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夜明け  作者: 若葉 美咲
23/42

22:死闘〜1〜

真夜中。

星が落ちてきそうだった。


一番隊は巡回だった。

夏の夜は暑い。

隊士達は帰りということもあり少し油断していた。

脇の小道から何かが飛び出してきた。

その、何かは地面を転がった。

「ごほっ!」

何かが起き上がり空咳をする。

総司が隊士に注意を呼びかけた。


何かは光矢だった。

「っ!なんで人が⁉︎」

光矢が慌てる。

総司が周囲を警戒する。

生ぬるい風が吹いてきた。

「命が惜しかったら逃げろ!」

光矢が刀を抜きながら、屯所の方角を指し示す。

しかし、隊士達は一人も動こうとしない。総司もだ。

光矢はユメグイがいる方を見た。


夜の京は妖の住まう時間。

そして今夜は新月。

ひと月の中で最も妖の力が強まる日。

普通の人にも強い妖が見えてしまう。


隊士が悲鳴をあげた。

ユメグイの姿が見えたのだ。

一人また一人と屯所へ駆け出した。

「待て!敵前逃亡は死罪だぞ!」

副隊長が叫んだ。

その場に縫い止められたように、隊士がうごきを止めた。

「くそっ!」

光矢はユメグイの意識を惹きつける為に切りかかった。

そしてそのまま返す手さえ見せずにもう一度切る。

浅く早く傷をつけてゆく。


総司は身震いした。

光矢が強いことが分かったからだ。

隊士はまだ動こうとしない。


睡眠不足で辛い光矢はさらに窮地に立たされた。

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