ベンヴォーリオの心配
ベンヴォーリオ視点です。
教会でソフィアが忘れられてるのと同じ頃、モンタギューの溜まり場では、ベンヴォーリオが二人の親友を探していた。
「ねえ、誰かロミオとマキューシオを知らないか?」
「あ、ベンの兄貴!ロミさんとマーシオの兄貴ですか?マーシオの兄貴は知りませんが、確か、ロミさんは教会が何とかと言ってました」
「そう言えば、朝からマーシオの兄貴は見てないです」
「そうか。じゃあ、ありがとなっ!」
「「はい!!」」
ベンヴォーリオは焦っていた。何故なら、ベンヴォーリオが昔した、ある予言の日だからだ。そう、マキューシオに死の予言をしたのは、ベンヴォーリオなのだ。
その頃のベンヴォーリオは、僅か8歳ながら、占いに凝っていた。その上、その占いが良く当たると一部では評判になるほどだった。そして、ある日、二人の親友の運命を占ってみた。だが、結果は誰もが知る通り、残酷なものだった。
占いの結果を知った、ベンヴォーリオは愕然とした。だが、同時に考えた。死ぬ日を知っているのだから、その日さえ、越えることが出来たなら大丈夫なのではないかと。
あれから、10年。ベンヴォーリオは、この日が訪れることをずっと、恐れていた。もし、自分の占いが外れて、二人とも死ななかったとしても、今までの3人には戻れないかもしれないと言う、未知の恐怖に。
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いったい、マキューシオは何処にいるんだ?アイツも、今日が何の日かくらい知っているはずだ。笑ってまったく信じなかったロミオと違って、その可能性もありうることを解っていたはずだ。では、何故?
そうこうするうちに、ロミオがいるとされる教会に着いていた。ヴェローナ一の歴史を持つ教会なだけあって、優美さと厳かさを掛け持っていて、とても美しい教会だ。だが、得体のしれない叫びが、微かに聞こえてくるのが不気味なためか、いつもは、参拝客が多いこの教会に、近寄る者はいない。
確か、ロミオは此処にいるはずだ。だけど、中から聞こえて来る、この不気味な叫びは何なんだ?まさか、黒ミサでもしているのか??いや、アイツはありえない。マキューシオならともかく、ロミオは、良くも悪くも純粋だ。目の前にあることしか知らない、黒を知らないやつだ。でも何故、教会なんかに…
ベンヴォーリオは疑問に思いながら、重い扉をそっと開けた。
「どう言う事だー!!何故、おもちゃの短剣になってるんだよーっ」
「はあ?」
そう、扉を開けると、そこでは、ティボルトが悲痛な叫びをあげていたのだった。
唖然とするベンヴォーリオの存在に、気づいたロミオが話しかけてきた。
「あ、ベン!用事はどうしたんだ?」
「用事?」
嫌な予感がした。ベンヴォーリオは、辺りを見渡した。すると、意味ありげに笑うマキューシオが立っていた。
「マキューシオ、お前は何をする気だ!?」
ベンヴォーリオは、瞬時に悟ったのだ。マキューシオが、何かをする気だと言う事を…
「アハハハハッ」
ティボルトの叫びでいっぱいだった先ほどとは一変、重たい空気が流れ込んできた。そして、マキューシオは、ただ笑うだけであった…
これで、年内の投稿は終了です。では、良いお年を…