22:死闘〜1〜
真夜中。
星が落ちてきそうだった。
一番隊は巡回だった。
夏の夜は暑い。
隊士達は帰りということもあり少し油断していた。
脇の小道から何かが飛び出してきた。
その、何かは地面を転がった。
「ごほっ!」
何かが起き上がり空咳をする。
総司が隊士に注意を呼びかけた。
何かは光矢だった。
「っ!なんで人が⁉︎」
光矢が慌てる。
総司が周囲を警戒する。
生ぬるい風が吹いてきた。
「命が惜しかったら逃げろ!」
光矢が刀を抜きながら、屯所の方角を指し示す。
しかし、隊士達は一人も動こうとしない。総司もだ。
光矢はユメグイがいる方を見た。
夜の京は妖の住まう時間。
そして今夜は新月。
ひと月の中で最も妖の力が強まる日。
普通の人にも強い妖が見えてしまう。
隊士が悲鳴をあげた。
ユメグイの姿が見えたのだ。
一人また一人と屯所へ駆け出した。
「待て!敵前逃亡は死罪だぞ!」
副隊長が叫んだ。
その場に縫い止められたように、隊士がうごきを止めた。
「くそっ!」
光矢はユメグイの意識を惹きつける為に切りかかった。
そしてそのまま返す手さえ見せずにもう一度切る。
浅く早く傷をつけてゆく。
総司は身震いした。
光矢が強いことが分かったからだ。
隊士はまだ動こうとしない。
睡眠不足で辛い光矢はさらに窮地に立たされた。




