バルコニーと盗み聞き
仮面舞踏会も終わりを迎えて人々が眠頃、キャピュレット家の煌びやかな邸宅のある一角のバルコニーとそのドアの前では、その部屋の主人とその侍女がそれぞれ、幸せに浸っていた。
『ああロミオ様、ロミオ様!なぜ貴方はロミオ様なの?』
おお、ホントに言ったよ。この名台詞を聞けただけで、もう幸せでいっぱいよ!!今すぐ死んでも悔いはないという訳ではないけど、感動のあまりに涙が止まらないよ~どうしよう…
『名前にはどんな意味があるというの?バラと言う花は、名前を変えても香りは変わらないはずよ。そう、ロミオ様も同じはずよ!!きっと、あの神々しい美しさは変わらないわ。だから、その名をお捨てになって、その代わりに私の全てをお受け取りになって!!』
それにしても、前々から思ってたけどお嬢様って、独り言の声が大きいのよね~しかも、その独り言の内容がさっきのような感じだから、いつも周りが一歩ひいちゃうんだよね。うん、周りが一歩ひくという点ではいくら、注意しても意味無いのよ!!そのせいで、奥様に何度怒られたことか…
『お言葉通りに頂戴しましょう。ただ、恋人と呼んでほしい。そうすれば、生まれ変わったも同然。僕はもうロミオではなく貴女の恋人』
あ、ロミオも物語通りの登場の仕方なんだ…まあ、ここはその物語の世界だから仕方ないかな。まあ私が言うのもなんだけれど、盗み聞きは良くないよ。
「ねえ、ここで何してるの?」
「ギクッ!?いや、決してお嬢様の独り言を盗み聞きしてた訳では…って、マキューシオ様が何故?」
「へえ~盗み聞きしてたのか~」
「そ、それは…って、だから何故ここにいるんですか!?」
「もちろん、忍び込んだからだよ!」
「答えになってない…てゆうか、胸を張って言う事ですか。他の誰かに見つかったら殺されますよ!!」
「見つかったら即座に逃げるから大丈夫だよ」
「ソウデスカ…って、話が逸れましたが、私は何故ここにいるか理由を聞いてるんですよ!」
「それはね~君に会いに来たからだよ」
「ハア?何の冗談ですか??」
「ヒドイなあ~冗談じゃないのに。それよりも、盗み聞きしてるのに、こんなデカい声で話して大丈夫なの?」
「ハッ!!」
しまったー盗み聞きなのに声が大きすぎた…うん、これはバレましたね。どうやって、言い訳しよう…
うーん
「あれは…ロミオ!?」
「えっ?って、あれ!?二人の世界に入ってて、バレてないじゃない!!」
どんだけ、二人は鈍感なのよ!!普通なら、どんなに二人の世界に入り込んでもさっきぐらい騒いでると気づくはずよ。実は、二人とも耳が聞こえないんじゃないの!?
「フフッ」
「マキューシオ様、何ですか?」
「いや君って、本当はこんなんなんだ~と思ってね。あ、そうそう、ずっと思ってたんだけど、君の名前は何なの?」
「今更ですか。まあいいや、ソフィアです」
「じゃあ、ソフィア、これからよろしくね。」
「何がですか?」
「分からないならいいや。いつか、分かる日が来るし。そういえば話を戻すけど、なんで、ロミオがあそこにいるの?」
「たぶん、想像してる通りですよ」
「なるほど。じゃあ今度、ロミオをからかおうかな」
マキューシオが原作とは違う…原作では、血の気の多い若者だったのに、腹黒くなってない!?でも、ティボルトと言い合う時は血の気が多かったような・・・まさか、演じている…?
「気づいちゃったんだね、本当の事を」
「そ、それは…」
「隠しても、無駄だよ。それに、何もしないから安心して。もちろん、その代わりに協力してもらうけどね」
「な、何をでしょうか」
「言う前に、場所を移そうか」
・・・嫌な予感しかしないんだけれど、どうすればいいの!?誰か、助けてくださいー!!