31:模擬試合〜1〜
泣きそうな顔で信太郎から見られた光矢はこめかみをひくつかせた。
総司が楽しそうに光矢を見つめている。
「ああ、もう、分かった!何すりゃいいんだよ⁉︎」
光矢は自分が天狐だとばれることを避けるために言った。
総司は満足そうに笑った。
この後、いくつかのやりとりがあり、七番隊の谷三十郎の後を光矢が引き継ぐことになった。
歳三はまだ認めたくないようだ。
「てめぇ、強いのかよ?人を切れねぇやつはいらねぇ。」
歳三が光矢に詰め寄る。
またも総司が笑う。
「一君が相手してあげれば?」
急にはなしをふられた一がいぶかしげに総司を見た。
総司は自信有り気に一を見ている。
「総司がそこまで買うほどの物なのか?」
抑揚のない口調で一が言った。
黙ったまま総司が頷く。
「俺、怪我人。」
ぽつりと光矢が主張するが二人の耳には入らないようだ。
中庭で模擬試合をすることになった。
光矢は始めて持つ木刀を振り回している。
一はいたって普通だ。
そして、二人を囲むように幹部が並んで見物している。
「試合を始めて下さい!」
平助の合図で二人は向き合う。
丁寧に頭を下げる。
木刀を構えた一は光矢を見つめる。
一方光矢は木刀を下段に構え足を片方引いた。
ほう、と言う声があちらこちらから漏れた。




