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5:人体自然発火現象〜2〜
その頃、街には一つの影があった。
その名を天野光矢と言う。
光矢も人体自然発火現象に着いて調べ、解決せよという命令をうけていた。幕府からでは無いが。
面倒くさそうに屋根の上から街を見下ろす。
光矢の目に映るのは、人ばかりではない。
血の匂いに誘われて至る所に邪悪な霊や妖怪が身を潜めている。
「果てしなく面倒い。」
光矢は一人愚痴るが誰も聞いてはくれない。
深い溜息が光矢の口から漏れて空気に溶けた。
もうすぐ夜だ。この街の夜の住人が起き出すだろう。
それからしらみつぶしに探していくしかない。
もしかしたら、応援ぐらい寄越してくれるかもとほんの少しだけ光矢は期待していた。
三日月がまるであざ笑うかのように空に浮かんでいた。