物語は幕を開ける
「お嬢様~どこに行ったのですか~?」
「ここよ!!」
「ここにいましたか。旦那様がお呼びですよ。」
「分かったわ。」
ついに物語は幕を開けてしまった――
そう、幕を開けたの。『ロミオとジュリエット』と言う物語は幕を開けたのよ。それは、悲劇の始まりだと普通は思うが、私はそうは思わない。何故なら、物語の結末を私が変えて見せるから。そうよ、私が絶対に変えてみるのよ。だって、この為だけに今まで計画を練ってきたもの。
前世の私は、酷く病弱だった。子供の頃から、病院暮らしで学校など行ってなく病室で本を読んでばかりの生活をしていた。特に、恋愛ものが好きで、その中でも『ロミオとジュリエット』が大好きだった。そして、読み終わって思うの。私だったら、ハッピーエンドにするのにと。悲恋の二人と言えば、ロミオとジュリエットなんかにさせないのにと。
そしたら、願いがかなったの、『ロミオとジュリエット』の世界に生まれたの。だから、この二人を救うために、キャピュレット家に仕えてジュリエット様付の侍女になったの。
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「ソフィア、やっぱりちゃんとでないとダメ?」
「勿論ですよ!これは、お嬢様のための舞踏会ですよ。」
「でも、やっぱり嫌よ。あんな人と結婚するなんて!!」
「まだ、正式には決まったわけではありません。それに・・・」
「それに、何?」
「な、何でもありません」
危なかった~つい、本当のことを言いそうになってしまったじゃないの。気をつけなくては!!今日の舞踏会次第で運命を変えれるかもしれないのだから、しっかりしなきゃ!…そ、そうだった、今日はあの仮面舞踏会の日だったじゃないの!なんだか、急に緊張してきた…
私は、キャピュレット家に仕えて分かったことがある。それは、この世界の『歪み』。私が、転生してこの世界に生まれたように物語で登場する人が居なくなっていたりする。それは、ジュリエットの乳母。ジュリエットが生まれた時は居たらしいけど、私が来たときには既に、亡くなってしまっていた。だから今回も、その『歪み』が生じて事が良い方向に進むといいのだけれど…
「ソフィア、行くわよ」
「はい!!」
ついに、物語は動き始める。でも、物語とは一緒にはさせない。二人が最後に死ぬ運命ならば、私は運命など信じない。運命よ、待ってなさい、私はお前に勝ってみせるから。