マキューシオの計画
―アハハハハッ―
教会に響く、マキューシオの怪しげな笑い声―
えっ、どういうことなの??まさか、ベンヴォーリオの言う通り、マキューシオは何かをしようとしているのかしら?でも、目的は何なの?
その場に居る誰もが、ソフィアと同じことを考えていただろう。マキューシオはと言うと、今度はニヤニヤと笑みを浮かべている。そして、やっと口を開けた。
「さすが、ベンヴォーリオ。でも、意外だなあ。もう既に、俺が何をする気なのか知ってるもんだと思ってたよ」
「はぐらかすな!さっさと言え!!」
ベンヴォーリオに責め立てられ、それを面白がるようにフッと笑いながら答えた。
「ヴェローナ一の権力者って誰か知ってる?ねえ、ソフィア」
「えっ、大公様のはずじゃ…」
「表向きはね。でも、実際の所、ずいぶん昔からモンタギュー卿とキャピュレット卿が二分してるんだ。考えてごらん。大公にあの二人より権力なんかあったら、両家の争いなんかとっくに終了してるよ」
「確かに…でも、そのことが今の話に何の関係が?」
「実はね、俺、大公の隠し子なんだ。つまり、甥ではなく息子」
そうだったのね、本当は甥じゃなくて息子だったのね…え、む、息子!?息子って、男の子どもってことよね??じゃあ、隠し子ってっことであってるわね。…いやいや、おかしいわよ!!てか、隠し子なんて重大なこと、さらって言って良いの?
ソフィアがパニックになってる中、ずっと黙っていたロミオが突然、口を開いた。
「マーシオ、何で、今まで秘密にしてたの?知ってたら、息子と名乗れるように画策してたのに…」
「母を捨てた奴の息子って名乗りたくなんかないよ。逆に、憎んでるくらいだ」
まさか、目的って、大公への復讐!?で、でも、モンタギューとキャピュレットの和解を望んでるはずじゃ…どういう事?
「だからね、思ったんだ。大公家なんか潰せばいいじゃんってね」
「マキューシオ、まさか…」
「さすがベンヴォーリオ!分かったんだね。モンタギュ家ーとキャピュレット家が手を組んで大公家を潰す計画って事」
手を組んで潰す?…そういうことね!!
つまり、今のままだと、どちらかが大公を潰そうとするともう片方が対抗して、大公の味方に付くから、ロミオとジュリエットの結婚を機に両家に和解させ、二人の上に立てる大公を潰させようって訳ね。潰したら、いずれ出来るであろう、ロミオとジュリエットの子を大公に着けさせれば良いのだし。
すると、ソフィアと同じ考えに至ったであろうティボルトが突然、声を上げて言った。
「…マキューシオ、俺はおまえの計画に賛同する!!さっさと、和解しよう」
「えっ!?ティルくん、さっきまで僕たちのこと認めてくれなかったよね」
「そうですわ!!ついさっきまで、和解なんて絶対に認めない!みたいな感じでしたわ。なのに、何故?」
「そ、それは~実は、争い嫌いと言うか~何と言うか~」
ウ、ウソでしょ!?まさか、あのティボルトが、争うのが嫌いだなんて!!だって、物語では自分の家の舞踏会に来てただけで殺そうとしてたよね。それに、お嬢様の言う通り、旦那様が和解をしても自分は絶対に認めないって感じだったのに!!
すると、ベンヴォーリオが何か閃いたようで、ティボルトに言った。
「お前も、大公が嫌いだったのか!!」
「チッ、バレたか。折角、良い人ぶったのに…そうだよ、俺は、モンタギューよりも大公が嫌いなんだよ!!賛同するのも、それが理由だよ!!」
あ、そういう理由だったのね…少し、残念。まあ、さっきまで喧嘩大好き人間が、そう簡単に変わらないよね。そういえば、さっき、ベンヴォーリオは『お前も』って言ったってことは、つまり、ベンヴォーリオも大公のことが嫌いってこと!?どんだけ大公、嫌われてるのよ…
「やっぱり、大公ってウザいよな~あいつ、すぐに俺たちのせいにしやがる!」
「そうだよな~俺は仮にも甥だから、それは無いな~」
「ズルっ!」
「でも、あんなやつと血が繋がってる方がイヤだよ!!」
「「同感!!」」
・・・めちゃくちゃ、仲良くなってる。ロミオは混ざってないってことは、ロミオは、大公のことが別に嫌いじゃないんだーへえー
って、ただ単に飽きて、お嬢様と二人の世界に旅立っただけじゃないの!!ついには、神父様まで何処かへ行っちゃったじゃないの!!…あれ!?さっきまでの、シリアスな空気は何処に行ったのよ!もういい、こうなったら、自分で探してみせるわ。
結局、シリアスさは何処かに吹っ飛ばし、3時間にも及ぶ、『第一回 大公の悪口大会~ほんとにコイツやだ~』が始まったのだった・・・