36:来客〜2〜
光矢は足を止めた。
視線の先には青年がいた。
その青年も光矢を見つけたらしい。
ゆっくりとたが確実に青年は光矢に近づいていく。
光矢が走りだした。
ワンテンポ遅れて青年も走りだす。
隊服がひらめく。
青年の手が隊服をつかんだ。
しかし、光矢は隊服を既に脱いでいた。
転がるように河原へと光矢は走った。
途中屯所の前を通った。
「光矢?」
年が近く見える平助が声をかけた。
「土方さんに巡回終わったって伝えといて‼︎」
光矢が走りながら、叫んだ。
平助が首を傾げていると、青年が通り過ぎた。
その瞬間、平助は戦慄した。
異様な程の震えが止まらない。
平助だって、こう見えて、八番隊隊長を務めているのだ。
よほどのことでもないかぎり、怯えたり震えたりはしない。
平助は勇のところへ走って行った。
一方、追いかけられていた光矢はやっとの思いで河原についた。
青年から距離をとるように光矢は振り向いた。
青年も立ち止まる。
細められた青年の目に映るのは光矢だ。
「久し振りだな。光矢。兄のことを忘れたのか?」
偉そうに青年が口を開いて光矢に語りかける。
光矢の肩が小さくはねた。
光矢の目の前にいる青年は光矢のあに暗太だ。
昔から、光矢をつけまとい、苦しめてきた。
傷をつけることを楽しみとしている怖い人だ。
知らず知らずのうちに光矢の手は震えていた。




