20:望む者
歳三は勇と二人きりで座っている。
勇は文机に向かい幕府に送る文を唸りながらかいている。
だが、妖が人体自然発火現象の原因だと言ったらバカにされるのがおちだ。
歳三はめをつぶりずっと考えごとをしていた。
「あいつは何者だ?」
歳三の口から何度めかの同じ呟きがもれる。
出て行った後も、監察方の山崎蒸に追わせたがおいつかなかった。
蒸はこれ以上ないほど悔しがっていた。
歳三はそれらを思い出し、はぎしりをした。
光矢に話の主導権を握られ、すっかり、ペースにのせられてしまった。
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一は総司の部屋に訪れていた。
まだ、声はかけていない。
中から咳き込む音が聞こえていたからだ。
やがて、咳がとまる。
「盗み聞きかい、一君?」
総司が部屋の中から声をかけた。
一はしょうがなく、立ち上がる。
音もなく、総司の部屋入っていった。
「総司、薬を。」
一がたもとから薬を取り出す。
苦笑しながら、総司はそれをとめた。
「一君、よしてよ。僕は子供じゃないんだよ?」
総司は笑うが、本当は無理していることを一は知っている。




