16:光矢〜3〜
刀を素手で受け止めた光矢は総司を見た。
総司の顔に焦りが浮かぶ。
「ね?刀じゃどうにもならない時もあるんだよ。」
光矢が囁く。
総司の目が剣呑に光る。
いきなり、光矢は総司の刀から手を放す。
総司がもう一度、刀を構える。
「やめとけ。総司。」
歳三が総司を制止させる。
総司はまだ殺気を残しつつ座った。
「もう、帰ります。ここにいても得ないし。」
光矢が立ち上がる。
左之助も立ち上がる。
大きな体で出入り口を塞ぐ。
光矢と左之助が対峙する。
「左之さんに何かしたら許さないからな!」
平助が左之助の前に立ち塞がる。
光矢は困ったような顔をした。
「なら、どいてくれればいいじゃん。」
ぼそりと光矢がつぶやく。
新八が笑いだした。
突然のことで皆がそちらを向く。
「お前、優しい奴だなぁ!」
新八だけがうれしそうにしている。
光矢の表情がかげった。
「俺は・・・、優しくなんかない。これからも・・・、たぶん。」
光矢の呟きは新八の笑い声に消された。
光矢は左之助の前を通り過ぎようとした。
左之助が慌てて手を掴む。
光矢の体に緊張が走る。
鋭い視線で左之助を睨む。
そして、左之助の手を振り払った。
「触れるな。」
光矢が低い声で左之助に告げた。
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光矢は天狐だ。
そして、沢山の苦労を重ねて今にいたる。