二人の関係
「ねえ、ソフィアはどう思う?」
和解が成立した夜。正式な和解は明日となったので、とりあえず解散し、初夜は交渉の末、ロミオがジュリエットのもとに忍び込むことになったのだ。そして、ソフィアは主の初夜の支度も終わり、自室で感傷にひたろうと部屋に入ると、すると、そこには何故か、マキューシオがおり、さっきの事を言ったのだった。
「いや、それよりも、何故ここにいるんですか!?」
「もちろん、夜這いだよ!…いやいや、冗談だから、そんなに睨まないでよ。それと、手の中にある重たそうな物体は置こうね。てか、なんで部屋にトンカチがあるの!?」
「護身用です」
それよりも、この人、いきなり何を言ってるの!?夜這いって、冗談でも言っちゃダメよね!?てゆうか、私の理性の復活が、あと1秒遅ければ、予定通りに死んじゃってたじゃないの!!
「…やっぱりどう考えても、トンカチはおかしいよ!!」
「あ、まだ、その話だったんですね」
「そうだよ。どうせなら、昨日渡した短剣を護身においてよ!折角、ティボルトから貰ったんだから」
「って、それ、貰ったではなく、盗んだが正解じゃないですか!?」
「そうそう。オモチャにすり替わってるのに気づいた時のティボルトの焦りっぷりときたら…ププッ」
「やっぱりですか…それよりも、何でここにいるんですか!?」
マキューシオは誤魔化そうとしてたらしく、話を戻したことに軽く舌打ちをして言った。
「それは、ロミオが『マーシオ、緊張するから付いて来て、お願い!』って言うから、一緒にここに忍び込んで来たんだよ。で、暇だから、ここに来たって訳」
「暇って、帰れば良いことですよね」
「ぎくっ…そ、それよりも、俺が死んでないことと両家の和解についてどう思う?」
あ、誤魔化した。何か、怪しい。やっぱり、この人は要注意人物に脳内指定しておかなくちゃ!!
「おーい、ソフィアさーん、聞いてますかー?」
「え、あ、はい。死んでないことは、良かったですね。でも、油断大敵ですよ。それに両家の和解で、打倒大公が本格化したんですから、何が起こるか分かりませよ」
「うん、ソフィア。俺が死んでないことに、もっと喜んで欲しかったなあ。仮にも、俺の恋人だよね?」
「ええっ!?私って、恋人だったんですか?」
「そうじゃないの!?」
「「えっ…」」
…あれ?私は、いつ、恋人になったの?記憶をたどっても、見つからないのだけれど…
ソフィアだけでなく、マキューシオも驚いたらしく、狭い部屋で数秒の沈黙が生じた。
「…ええと、昨晩、ティボルトに会った時に恋人って言って、否定しなかったから了承したと思ってたんだけど…もしかして、勘違い?」
「えっ、その場しのぎの為じゃなかったんですか!?それに、否定なんてしたら、殺すぞ!ってメッセジーを発信してませんでした?」
「いや、違うけど。てか、ソフィアの俺の評価って…」
いや、絶対に、否定してはいけない雰囲気を作り上げてた!それに、なんでアレが了承のサインなのよ!!
「じゃあ、今からでも恋人に…どうかな?」
「絶対にイヤです」
「…アハハ、即答したね。そうか、そんなにイヤなのか…」
えっ、予想外の反応!でも、何かヤバいことをしてしまった気がする。いや、これは、絶対に何かしちゃったわよ…おお怖い!
そして、満面の笑みで言った。
「うん。やっぱり、まずは友達以上恋人未満からだね!」
「その考えは、おかしいですっ!!」
「そうそう、敬語は禁止ね。次から1回破るごとに、スキンシップ1回ね」
「ちょっと、私の考えを無視しないでください!!」
するとその直後、マキューシオはソフィアに、いきなり抱き着いて耳元でささやいた。
「はい、1回目。破るごとにこうするからね。あ、場合によってはそれ以上も…」
「じょ、冗談はやめてっ!出ていって!」
慌てて押しのけると、声を荒げて言った。すると、驚いたようで素直にだまって部屋を出て行った。
ハアハア、この胸の動悸は何?まるで、前世で病気だった時にときどき発生した、発作のように激しく、苦しい。