19:光矢〜6〜
やがて、歳三は顔を真っ赤にしながら、
「は、話して下さい。」
と、呟くように口の中でもごもご囁いた。
光矢は満足気に頷き笑いだした。
そうなると皆つられて笑いだした。
一は笑わなかった。
歳三は一人、殺意を胸の中に押しとどめなければならなかった。
笑い終わると落ち着いた光矢が話し始めた。
「まず、あれは本当には燃えていない。」
光矢の一言目から驚きの声が上がる。
歳三が何かを言いかけたが、勇に止められた。
「見えた炎の幻から痛みを自分で創造してしまっている。」
光矢が言葉をきる。
皆から色んな意見が飛び交う。
「幻なら、なんで本当に死んじゃうんだよ?」
平助が声を張り上げた。
光矢が拍手を送る。
「そう、そこなんだよ。一番大事なのは。誰が幻を見せ、誰が痛みから傷を具現化させているのか、が。」
光矢はひとを惹きつける話し方をして注意を自分に向けている。
誰もが息を呑み光矢の答えをまった。
光矢は目を閉じた。
「妖だ。」
歳三が情けない声をあげた。
「妖⁉︎ふざけてんのか、てめぇ!」
拳をわなわなと震わせている。
光矢は勢いよく立ち上がった。
「信じる信じないはお前らの勝手だけど、俺は本当のことを言ったまで。六郎に聞いてみるんだな。」
そう言い捨てて、今度こそ光矢は部屋から飛び出して行った。
後に残された新選組は途方に暮れたのだ。
「お上に何と申したら良いのだ⁉︎」
勇の悲痛な声が残ったのだった。