手を取り合って…
ソフィアは、呆れていた。それはもう、人生で一番って言って良いほどに。
…何で、何で、こんなことになってるの!?探しても探しても見つからない…あ、そういえば、今何時だろう…ええっ!?5時って、夏じゃなければ日が暮れてる時間じゃないの!!って、現在進行形で、飲まず食わずで悪口大会といちゃついてるあの人達は…
すると、ドアの向こうから、もの凄い怒鳴り声が聞こえてきた。不思議に思ったソフィアは、恐る恐るドアを開けると…
「だ・か・ら、儂が先に入るんじゃ!!」
「何を言っている!儂じゃ!!」
はあーっ…道理で、聞いたことがある声だと思ったのね。まさか、煩い声の主は旦那様とモンタギュー卿だったなんて…それにしても、何でまた二人そろって、こんな所に…
「あの~旦那様?此処で、何をしていらっしゃるんですか?」
「おお、ソフィア、お前も此処にいたのか。神父殿に言われて、ジュリエットとティボルトを迎えに来たんじゃ。儂じゃないと、連れて帰れないと言われたから、しょうがなく」
「お前もか!?」
「というと、お前もなのか!?」
「そうじゃ。儂も、神父殿に言われて、ロミオ達を迎えにきたんじゃ」
なんだ、そういうこと。ちゃんと、神父様は仕事をしてたのね。まあ、そりゃ、教会に何時間も祈りもせずに居座られたら邪魔よね。
「で、何故、あんな大きな声で、言い争っていたんですか?」
「そうじゃ!モンタギューお前、儂に道を譲れ!!」
「嫌じゃ!儂が、先に入るんじゃ!!」
予想通りに、しょうもない…こんな、しょうもない言い争いが、何百年も続いてたかもしれないと思うとゾッとする…
「そんなの、こんなに広いんですから、同時に入ればいいじゃないですか」
「「なるほど!!」」
うわ…ウソでしょ。別に、同時ならいいんだ…
こうして、無事に二人が教会に入ると、何時間も続いている光景が目に入ってきた。
「「お前らー何で、宿敵と仲良くなっているんじゃあー!!」」
二人の鼓膜が破れるような叫び声に、皆が唖然とする中、ロミオとジュリエットは気にせず、二人に近づきこう言った。
「「父上(お父様)!!僕(私)たち、結婚しました(わ)」」
「なので、これを機に、父上も義父上も和解しましょう!!」
「そうですわ!!」
今度は、モンタギュー卿とキャピュレット卿が唖然とすると、マキューシオが、催促するように言った。
「そうですよ。こんな無意味な争いはやめて、もっと上を目指しましょうよ」
「マキューシオ、何が言いたいんじゃ。回りくどいことを言わずに、単刀直入に言え」
「御意に。単刀直入に言いますと、大公を潰してみてはいかがですか」
「大公を…って、お前の叔父じゃなかったのか!?」
「そうじゃ。まあ、潰すのは簡単じゃが、誰が後を継ぐんじゃ?」
「ああ、それは、いずれ生まれるであろう、ロミオとジュリエットの息子ですよ。まあ、それまで、公平に適当な貴族を持ち上げて、置いときますが」
その、マキューシオの計画に、二人は賛成したようで、静かに頷き、握手を交わしたのだった。
…ウ、ウソ。ウソでしょ!?二人が、自らの意志で手を取り合うなんて。何百年も争っていた二人が、誰かの死をきっかけにではなく…
でも、本当にこれでよかったのかしら…