したいよねぇ。


でも、ぶっちゃけさ! 開けてもらえるかすら怪しくない?

そう思うと、適当でもいいかなーなんて思っちゃったりも…。


いやいや!

モブ脱却のためにも手抜きはダメ!

何か印象に残るものを渡して、個人として認識してもらわないと!


でも、印象に残るバレンタインのプレゼントって何だろう…。


とりあえず、消えものにするのが基本だよね。

彼女でもなければ友達ですらない相手に形が残るものもらっても困るだけだと思う。

となると、食べ物か消耗品。

消耗品って言ってもねぇ。いいものが思いつかない。やっぱりチョコを贈るものって印象が強すぎるから何を贈っても変にしか思えないんだよね。

やっぱり、変化球で行かずに素直にチョコにするべきかなぁ。

そもそも渡せるかどうかが問題なわけだし。いや、きっと渡せると信じてるけど!


…うん、やっぱりチョコにしよう。


こういうのは形が大事なんだよ、うん。バレンタインにチョコを渡す、これが大事。

もちろん手作りにしたりはしない。

いつ開けてもらえるかもわからないのだから、賞味期限が長めのものがいいかな。

いっそバレンタイン売り場に売っているようなものよりも、普通のお菓子売り場に売ってる、個別包装がされてる系のチョコ菓子のほうが人にあげやすくていいかもしれない。

いや、人にあげやすいもの選んでどうするよ。

食べてもらうにはまさしくバレンタイン! なものを選んだ方が…?

ううーん…。

難しい。


大量のチョコもらっている人なんて実際に見たことないしなぁ。

芸能人とか、ゆるキャラとか?

チョコの処理って、どうしてるんだろう。絶対食べきれないよね。

どこかに寄付とか? でもそういう人たちは対処法が事務所ごとにあるんだろうしなぁ。

個人が大量にもらったら…性格によるか。


こういうのを気にするあたり私はダメなんだよね。


気にせずあげたいものをあげればいいじゃん! っていうツッコミが聞こえるよ。

私一人が気にしたって、大差ないもんね。

よし!




「で、結局市販の賞味期限が長めのチョコ菓子にしたわけ?」

「一番無難かと思って。」


亜紀は若干呆れたようにそう言った。

だってさ、バレンタイン仕様のものは意外と生チョコとかが多くて賞味期限が短かったりするし。そうじゃないのもいっぱいあるけどね。


「まあ、ある意味どうみても義理です! っていうチョコは新鮮かもね。」


確かに義理チョコ…。でも本命ではないし、間違っていない。


「誰に渡すの?」


ちなみに真理はだれにもあげないそうだ。


「森崎君と速水君と土居君。できれば坪田君も。あとは相川先生かな。」


下手な鉄砲数うちゃ当たる! 節操ないとか言わない!


「ま、クラスのみんなも大体そのメンバーに渡すし妥当なところよね。本命がいるわけじゃないし。」


もはやただのファンだ。


「亜紀は?」

「私もそのメンバーにあげる予定。」


亜紀が一緒なら心強い!


「一緒に行こうね。」


そういえば、瑞姫さんはだれにあげるのかな。




そして、バレンタイン当日。


「いやー…みんな早いねぇ。」


かなり早めに学校に来たつもりだったけど、結構人がいた。

目的は言うまでもないだろう。


「どうせならげた箱を開けたら溢れ出すっていうのを見たかったわよね。」


亜紀はちょっと残念そうに言った。

確かに見てみたかった。

げた箱、ちょっと大きめでロッカーも兼ねてるからみんな鍵かけてるもんね。

勝手に入れるとか無理。

というか、開けたら溢れるって最後の人とかどうやって入れるんだろうね。入れようと思って開けたらいっぱいあふれ出てきて、結局それを戻すだけで自分の入れ忘れたりとかあったりして。


登校してきたら机がいっぱいっていうのはなってるかも。

見に行ってみたいけど、よそのクラスって入りにくいんだよねぇ。人がいなければよかったけど、これだけの人数登校してたら無理だね。


「あ、二人とも、おはよう!」


ひとまずクラスにカバンを置きに来ると、普段はぎりぎりにくる子たちが数人いた。


「相川先生がもう来てるんだって! 二人もチョコ渡すんでしょ? 一緒に行かない?」


もちろん頷いた。まずは一番難易度の低い先生で練習だね!

ちなみに生徒会のメンバーは全員既にきているけれども、校門前で風紀チェックの仕事中だ。

邪魔をするわけにはいかないので渡せていない。


「相川先生~。おはようございます。」

「おはようございます。今日は皆さん早いですね。」


もうすでに何人もの突撃を食らったようで、チョコらしきものがカバンの中に見える。


「先生も理由はわかってるでしょう? バレンタインのチョコを渡しに来ました!」


というか、紙袋も用意してる。もはや毎年恒例だから対応はばっちりですか!


「ありがとうございます。」


さすがに問題なく渡せた。しかし、他の先生からやっかみ受けたりしないのかな。他人事ながらちょっと心配。

と言っても、何もできないし、しないけどね。

先生は大人だし、それくらい自分でどうにかしてると思う、たぶん。



「あ、坪田君が登校してきたんだって!」


イケメン情報網が回ってきたので、もちろん向かう。

そして、気が引けた。


「こんな光景、リアルにあるんだねぇ…。」


坪田君が、女子に囲まれていた。

あの中に入るのは、勇気がいる。

律儀に全員のを受け取っているみたいだから、ぜひ渡したい、けど…。


「バーゲンセールでもやってるみたい。」


チョコ、つぶれてないのだろうか。


「私、行ってくる! よかったらみんなのも渡してくるよ!」


F組の中でも一番坪田君に熱をあげている子がそう言った。

一瞬視線を交差させて、即決する。


「じゃあ、よろしくね!」

「頑張って!」

「無理はしちゃだめよ。まだチャンスはあるんだから。」


一人が持っていた紙袋にみんなのチョコを入れてその子に託した。


でも、これってモブ脱却に全然近づかないよね。今更だけど。

まあ、恋人になりたいわけじゃないしね。

知り合った後にネタとして話せたらそれでいいよね。


ちなみにその子は無事やり遂げました!

ただ、流れ作業のように受け取ってたからきっと顔も見てもらえてない、と言っていた。

あの人数じゃあ、一人一人に丁寧な対応はできないよね。


あとは生徒会メンバーなのだけど、なんと、生徒会メンバーへのチョコは生徒会室前に箱が置いてあって、そこに入れるようになっていた。

生徒会業務の邪魔になるので直接渡しに来ないように、とのこと。

事前に知ってれば、坪田君の時、自分で行ったのに!

私がそれを知ったのは昼休み。朝、仕事中にもかかわらず渡そうとしてくる人が多すぎてそうなったらしい。


それでも、渡すけどさ…。

何だろう、この虚しさ…。


バレンタインチョコを渡すっていう目的は果たせたのにね。


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